【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

8.ニセ嫁、旦那様(ニセ)の為に、腕を振るって愛妻弁当を作ります。・その4

 それから厳しく指導されながらも朝食を済ませ、続いて弁当作りになった。
 一矢家の広い厨房を借り、何を作ろうか悩んだ。
 冷蔵庫を見ると、使い慣れない食材ばかりが詰め込まれていて、何が何だか良く解らなかった。本日担当のコックに聞きながら、とりあえず勝手も解らないので、利用しやすい食材を分けて貰った。

 今日のメニューは鹿児島県産の高級黒豚を利用した、ヒレとんかつ弁当。

 グリーンバンブーの取り扱い豚より、はるかに高級なお肉だと思うけれどね。流石三成家の冷蔵庫は、一般庶民が口にするようなスーパーで売っている肉や野菜は入っていない。
 後は、付け合わせのカボチャのサラダと、特製だし巻きを作った。小松菜の胡麻和えも入れておいた。どれも一矢が好きな物だが、家の食材と違うから、また違う味になったと思う。

 幼少期からうちの洋食を食べ慣れている一矢だから、お弁当はよく洋食物を入れている。まあ、悪くないという感想が来るあたり、洋食のお弁当は気に入っている模様。
 それにしてもよくよく考えたら、超お金持ちの御曹司が、貧乏くさい洋食屋の弁当を毎日毎日買いに来るって、どう考えてもおかしいわよね。



 ・・・・はっ。もしかして!



 ピシャーン、と自分の中で雷が鳴った音がした。




 もしやうちが相当貧乏で、店の経営が傾いていると思われている・・・・?(貯金少ないから、その考え自体は当たっているけど!)
 幼少期に受けた恩があるから、それを『弁当を買う』という形で返している、とか・・・・?




 ああーん、きっとそうだわー!
 それ以外、理由が思いつかないものー!




 ・・・・いい機会だから、もうお弁当は買わなくてもいいって言っちゃおうか。
 私は一矢の為にお弁当を作るのは、全然苦じゃないし、むしろ平日は一矢に・・・・少しでも会えて、嬉しいって思ってしまうけど、初恋にさよならするなら、何時までも一矢のお弁当を作り続ける訳にはいかないもんね。
 それに、この屋敷で少しだけど暮らしてみて思った。
 今まで、何という貧相なお弁当を一矢に作り、食べさせていたのだろう、と。


 やっぱり恩よ。それしかないわ。
 お金出せば豪華で無添加なお弁当なんか何だって買えちゃう一矢が、わざわざグリーンバンブーのお弁当を買うなんて、考えられないもの!

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