どうにもならない社長の秘密
第四章 変わるもの変わらないもの 10
その後、社内はその噂でもちきりになり、紫織は目の前で見たということで女子社員たちにあれやこれやと聞かれて困った。
『どんな女の子だった? 美人?』
『社長どんな様子だったの?』
騒ぎ立てたのは噂好きの陽子さんだけではない。
そんな三面記事のような事件はそうそうあることじゃないし、むしろ噂をしない方が不自然な状況のなか、紫織も心を無にして答えた。
『すっごく可愛い女の子だったわ。社長は、うーん。なんていうか、気まずそうだったわね』
社長という彼の立場をおもんばかり、最大限の忖度をしてもそれが限度。
もっと正直に伝えるなら、女の子が泣いていて気の毒で仕方なかったとか、よほど彼が酷いことをしたに違いないと、言いたいところだ。
それを言わなかっただけでも、彼には感謝をしてほしいくらいである。
――とにかくあれはない。
あんなクズみたいな男になっていたとは。
タイムマシンに乗って昔の自分に教えてあげたいくらい。心底ガッカリした。
人前で手をあげた女の子だって相当勇気がいっただろうし、わざわざ会社に押しかけてあそこまでのことをするなんて、どれだけ悔しい思いをしたのだろう?
あんな大人しそうな可愛い子に、あんなことをさせるなんて、信じられない!
さすが、初日にあれほど酷いメッセージを送ってきただけのことはあるわ。
あーあ。情けなくて涙も出ない。
あんなクズ男に嫌われていたってもうどうでもいい!
「はぁ」
さて、気分を変えてもうひとがんばりと思いながら紫織は席を立った。
向かったのは二階の喫茶コーナー。
今日は何を飲もうかなと考えた。
喫茶コーナーの自販機には、緑茶に紅茶、コーヒーもココアも炭酸入りジュースも、色々な飲み物もあって、しかもタダだ。
なんて素晴らしいのだろう。
「お疲れさまです」
「あ、紫織さん、お疲れさまでーす」
お互いにニコッと微笑んですれ違ったのは総務の女子社員。
彼女は三十代らしい。自分よりずっと若い人ばかりだと思っていた社員たちは、そう見えただけで、同じくらいの年齢の人も多かったし、室井と同じ四十代の社員も沢山いた。
定年まで働けるかなぁと考えてみた。
もちろん勉強はしないといけない。
苦手なパソコンとの闘いだから一筋縄にはいかないけれど、いまの時代この会社でなくてもそれは同じだろう。
コンビニエンスストアで沢山のシステムを覚える大変さと比べたら、まだ自分のペースを掴めるだけ気が楽だとも思う。
などとつらつら考えながら喫茶コーナーに向かうと、笑い声が聞こえて来た。
「あはは」
それは光琉の楽しそうな声だった。
――誰と一緒にいるの?
なにやら嫌な予感がして足を止めた紫織は、頬を強張らせた。
『どんな女の子だった? 美人?』
『社長どんな様子だったの?』
騒ぎ立てたのは噂好きの陽子さんだけではない。
そんな三面記事のような事件はそうそうあることじゃないし、むしろ噂をしない方が不自然な状況のなか、紫織も心を無にして答えた。
『すっごく可愛い女の子だったわ。社長は、うーん。なんていうか、気まずそうだったわね』
社長という彼の立場をおもんばかり、最大限の忖度をしてもそれが限度。
もっと正直に伝えるなら、女の子が泣いていて気の毒で仕方なかったとか、よほど彼が酷いことをしたに違いないと、言いたいところだ。
それを言わなかっただけでも、彼には感謝をしてほしいくらいである。
――とにかくあれはない。
あんなクズみたいな男になっていたとは。
タイムマシンに乗って昔の自分に教えてあげたいくらい。心底ガッカリした。
人前で手をあげた女の子だって相当勇気がいっただろうし、わざわざ会社に押しかけてあそこまでのことをするなんて、どれだけ悔しい思いをしたのだろう?
あんな大人しそうな可愛い子に、あんなことをさせるなんて、信じられない!
さすが、初日にあれほど酷いメッセージを送ってきただけのことはあるわ。
あーあ。情けなくて涙も出ない。
あんなクズ男に嫌われていたってもうどうでもいい!
「はぁ」
さて、気分を変えてもうひとがんばりと思いながら紫織は席を立った。
向かったのは二階の喫茶コーナー。
今日は何を飲もうかなと考えた。
喫茶コーナーの自販機には、緑茶に紅茶、コーヒーもココアも炭酸入りジュースも、色々な飲み物もあって、しかもタダだ。
なんて素晴らしいのだろう。
「お疲れさまです」
「あ、紫織さん、お疲れさまでーす」
お互いにニコッと微笑んですれ違ったのは総務の女子社員。
彼女は三十代らしい。自分よりずっと若い人ばかりだと思っていた社員たちは、そう見えただけで、同じくらいの年齢の人も多かったし、室井と同じ四十代の社員も沢山いた。
定年まで働けるかなぁと考えてみた。
もちろん勉強はしないといけない。
苦手なパソコンとの闘いだから一筋縄にはいかないけれど、いまの時代この会社でなくてもそれは同じだろう。
コンビニエンスストアで沢山のシステムを覚える大変さと比べたら、まだ自分のペースを掴めるだけ気が楽だとも思う。
などとつらつら考えながら喫茶コーナーに向かうと、笑い声が聞こえて来た。
「あはは」
それは光琉の楽しそうな声だった。
――誰と一緒にいるの?
なにやら嫌な予感がして足を止めた紫織は、頬を強張らせた。
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