【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。・その2

 そして今回お邪魔する屋敷は、三条様という昔から三成家が懇意にしている取引先。どうも義理姉の親戚関係だとか。ということは、腹違いのお母さまの親戚? 良く解らないけれど、立場はこちらの方が上の模様。三成家は三条家を取引先にしているから、三条家<三成家という方程式が成立しているのだけど、ひとつ私が懸念している事がある。
 三条家には何でも年頃の・・・・二十歳くらいになる成人女性の一人娘がその屋敷にはいらっしゃるようで・・・・。もう、行く前から嫌な予感しかしないのよ。

 鬼松の運転するリムジンが、三条家に到着した。三成本家よりも小さい家だけど、それでも十分に大きなお屋敷。グリーンバンブーが何個分かしら。お部屋も沢山あるんだろうなぁ。
 センサーがリムジンを感知したのだろう。ナンバー照合とかもしているのかしら。何の確認もせず、大きな鉄門が開いていく。お金持ち仕様は、どういうしくみなのか庶民の私にはさっぱり解らない。
専用の駐車場にリムジンを停め、玄関へ向かう。美しい庭はきちんと手入れが行き届いている。夏の日差しに照らされた花が、風にそよがれ揺れていた。

 玄関の前に立つと、大きな玄関が開き、スーツを着た初老の執事と思われる人が頭をきっちりと下げ、ようこそ、いらっしゃいました、と丁寧に迎えてくれた。
 私も深くお辞儀をして、案内されるままに屋敷内へ入った。言われるまま通された部屋には、”世界最高の既成スーツ”と称されるキートンの濃紺にうっすらとチェックラインの入った上品な高級スーツを着用した、彫の深い紳士的な男性が佇んでいた。口ひげが少しあって、威厳もオーラも半端ない。凄い方なのだ、と一目見て解った。


 厳しく鋭い目線を私へ向けていたが、こちらの目線に気が付いたのか、すっと奥へその感情を引っ込めた。もしかしたら・・・・彼が一人娘を一矢にあてがうつもりで考えていたのなら、ぽっと出の私の存在は面白く無いだろう。中松の言う通りだと思った。

 修業中、中松に上流階級の醜い権力争いや思惑、令嬢のあしらい方、様々叩き込まれた。
 お陰で、私をひと睨みした三条さんの考えが解るようになったのだ。


 今回、中松がスムーズな縁談になった経緯を説明する為に、シナリオを立ててくれたのだ。


 何の身分も持たない私と一矢を結婚させるためには、私が一矢の幼馴染で、昔からお互いを思い合うからこそ婚約した、と、そうする事にした。納得はして貰えないだろうが、財産も身分も地位も無い私と一矢が婚約するには、それ相当の理由が必要なのだ。何とも脆いシナリオだろうかとは思う。私は本当の事だけれど、一矢はそうじゃない。

 でも、演じて貰わなければ困る。今日はその、練習の日なのだ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品