【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

5.旦那様(ニセ)は、嫁(ニセ)の水着を選ぶのにVIPルームを利用致します。・その1

 結局一睡もせず憔悴しきった私は、一矢の束縛を振り切り、慣れないコルセットを着けて苦しい思いをしながら、これまた慣れないお嬢様衣装(最早ドレスね)に身を包んだ。鏡で自分の姿を見るだけなら、衣装のお陰でなんちゃって令嬢には見えなくも無いが・・・・マナーや言葉遣い、その他諸々・・・・私に出来るのかな。不安しかないが、一か月しか婚約パーティーまで時間が無いし、引き受けた以上は責任を持って頑張るしか無い。

 朝から鬼松――もうこれから修業中は、中松じゃなくて鬼松と呼ぶことにしてやろうかな――の修行に耐え、朝食の時。おはようの挨拶をしても、一矢はぶすっとした顔で機嫌を損ねていた。かなり機嫌が悪い様子だ。

 おのれ・・・・昨夜は勝手に人のファースト・キスを奪っておきながら・・・・!
 何でそんなに不貞腐れた顔をしているのよ! 腹立つわあ! 本当だったらこっちが怒りたい所よ!
 ぶすっと不機嫌そうな顔をしながらも、相変わらず広いダイニングなのに私の隣に座ってくる夫(ニセ)。怒っているのに隣に座るのは、何故?

「伊織。どうしてちゃんと私を起こして、朝の挨拶をしていかなかったのだ」刺々しく一矢に言われた。

「え? 早朝からニセ嫁修行があったし、気持ちよさそうに寝ていたから、起こすと悪いと思って声を掛けなかっただけよ」

「そんな気遣いは不要だ。夫婦として初めての夜を過ごし、起きればお前が隣で眠っているのが当然だろう。それが嫁の務めだというのが、何故お前には解らないのだ」

「そんな事言われても・・・・」


 えー。そんな定義知らないし!


「朝から気分が悪い。嫁失格だな」

 一矢は相当怒っている。なんで? 私、そんなに悪い事した?
 しかも嫁失格とか、言い過ぎじゃない!?
 起こさなかったのも、理由があるんだから!

 ニセ夫の態度に腹が立ったので、言い返してやった。「お仕事で疲れているだろうから、にせ嫁としてニセ旦那に気を遣って起こさなかっただけよ! それの何が悪いの!?」

 こんな時、素直に『ごめんなさい、私が悪かったわ』なんて言えたらいいんだけど。
 そんな風に言える女だったら、初恋はここまで拗れていないわよねー。はあああー。
 朝から超・最悪な気分!

「本当に口の悪い女だ。先が思いやられる」

 思いきりため息を吐かれた。

「だったら私にニセ嫁なんか頼まなきゃいいでしょ!」

「他に頼めないから、仕方なくお前で手を打っているのではないか」

「モテる割に一矢は友達ゼロだもんねー。人徳無いから」

「伊織・・・・言ってはならぬことを・・・・!」

 一矢が余計に怒り出した。


「先に喧嘩売って来たのはそっちでしょ!」


 私も後に引けない。

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