どうにもならない社長の秘密

白亜凛

第二章 ばいばい花マル、よくできました 8

「次の職場で、紫織にいい男が見つかるといいなぁ」

「え? アハハ。そうですねぇ」

「紫織、男がいなくて、寂しくないのか?」

「やだぁ、寂しくなんかありませんよ。ルームシェアをしている友達もいるし」

 次の言葉はわかっている。

「寂しかったら いつでも抱いてやるぞ」
 室井課長の口癖だ。

「またぁ。SSgでそんなこと言っちゃダメですよ。セクハラでレッドカードですからね」

「どこに行ったって俺は俺だ。セクハラしまくるぞ」

「またまたぁ。そんなことばっかり」

 他愛もない話をしながら『株式会社SSg』は着実に近づいていく。

「あ、このお店安いし美味しそう!」
「旨かったぞ、この前入ってみた」
「さすが課長、早っ」

コンビニの場所を確認したりしながら、ふたりはいよいよ目的地についた。
「それにしても便利な場所ですねぇ」
「だろ?」

 ――え?

「こ、ここですか?」

「ああ」

 看板には確かに『株式会社SSg』と書いてあるのだから間違いはない。

 ――でも。

 ビルを見上げた紫織は出来れば違ってほしいと思いながら、振り返ってもう一度看板を睨んだ。
 そしてもう一度見る。

 今にも倒れそうだった花マル商事のビルとは似ても似つかない。

 真新しい近代的なビルは、太陽に祝福されているかのように、キラキラと輝いていた。

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