【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

4.ファースト・キスは、旦那様(ニセ)と!?・その2

 
「は、はいっ?」

「左が痒い」

「あ、ああ、ご、ごごご、ごめんねっ。すぐやるわ」

 慌てて左をごしごし擦った。

「お前も洗ってやろうか」

「け、けけけ、結構ですっ。ま、に、あってます」

「夫婦だろう。遠慮するな」

 一矢に振り向かれた。ガウン越しとはいえ、下の素肌に一矢の鋭い視線が注がれているのかと思うと、顔が赤くなって正面の一矢を直視できなくなってしまった。恥ずかしい。俯いて視線を反らした。

「何故ガウンを着ている?」

 心なしか残念そうに一矢が言った。「ここは風呂場だぞ。裸ではないのか」

「だ、だって見られたら・・・・恥ずかしいし・・・・」

「昔はよく一緒に風呂に入っていただろう。あの狭い伊織の家風呂」

「狭くて悪かったわね」

 お金持ちのこの家と私の家のお風呂を一緒にしないで欲しい。
 普通の洋食屋兼自宅の風呂が、超絶広い訳が無いのだ。普通の一般家庭の大きさだから。

「それより伊織。本来、風呂は裸で入るものだと思うのだが? ガウン着用等とは、おかしくないか?」

「いやそれ、裸なんて絶対無理。今の状態は本来の姿じゃないし、一矢だってタオル巻いているじゃない」

「突然私の裸をお前に見せたら驚くだろうと思って、一応エチケットとしてタオルを巻いておいたのだ。見たいというなら取るが?」

「ギャー、いやーっ、やめてっ! 絶対やめて!!」

「では私がタオルを取れば、お前もガウンを取るか?」

「ムリムリムリムリ。絶対絶対絶対ムリ。契約違反、契約違反!」

「ならば、夫婦としての親睦を深める為にも、湯船につかるなら良いだろう。脱いでもお前の裸は見ないと約束する」

「いやムリだから。そう言われても絶対ムリだから」

 これだけ頑なに断っているのだから、諦めて欲しいのに一矢は全然諦めない。

「主人の頼みは絶対だぞ、伊織。誰が借金の肩代わりをしてやったと思っているのだ? 今すぐ耳を揃えて私に一千万円を返すというなら、断っても良いが?」

「ぐ・・・・ズルいよ、一矢」さっきも中松に無理やりこんなところに押し込められて、お金持ちがそんなに偉いんだって思ったら、悲しくなってきた。「私だって、自分の借金の事ならまだ我慢できるけど・・・・まあ、お母さんの借金だから家族連帯責任って言われたらそれまでだけどさ、他人の借金押し付けられただけなのに・・・・こんなの・・・・酷いよ。お金を持っているのが、そんなに偉いの? 貧乏でも一生懸命働いて慎ましやかに生活している私達を騙す方が悪じゃない! 一矢だけはそんな事言わないって思ってた・・・・」

 半泣きになっていると、無理強いして悪かった、と少し濡れた手で頭を撫でてくれた。

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