【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

13.旦那様(ニセ)、鈍感嫁(ニセ)にプロポーズ大作戦です!・その1

 パーティーは午後九時にお開きとなり、様々なお客様に捕まって根掘り葉掘り一矢の事を聞かれた。ただ、一矢は若いながらも経営手腕を買って下さっている方が非常に多く、優秀な旦那だから、しっかりサポートしてくれ、みたいな事を口々に言われた。旦那様(ニセ)はまだまだ若いし、私の後釜を狙っている人も多そう。何となくだけどそう感じた。だから当面は『私はニセ嫁でーす』って言えない気がした。

 あと、私がピンチだった時、あんなに早く中松がやって来れたのは、実は花蓮様のお陰でもあった。杏香さんが私を連れて行ったという事を、中松に報告してくれたから彼も重役の客人が足止めだという事を百パーセント理解して、すぐに行動が出来たのだと聞いた。

 花蓮様・・・・。意地悪令嬢だと思っていたのに、本当は優しい人なんだ。きちんとお礼は伝えたけれど、花蓮様がいなかったら私は今頃、恐ろしいパーティーの主役にさせられていたのだ。そんな事にならなくて良かった。

「片付けは他の者に任せてきた。伊織、話をしたいから早く帰ろう」

「あ、うん」

「今回は美緒にも世話になったな。また改めて礼に伺おう。宜しく伝えてくれ」

「あの実は・・・・美緒がさ、中松の事を気に入ったみたいで、その・・・・紹介して欲しいって。中松を美緒に紹介してもいいかな?」


 一応執事の主人(本物)に聞いておかなきゃね。


「そうか、美緒が・・・・。中松も私に忠誠を誓ってから、女性の影も見えずこれでも心配していたのだ。中松がお前に本気にならないか、不安だったのもある」

「はいっ?」

 思わず焦って、声が上ずってしまった。

「・・・・何でもない。紹介するのは構わん。中松も伊織の妹となれば、むげには断るまい。後は美緒次第だろう。中松はいい男だから頑張るようにと、美緒にそう伝えておいてくれ」

「解ったわ。許可してくれてありがとう」

「ライバルが減るのは、私としても大助かりだ」

「ライバル? なんの?」

「・・・・何でもない。帰るぞ」

「はい」

 一矢に抱き寄せられた。「片時も離れるな。もう、お前が危険な目に遭うのは避けたい」

「ありがとう」

 お礼を言って一矢と共にホテルを後にした。
 中松の運転するリムジンで一矢家の方に帰り、今後の話し合いをする為にとりあえず落ち着ける寝室へ向かった。


「伊織」


 部屋に入って二人きりになった途端、一矢が土下座して頭を下げてきた。「伊織、本当に悪かった。怖い思いをさせてしまったな。すまない。謝っても謝りきれない」

「や、やめてよ。顔を上げて! そんな事しないで!」

 人に頭を下げるなんてとんでもない、と豪語している男が、私にあっさり頭を・・・・しかも土下座なんて!
 とにかくその恰好を止めさせて、立ち上がらせた。

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