【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

6.旦那様(ニセ)に忠実な執事が、実はとんでもない羊被りだった件。・その2

 身体を洗う専用のスポンジに乳白色のボディーソープを垂らし、泡立てたものを背中に塗り、優しく擦ってくれた。
 中松が選んでくれた水着は、前はワンピースタイプで上品、露出は少ないけれど、ホルターネックになっているから背中は剥き出しになっているんだ。その部分に一矢が触れてくれて、ドキドキが止まらなくなってしまった。

 美しく長い指。綺麗な手。水洗いばかりしてささくれた私の汚い手とは大違いだ。

「伊織。中松は厳しいだろう。辛い修業だと思うが、弱音も吐かずによく頑張ってくれているな」


 背中を一矢の手が滑る。嬉しいけどくすぐったい。


「あ・・・・一矢の迷惑にならないようにしなきゃって・・・・今までやった事もないような事ばかりで、失敗が多いから中松にすっごく叱られちゃうけれど、でも、引き受けた以上は頑張るから!」

 張り切って答えた。私は料理しか取り柄が無いから、お嬢様に変装するには無理がある。でも、一矢の為に頑張りたいっていう事だけは伝えておきたい。

「・・・・伊織なら、そう言ってくれると思っていた。しかし、慣れない大変なことを頼んでしまってすまない」

「いいよ。幼馴染のよしみでしょ。私が借金で困っているのをすぐに助けてくれたんだから、一矢が困っているなら、私が助けるのは当然じゃないの」

「ありがとう・・・・心強いな」

「婚約発表して、縁談来なくなった?」

 ニセ嫁を引き受けて、それが無くならなかったら私のやっている事は無意味となってしまうので、聞いておいた。

「ああ。お前のお陰で、毎日毎日届いていた見合いの書類がぱったり来なくなったから、お陰で助かっている」

「それは何よりね。さ、次は私の番よ」


 なんか、ニセ夫婦同士だけど、お互いを思い合っていい感じじゃない?
 このまま本当の夫婦に・・・・なんて無理かぁー。
 身分の高低差が凄すぎるものね。このお屋敷で本物の嫁としてやっていく自信は、私に無い。


「その交代の前に、伊織。私と約束してくれないか」

「ん? 何を?」

「誰にも、触れさせないでくれ」

「・・・・何を触れさせなければいいの?」

「お前自身を、だ、伊織。契約中、お前は私のものだ。誰にも触れさせるな。いいか、絶対だぞ?」

「・・・・言われなくても、そんな事しないよ」

 ため息を吐きたくなった。
 一体、私が誰の事を好きだと思っているのよ!
 人の気も知らないで!
 そんな事いちいち言わなくたって、一矢以外の男とどうこうなるなんて、私の中には無いから!

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