【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
10.ニセ嫁、披露パーティーで何やらひと悶着ありそうな予感がいたします。・その1
残暑厳しい暑さがまだ身に応える季節。遂にこの日がやって来た。ニセ嫁とニセ夫のニセ婚約披露パーティーが開催される当日なのだ。
今日は土曜日。一週間の中で一番忙しいのに、グリーンバンブーは臨時休業にしてもらった。家族は婚約披露パーティーに全員出席してもらうように段取りがしてある。
婚約が決まってからは、常連様や事情を知らない従業員に惜しまれつつ、今日まで過ごしてきた。中には花やお祝いを持ってきてくれる常連様もいて、本当に申し訳ない気分でいっぱいになった。ほとぼりが冷めたら、離縁するのに。
胸を痛めつつも優しい常連のみんなの言葉には真摯に向き合い、精いっぱいの笑顔でお礼を伝えた。
そんな私は今日、盛大で晴れやかな舞台に立つ。
私も一矢と同様、他の人は信用できない。何時、どんな意地悪をされるか解らないから、少々具合悪くて嫌味を言われても、用意からセットまで、全て中松にお願いする事にした。
流石に男なので着替え中は退出するようにお願いした。
中松だけでは大変なので、妹の美緒にも頼んで彼女にだけはここに来るように頼んで、中松と一緒に手伝って貰った。
厳しい修業に耐え抜き、付け焼刃ではあるけれど、着飾ればそれなりの令嬢に変身することができた。
「お姉ちゃん凄い・・・・! 綺麗・・・・お姉ちゃんじゃないみたい!」
「見違えましたね、伊織様。麗しゅうございますよ」
聞いた、今の!
『麗しゅうございますよ』ですってよ!
ニセ嫁始めた頃の、鬼にコテンパンに痛めつけられていたあの日の私に聞かせてやりたいわ!
土下座希望だったけれど、まあ、悪くないわね。
「今回は、三条家の時と違います。伊織様、くれぐれもお気をつけ下さい」
中松がおもむろにメモを取り出し、さらさらと達筆な字で指示を書いた。
――今から大切な事をお伝え致します。盗聴されている可能性も考えて、筆談に致します。
驚いて中松を見た。この男は、ありとあらゆる可能性を考え、私に危険が及ばないように配慮してくれているのね。
「それから、くれぐれも阻喪がないように」
「はい。解っているわ」
この会話を一矢の足をひっぱる何者かに盗聴されているかもしれないので、相手にそれを悟らせない様に会話を続けながら、中松が更にメモにペンを走らせた。私がニセ嫁とか、絶対に外部の人間に悟られる訳にはいかないからね。
「アクセサリーはこちらを用意しました。本日のドレスに合う大きなもので御座います。美しい伊織様によく似合うと思います」
渡されたものは、大きなダイヤの花柄、中央にブラックパールが付いた、見るからに高そうなイヤリングだった。
今日は土曜日。一週間の中で一番忙しいのに、グリーンバンブーは臨時休業にしてもらった。家族は婚約披露パーティーに全員出席してもらうように段取りがしてある。
婚約が決まってからは、常連様や事情を知らない従業員に惜しまれつつ、今日まで過ごしてきた。中には花やお祝いを持ってきてくれる常連様もいて、本当に申し訳ない気分でいっぱいになった。ほとぼりが冷めたら、離縁するのに。
胸を痛めつつも優しい常連のみんなの言葉には真摯に向き合い、精いっぱいの笑顔でお礼を伝えた。
そんな私は今日、盛大で晴れやかな舞台に立つ。
私も一矢と同様、他の人は信用できない。何時、どんな意地悪をされるか解らないから、少々具合悪くて嫌味を言われても、用意からセットまで、全て中松にお願いする事にした。
流石に男なので着替え中は退出するようにお願いした。
中松だけでは大変なので、妹の美緒にも頼んで彼女にだけはここに来るように頼んで、中松と一緒に手伝って貰った。
厳しい修業に耐え抜き、付け焼刃ではあるけれど、着飾ればそれなりの令嬢に変身することができた。
「お姉ちゃん凄い・・・・! 綺麗・・・・お姉ちゃんじゃないみたい!」
「見違えましたね、伊織様。麗しゅうございますよ」
聞いた、今の!
『麗しゅうございますよ』ですってよ!
ニセ嫁始めた頃の、鬼にコテンパンに痛めつけられていたあの日の私に聞かせてやりたいわ!
土下座希望だったけれど、まあ、悪くないわね。
「今回は、三条家の時と違います。伊織様、くれぐれもお気をつけ下さい」
中松がおもむろにメモを取り出し、さらさらと達筆な字で指示を書いた。
――今から大切な事をお伝え致します。盗聴されている可能性も考えて、筆談に致します。
驚いて中松を見た。この男は、ありとあらゆる可能性を考え、私に危険が及ばないように配慮してくれているのね。
「それから、くれぐれも阻喪がないように」
「はい。解っているわ」
この会話を一矢の足をひっぱる何者かに盗聴されているかもしれないので、相手にそれを悟らせない様に会話を続けながら、中松が更にメモにペンを走らせた。私がニセ嫁とか、絶対に外部の人間に悟られる訳にはいかないからね。
「アクセサリーはこちらを用意しました。本日のドレスに合う大きなもので御座います。美しい伊織様によく似合うと思います」
渡されたものは、大きなダイヤの花柄、中央にブラックパールが付いた、見るからに高そうなイヤリングだった。
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