【完結】幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです

さぶれ(旧さぶれちゃん)

1. 私、一千万円で身売りする事になりました。・その6

 
「キャー、イチくん、いいアイディアじゃないのおっ! ぜひ、いおちゃんをお嫁さんにしてね。おねがいしまあーすぅ!」

 さっきまでしくしく泣いていたお母さんが、パっと笑顔になって私と一矢の間にしゃしゃり出てきた。

「ちょっと、何言ってるのよお母さん!」

 私の縁談を勝手に進めないで!!
 偽装の契約婚とか言っているのに、普通親なら止めるだろーがあぁ!
 そんな非道な縁談話を持ち掛けてドヤ顔する男の所に、両手放しで大事な娘を嫁にやるなああ!!
 でも私、そんな非道な男に大昔から惚れているんだよおお!! ちぃくしょおおお――!
 今も結婚しないか、偽装だが、何か? みたいな事言われちゃってるにも関わらず、嬉しくて顔が緩みそうになっているなんて、絶対口が裂けても言えないわ――――っ!!


「イチ君。偽装とか契約とかよく解らないけどぉ、結婚するんだよね? いおちゃんの事、よろしくおねがいしまーす!」


 お母さん、軽っ!
 作りすぎた晩御飯のコロッケお裾分けしてあげるー、残さず食べてねー、みたいなノリなんだけど!
 私、残り物のお惣菜扱い?

「一矢君、よく言ってくれたね! これでグリーンバンブーも一生安泰だ!!」

 お父さんまで一矢の手を取って、涙を流して喜んでいる。

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って、お母さん、お父さん! な、なななんで私が、こここ、こんな男の嫁に行かなきゃいけないのよおっ!」


 嬉しいけど・・・・嬉しくなあぁぁぁ――――いっ!!


「えー。だってぇ。いおちゃんがイチ君のお嫁さんになってくれたらぁ、お店売らなくてもいいんだよお? 家もなくならないし、みんなハッピーじゃない。ね?」

 ね? じゃなーい!
 こうなったのは、一体誰のせいだ、誰の!!

「そうだぞ、伊織。美佐江がこんなに困っているのだ。子供なら親を助けるのが当然だろう」

「ふざけるな――――っ!! とにかくそんな話、受けられないわよっ! そんな人身売買みたいな事・・・・現代日本で時代遅れじゃないのっ」

「どうでも良いが、私の弁当は一体いつになったら着手してくれるのだ」一矢が大きくため息をついた。この男は、私がこれだけ嫌だと訴えているのにも関わらず、平然としているのだ。「借金問題が片付いたら、弁当を着手できると言ったのは、伊織ではないか。私が助けると言ってやっているのだ。有難く受けるだけで良いだろう。グリーンバンブーも助かるし、私に煩わしい見合い話が舞い込まなくて済むし、今まで通り毎日弁当が買える。いいことづくめで、伊織が反対する意味が皆無だ」

「だ、だって! い、一生に一度の事なんだよ? け、結婚なんて・・・・」


 問題ありまくりよおっ!


 一矢のお嫁さんなんて・・・・ずっとなりたかったわよぉおおぉ――!



 それなのに契約婚=いずれ離婚が決定なんて、拗れまくった初恋に未来ナシじゃないのよぉおぉ――――!!




 もおっ! 反対したくもなる、私の気持ちも解ってよ!

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