【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
箱庭の日々 8
「大丈夫?急に来たね」
今日は遅くなると言っていたけれど、予定が変わったのだろうか。慌てていて車の音に気がつかなかった。あずみは頷いただけでおかえりの言葉を口にする余裕もなく、洗濯ものを外すことに集中した。
創太郎がそれを受け取って、縁側の雨の当たらないところに置いてくれる。全部を避難させてあずみと創太郎も庇の下に入り、二人でため息をついた。
「けっこう濡れちゃったから、洗い直した方がいいかな?」
「いや、この程度なら大丈夫だと思う。あとは乾燥機にお任せしよう」
あらためて外に目を向けると、気持ちが良いくらいのどしゃぶりだった。白っぽい雨のしぶきが砂利の上に立っていて、とうに盛りを過ぎたあじさいがゆらゆら揺れている。
突然の雨に慌てたらしい何かの野鳥が、怒ったような声でびいびい鳴いているのがどこからか響いてくる。
彼の方を向くと、向こうもこちらを見ていて目が合った。少しの間ぎこちなく見つめ合った後、創太郎が框に手をついて、ぐっと体を近づけてきた。
(あ、キスするんだ…)
彼の頬や唇は濡れていて、触れ合うと冷たかった。ちゅ、ちゅと合わせるように重ねられた後、下唇を甘噛みされ、上唇を吸われる。
「ん…」
時々、彼のキスは直接的な行為よりもよっぽど性的な意味があると感じてしまうことがある。あずみの体の奥がじわりと疼いた。
「んん…」
あずみの声が漏れると、彼は長い指をあずみの耳の後ろから差し込んで頭をささえ、更に口づけを深くした。
もう片方の手はあずみの背中から腰を探るように動かされ、脇腹の横から侵入すると、一気に下着の中に入ってきて、お尻を撫でてから前に向かおうとする。
「や…!だめ」
目的がわかって、あずみは彼の手首をぎゅっとつかんで止めた。ここでは、誰か来客があったら見られてしまう。
どこか焦っているようにも思えた彼の手はぴたりと止まり、ゆるゆると体ごと離れていった。
「ごめん。濡れてるの見たら 興奮した」
「…」
大人になった彼はこういうあけすけなことを平気で、かつ真顔で言ってくるので、その都度あずみはぼっ!!と顔から火が出る勢いで赤面してしまう。
あきらかにあずみのことをからかっている時もあるけれど、たいていの場合は世間話のようなさりげなさで口に出すのだ。
好きな人に求められることは嫌じゃないけれど、言葉にして言われるのはとにかく恥ずかしい。
(ていうか、この人ちょっと天然…?昔は気がつかなかったけど)
「…今日、早かったんだね」
なんとなく気まずい空気になったのを何とかしたくて、話題を変えた。
「うん。先方がトラブったみたいで、打ち合わせがなくなったんだ」
「そうなんだ。あ、お腹すいてない?早めにごはんにしようか」
提案すると、創太郎は少し考えて答えた。
「そうだね。でも先に風呂」
なぜかあずみの手首をつかんでくる。
「え、どうしたの」
「篠原さんも濡れてるから、一緒に暖まった方が良いかと思って」
当然のように言うと創太郎はあずみを立ち上がらせ、浴室へ引っ張っていく。
シャワーを浴びたばかりだし、とか、食事の準備が、という言い訳を口にしてささやかな抵抗を試みたけれど、スイッチの入った彼には通用しなかった。
濃密な時間を過ごし、ふらつきながら浴室を出ると、あずみは自室へ向かった。雨はすっかり止んだようだ。
窓から気持ちの良い風が入ってきて、カーテンをふわりと揺らす。肌に当たる風が気持ちよくて、あずみはしばらくの間目を閉じていた。
今日は遅くなると言っていたけれど、予定が変わったのだろうか。慌てていて車の音に気がつかなかった。あずみは頷いただけでおかえりの言葉を口にする余裕もなく、洗濯ものを外すことに集中した。
創太郎がそれを受け取って、縁側の雨の当たらないところに置いてくれる。全部を避難させてあずみと創太郎も庇の下に入り、二人でため息をついた。
「けっこう濡れちゃったから、洗い直した方がいいかな?」
「いや、この程度なら大丈夫だと思う。あとは乾燥機にお任せしよう」
あらためて外に目を向けると、気持ちが良いくらいのどしゃぶりだった。白っぽい雨のしぶきが砂利の上に立っていて、とうに盛りを過ぎたあじさいがゆらゆら揺れている。
突然の雨に慌てたらしい何かの野鳥が、怒ったような声でびいびい鳴いているのがどこからか響いてくる。
彼の方を向くと、向こうもこちらを見ていて目が合った。少しの間ぎこちなく見つめ合った後、創太郎が框に手をついて、ぐっと体を近づけてきた。
(あ、キスするんだ…)
彼の頬や唇は濡れていて、触れ合うと冷たかった。ちゅ、ちゅと合わせるように重ねられた後、下唇を甘噛みされ、上唇を吸われる。
「ん…」
時々、彼のキスは直接的な行為よりもよっぽど性的な意味があると感じてしまうことがある。あずみの体の奥がじわりと疼いた。
「んん…」
あずみの声が漏れると、彼は長い指をあずみの耳の後ろから差し込んで頭をささえ、更に口づけを深くした。
もう片方の手はあずみの背中から腰を探るように動かされ、脇腹の横から侵入すると、一気に下着の中に入ってきて、お尻を撫でてから前に向かおうとする。
「や…!だめ」
目的がわかって、あずみは彼の手首をぎゅっとつかんで止めた。ここでは、誰か来客があったら見られてしまう。
どこか焦っているようにも思えた彼の手はぴたりと止まり、ゆるゆると体ごと離れていった。
「ごめん。濡れてるの見たら 興奮した」
「…」
大人になった彼はこういうあけすけなことを平気で、かつ真顔で言ってくるので、その都度あずみはぼっ!!と顔から火が出る勢いで赤面してしまう。
あきらかにあずみのことをからかっている時もあるけれど、たいていの場合は世間話のようなさりげなさで口に出すのだ。
好きな人に求められることは嫌じゃないけれど、言葉にして言われるのはとにかく恥ずかしい。
(ていうか、この人ちょっと天然…?昔は気がつかなかったけど)
「…今日、早かったんだね」
なんとなく気まずい空気になったのを何とかしたくて、話題を変えた。
「うん。先方がトラブったみたいで、打ち合わせがなくなったんだ」
「そうなんだ。あ、お腹すいてない?早めにごはんにしようか」
提案すると、創太郎は少し考えて答えた。
「そうだね。でも先に風呂」
なぜかあずみの手首をつかんでくる。
「え、どうしたの」
「篠原さんも濡れてるから、一緒に暖まった方が良いかと思って」
当然のように言うと創太郎はあずみを立ち上がらせ、浴室へ引っ張っていく。
シャワーを浴びたばかりだし、とか、食事の準備が、という言い訳を口にしてささやかな抵抗を試みたけれど、スイッチの入った彼には通用しなかった。
濃密な時間を過ごし、ふらつきながら浴室を出ると、あずみは自室へ向かった。雨はすっかり止んだようだ。
窓から気持ちの良い風が入ってきて、カーテンをふわりと揺らす。肌に当たる風が気持ちよくて、あずみはしばらくの間目を閉じていた。
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