【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

10.ニセ嫁、披露パーティーで何やらひと悶着ありそうな予感がいたします。・その4

 
「三条の・・・・」花蓮様が声を震わせながら言った。「三条との関係が悪くならない様に計らって頂いたのは、伊織様と伺いました。あんな無礼を働きましたのに、三条家の事をご配慮頂きました事、父に代わってお礼申し上げます」

 ああ。この前掛かってきた三条氏からの電話、中松から内容を聞いたら、一矢が本気で怒って三条とは今後取引全面停止、とことん追い詰める、みたいなことを言い出したから、絶対止めて、そんな事をしたら三条家で働く人がみんな困る事になる、どうしてもやるなら速攻離婚するから、と私が怒った事ね。一矢ったら・・・・三条氏の耳に入れたんだぁ・・・・。

「一矢様が、伊織様を大切になさる気持ちが解りました。今までの気持ちにすぐ折り合いがつくとは思えませんが、おふたりを応援できるよう、今後は努めたいと考えております」

「まあ」驚いた顔を見せ、その後笑って感謝の気持ちを伝えた。「ありがとう」

 花蓮様、ごめんなさい。私、ニセなのに。
 貴女の気持ちを踏みにじる、最低の女なのに。

 応援なんかしないで、憎まれていた方が良かった。
 胸が、こんなにも痛い。


「あら、花蓮さんじゃないの。ごきげんよう」


 声が掛かったので二人で振り向くと、一矢の義理のお姉さま、杏香(きょうか)さんが立っていた。一矢と全然似ていない。まあ、腹違いでもここまで似ていないのかというほどだ。だから可愛がれないのかもしれないわ。
 嫌味で高慢なだけで、全然美しくない。一重の目はきつく狐のように吊り上がっていて、長い髪の毛をまるで銀座のママのようにきちーっとセットしていて、ガチガチに固まっている。お風呂で取るのが大変そう、というのが印象。グッチのめちゃくちゃ高そうなスーツに身を包んでいて、全身隙が無い。
 ううう・・・・この人嫌い。もう一人のお姉さまの柚香(ゆずか)さんも同じような雰囲気で嫌い。一矢を幼い頃から酷い目に遭わせてきたのだもの。

 でも、わたしを本家にも紹介して顔合わせがあるものだから、招待せざるを得なかった。まあ、一番の目的は本家に堂々と申し入れする事だからね。呼ばないわけにはいかない。本家だけに出向くと何をされるか解らないので、敢えて人目の多いホテルを選んだのよ。


「杏香様、ごきげんよう。お久しぶりでございます」

「花蓮さんも気の毒ねぇ」


 杏香さんが頬に手を当て、ため息をつくように言った。私みたいな無血統女に一矢を盗られてしまって、みたいな嫌味が続くのだろう。流石にこの場では言われなかったが、雰囲気で解った。こんな時、どんな顔をすればいいのか、中松に教えてもらっておけば良かった。
 まあ、中松なら涼しい顔をしているだろう。何を言われても気にせず、堂々とするのがあの人だ。私もそうする事にした。

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