【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

7.旦那様(ニセ)とのなれそめを思い出す嫁(ニセ)。・その7

 それから、彼が困れば私の家を訪ねてくるようになった。私の両親は来るもの拒まずだから、偉そうで横柄な態度の一矢の事を気にもせず、差別することなく可愛がってくれたし、お風呂も小学校になるまでは一緒に入っていた。

 次第に大きくなるにつれ、彼も家での立ち振る舞いが解ってきたようで、徐々にグリーンバンブーには来ることが減ってしまった。
 中松を拾ったのも大きかったと思う。彼の存在が、一矢をしっかりとした少年に成長させたのだ。
 さっきも修業が厳しい事を見抜いていたし、恐らく一矢もその昔、鬼の中松に相当しごかれたのだろう。
 その辺りから一矢が私の家を頼る事は無くなったが、適当な距離を保ちつつ友人関係は続けていた。



 幼い頃は家の事情とかよく解らなかったし、ただ、一矢が好きだった。



 素直に言い出せず、一矢を想い続けたまま、こんな年になってしまった。 
 何時も淋しそうに陰のある彼を、何とか明るくしたかった。
 私だったらずっと大事にするのに、ってそう思っていた。

 だからお弁当を私に作れって言ってくれた時、本当に嬉しかったんだ。
 毎日毎日、一矢の為にお弁当を作るのが楽しかったし、どんな風に喜んでくれるかなって、一生懸命考えた。


 でも、それはもうすぐ終わり。
 初恋に、いよいよピリオドを打つ時が来たのね。


 ニセ嫁の契約期間は特に設けなかった。恐らくニセの婚約発表をして、ほとぼりが冷めたら別れたという事にしてしまうのだろう。
 戸籍については聞いていないけれど、入籍はできればしたくないなぁ。偽装のまま終わりたい。一瞬でも三成の姓になれば戸籍に残るし、一生思い出すから避けたい。これについては、まだ何も取り決めていないから。
 その辺、来月のパーティーが無事に終わったら、期間も含めて交渉しよう。契約した時は、とにかく借金を片付けなければグリーンバンブーが無くなってしまうという事ばかりが頭を占めていたから、そこまで考えが及ばなかった。


 一矢。
 一矢。


 私、貴方が好き。
 こんなにも、好き。


 家庭環境が悪すぎるから、高慢だしひねくれているし素直じゃないし・・・・。
 なんか色々面倒くさいところいっぱいあって、ああーっ、もうーっ、ってなるけれど、素直な貴方はとても魅力的だと思えるし、意地悪されて辛い時でも、弱音を吐かずに一人で立ち向かっていって、一生懸命頑張って苦しい境遇を乗り越える姿は本当にカッコいいし、尊敬する。

 勉強も頑張っているし、ここまでやってきた彼の努力は素晴らしいと思う。
 平凡に生きてきた私とは住む世界が違うし、努力の内容も違う。

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