【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
秘密の恋のたどる道 6
チームの仲間が赤ちゃんを。なんて素敵で幸せな事なのだろう。
思わずおめでとうございますの言葉が喉まで出かかったのをなんとかこらえた。
まだ西尾さんが話している。最後まで聞かなければ。
「それでね、和玖君やチームのみんな、商品部長との協議次第になるけど、来年の頭には産休に入って、その後は子どもが1歳になる前日まで、そのまま育休を取らせてもらうことになると思います。迷惑をかけちゃうかもしれないけど…ごめんね」
「そんなの、全然迷惑じゃありません」
「西尾さんの体とお腹のお子さんのことを第一に考えてください。僕たちで出来ることはなんでもしますから、頼ってください」
あずみと創太郎が言うと、西尾さんがはにかんだ顔になる。
「ありがとう。妊娠がわかったときはいろいろ不安もあったけど、篠原さんもすごく頑張ってくれているし、安心して産休に入る準備ができそうです」
そう言って笑いかけてくれる。あずみは泣きそうになった。
私からは以上です、と言って会釈し、西尾さんは話を終えた。
その体はよくよく見ればお腹がゆるく出ていて、そこにひとつの命が宿っていることに神秘を感じずにはいられない。
上杉さんをちらりと見る。彼女はまっすぐに顔を上げて、西尾さんの報告を意外にも険のない、静かな表情で聞いていた。
思い返せば、あずみがはじめて出勤してきた時も上杉さんは西尾さんにはきちんとあいさつしていた。
きっと心のどこかでは尊敬しているんだろうな、と感じる。彼女も本当は悪い人ではないのだろう。もっと時間が経ったら、私とももう少しだけでいいから仲良くして欲しいな、とあずみは心の中で苦笑した。
打ち合わせが終わってみんなが立ち上がると、会議室内はにわかに祝福モードに包まれた。
新田部長はむっつりとした顔でそれをしばし見つめ、会議室から出ていく。
後ろ姿に見える耳は赤かかった。
創太郎に視線を向けると、彼は穏やかな顔であずみを見つめていた。目が合い、創太郎が微笑む。あずみも思わずにっこりと笑った。
10年前のあの時、彼がいなくなって途方に暮れていた自分に教えてあげたい。
また出会えるまで時間がかかるし、再会して結んだ関係はまた秘密にしなければいけないけれど、彼と近い距離で一緒にいられること。
彼はあなたの知っている15歳の少年のままではないけれど、またあなたは彼に恋をして、彼もあなたを時には困るくらい、想ってくれること。
愛してくれること。愛していること。
会議室から出ると、つきあたりにある窓が目に入った。
朝降っていた雨はいつの間にか止んでいて、灰色の雲の隙間から、青い空が覗いている。
手前に見える欅の木の、上の方の葉がよく見ればわずかに赤くなっていることにあずみは気がついた。
秋がすぐそこに来ているのだ。
少しの間、濃緑の葉の中でまるで芽吹いたみたいに見えるその一点を見つめる。
こんな風に移ろう季節を、これからもずっとずっと、彼と一緒に感じられる。大事にしていこう。
そのためには、まずは目の前の仕事をしっかり頑張ろう。
よし、とお腹に力を入れる。
あずみは踵を返すと、すぐそこで足を止めて待ってくれている彼に追いつくため、早足でその場を後にした。
思わずおめでとうございますの言葉が喉まで出かかったのをなんとかこらえた。
まだ西尾さんが話している。最後まで聞かなければ。
「それでね、和玖君やチームのみんな、商品部長との協議次第になるけど、来年の頭には産休に入って、その後は子どもが1歳になる前日まで、そのまま育休を取らせてもらうことになると思います。迷惑をかけちゃうかもしれないけど…ごめんね」
「そんなの、全然迷惑じゃありません」
「西尾さんの体とお腹のお子さんのことを第一に考えてください。僕たちで出来ることはなんでもしますから、頼ってください」
あずみと創太郎が言うと、西尾さんがはにかんだ顔になる。
「ありがとう。妊娠がわかったときはいろいろ不安もあったけど、篠原さんもすごく頑張ってくれているし、安心して産休に入る準備ができそうです」
そう言って笑いかけてくれる。あずみは泣きそうになった。
私からは以上です、と言って会釈し、西尾さんは話を終えた。
その体はよくよく見ればお腹がゆるく出ていて、そこにひとつの命が宿っていることに神秘を感じずにはいられない。
上杉さんをちらりと見る。彼女はまっすぐに顔を上げて、西尾さんの報告を意外にも険のない、静かな表情で聞いていた。
思い返せば、あずみがはじめて出勤してきた時も上杉さんは西尾さんにはきちんとあいさつしていた。
きっと心のどこかでは尊敬しているんだろうな、と感じる。彼女も本当は悪い人ではないのだろう。もっと時間が経ったら、私とももう少しだけでいいから仲良くして欲しいな、とあずみは心の中で苦笑した。
打ち合わせが終わってみんなが立ち上がると、会議室内はにわかに祝福モードに包まれた。
新田部長はむっつりとした顔でそれをしばし見つめ、会議室から出ていく。
後ろ姿に見える耳は赤かかった。
創太郎に視線を向けると、彼は穏やかな顔であずみを見つめていた。目が合い、創太郎が微笑む。あずみも思わずにっこりと笑った。
10年前のあの時、彼がいなくなって途方に暮れていた自分に教えてあげたい。
また出会えるまで時間がかかるし、再会して結んだ関係はまた秘密にしなければいけないけれど、彼と近い距離で一緒にいられること。
彼はあなたの知っている15歳の少年のままではないけれど、またあなたは彼に恋をして、彼もあなたを時には困るくらい、想ってくれること。
愛してくれること。愛していること。
会議室から出ると、つきあたりにある窓が目に入った。
朝降っていた雨はいつの間にか止んでいて、灰色の雲の隙間から、青い空が覗いている。
手前に見える欅の木の、上の方の葉がよく見ればわずかに赤くなっていることにあずみは気がついた。
秋がすぐそこに来ているのだ。
少しの間、濃緑の葉の中でまるで芽吹いたみたいに見えるその一点を見つめる。
こんな風に移ろう季節を、これからもずっとずっと、彼と一緒に感じられる。大事にしていこう。
そのためには、まずは目の前の仕事をしっかり頑張ろう。
よし、とお腹に力を入れる。
あずみは踵を返すと、すぐそこで足を止めて待ってくれている彼に追いつくため、早足でその場を後にした。
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