【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

11.ニセ嫁の大ピンチに駆けつける執事が、実は本物の鬼だった件。・その1

 その瞬間、掴まれていた頬の緊張が解け、男たちの手によってベッドに放り投げられた。
 ボスン、と柔らかなベッドは私の着地の衝撃を吸収してくれたけれど、怖くて身体が固まって、全然動けなかった。

 相手を見ると、舌なめずりをしてに私に触れてこようと迫ってくる。それを杏香さんがカメラで撮影していた。


「もっと泣き喚いてくれないと、映像に迫力が出ないわぁー」


 この人は、鬼畜だ。一矢はこんな人をお義理姉さんに持っていたのね。それも、二人も・・・・。
 幼い頃、彼はどんなに辛く心細かったのだろう。今更だが、もっと一緒にいてあげればよかったと思った。今そんな事を考えてしまうのは、現実逃避をしたいからなのだろうか。とにかく、一矢の事が頭によぎった。

 男の手がドレスの胸元に伸びた。


 一矢、中松、助けて。


 嫌だ。一矢以外の男に、こんな風に触られるなんて!


 恐怖で声が出なくなって、代わりに涙だけが溢れた。
 ドレスが引き裂かれる音を聞いて、自分もすぐにこうなる事を予感させられた。


 一矢。貴方との約束、守るつもりだったのに。
 誰にも触れさせるなって言ってくれたのに、今、男たちの手が私の肩に伸び、小ぶりの胸を隠している下着をはぎ取ろうとしている。


 約束したのに、無様に他の男に肌を触れさせてしまった。



 まさかこの私が、貴方を裏切ってしまうなんて。



 守れなくてごめんなさい。




「マグロねぇ。映像が全然面白くないし時間もないから、さっさと、処女貫通しちゃいましょうか。クスリは後からにして。とりあえず正気の絶叫が録画したいわぁー。そしたら一矢もちょっとはショック受けるんじゃない」



 耳を疑うような、鬼畜な台詞ばかりを吐かれた。
 同じ女性から発せられた言葉とは、とても思えない。
 この人は、血が通っているの? 本物の人間なの?

 どうしてそんなに一矢を目の敵にするの?


 ただ一矢が好きだというだけの気持ちは、そんなに罪になるの?
 無血統は、お金持ちに恋しちゃいけないの?
 私は一矢の持っているお金が好きなんじゃなくて、一矢自身がただ好きなだけ。
 それが、そんなに蔑まれなきゃいけない事なの?
 何の権利があって、貴女に私の気持ちを踏みにじる権利があるの?


 抵抗したくても、恐怖で身体がすくんでしまって、固まって動かない。
 首飾りを引きちぎれば、仕込んだアラームが鳴り出す事も解っているのに、手をぴくりとも動かす事ができない。



 怖い。こわいよ。



 一矢、中松、たすけて・・・・。




 男の手が私のドレスの中に手を伸ばそうとした、その時――








 

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