【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
10.ニセ嫁、披露パーティーで何やらひと悶着ありそうな予感がいたします。・その2
――イヤリングの右側が監視カメラが内蔵、左がGPSになっております。外したり預けたりなさいませんように。
私は頷いてそれらを身に着けた。
カメラを隠せるように真珠部分は大きくなっていて、内側に小型カメラが仕込まれていた。色合いを似せているから、カメラが中に入っているなんてよほど近距離で無い限り、解らないだろう。ぱっと見た感じだけでは、絶対に解らない。
着け終わると、私の姿を見て中松が言った。「おや。イヤリングが思ったより大きいので、首元が淋しいですね。ダイヤの飾りを付けましょうか」
にこやかに言う事を心掛けているが、中松の目は全く笑っていない。上手く大きな首飾りを付ける事へと繋げた。流石、口達者。そりゃこんな男に、私が口で勝てる訳ない。
しかしいつか頭を下げさせてやるという気持ちは、未だに持っている。いつかその願いは叶えたい。
――首飾りにも念のため仕込みはしてあります。引きちぎったりされた場合、警報が鳴るようになっております。どうか、外さないように。そして万が一の時は、伊織様の手でチェーンを引きちぎって下さい。すぐに駆けつけます。
用意してくれたものは、ゴージャスで幾重にもなるチェーンの中央に、大きなダイヤがあるものだった。恐らくダイヤは本物だろう。こんなものを引きちぎるなんて、無理無理ぃ。
ニセ嫁なんだから、ニセのものを用意しておいてよぉー。百均とは言わないけれど、せめて二、三千円くらいのチェーンにしておいてくれないと、心置きなくちぎれないよおおお。
――貧相な顔がたるんでおりますよ。
走り書きのメモを指し、中松が私を見つめた。
ムッ。本当に嫌味な男!
「さあ、参りましょうか」
中松が鋭い目線のまま微笑んだ。相変わらず目が笑っていない。
さあ、いよいよだ。鬼に鍛えられたニセ嫁修行の成果、しかと見せてくれようぞ!
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