【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです
9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。・その9
「さあ、応急処置ですが、セットが出来上がりましたよ。そろそろ戻らなくては、一矢様が怪しみます」
手際もいいし、新しいアレンジも応急処置とか言いながら綺麗だった。
この男は本当に何でもできる。出来ない事はないのかと聞きたいくらい、何でも完璧にこなしちゃう。腹の立つ男だ。
「そうね。随分時間も立っちゃったし、心配かけているわよね」
「しかし、心配ですね。ボイスレコーダーが早速役に立つかもしれないので、用意だけはしておきます」
さっき渡したボイスレコーダーからマクロSDを抜き取り、部屋に入る前の辺りからすぐ再生ができるようにしてくれた。
「足もかけられたのですか」
前後のやり取りを軽く聞いた中松が、呆れた顔を見せた。
「部屋に入ってすぐだったし、そんな意地悪な人だと思わなかったから油断しちゃった」
「油断は禁物ですよ。一矢様に取り入ろうとしている女性は、山のようにいらっしゃいます。恐らく来週のパーティーでも、伊織様を差し置いて強引に一矢様に迫る女性もいらっしゃるでしょう。そこから、一矢様を守って下さい」
・・・・いや、私が守ってもらうんじゃなくて、私が守るんかーい!
心の中でツッコんだ。
「そろそろ本当に戻りましょう。まあ、恐らくあの令嬢は嘘泣きで三条様に泣きつく事でしょう。そうなったら、早速これを聞かせましょうね。お灸を据えるかどうかは、相手次第です」
神松は鬼の笑顔で微笑んだ。怖いんだぁー、この笑顔。マジで目が笑っていないから。
どうやったらこんな顔ができるんだろう。目の奥の笑顔の線が、どこかで切れてしまったのだろうか。
「さあ、行きますよ」
促されたので頷き、レストルームの扉を開けようとしたその時――
「安心しろ。お前は、俺が絶対に守ってやる」
低い中松の囁きが耳をくすぐった。
「えっ!?」
「さあ、早く。一矢様がお待ちです。参りますよ」
ぼそぼそ低い声で話すものだから全然わかんないけど、お前を守ってやるとか言わなかった?
中松って・・・・もしかして、いい奴だったりして!?
今回の騒動は、少しだけ中松の事を見直す案件になった。
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