【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
社内恋愛がご法度というのは、いまどき人権問題だと思うのですが 4
「おはようございまーす」
「あ…おはようございます」
隣に、あずみよりも少し年上くらいの女性が出勤してきた。あずみがやや緊張しながら挨拶を返すと、気さくに話しかけてくれる。
「新しく入った人ですよね?私は西尾といいます。よろしくね」
「篠原です。こちらこそよろしくお願いします」
「ログインのやり方とかは聞いてる?」
「はい。さっき総務の山地さんに教えていただいて」
「そっか。私はパートだから勤務時間が短いけど、わからないうちはいろいろ聞いてね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
西尾さんの温かい言葉にこっそり感動していると、二人組の女性が仲良く話しながらあずみ達のデスクに向かってきた。
一人はあずみぐらいの年頃で、ちらりとIDカードを見ると寺本と書いてある。
もう一人はおそらく西尾さんよりも少し年上くらいだろうか。IDには上杉と書かれていた。
なにやら、誰かの悪口らしき話で盛り上がっている。
「えーっ。でもそれって甘えじゃないですか?あんたより忙しい人はいくらでもいるんだぞって、私だったら言っちゃうかもしれないです。はっきり言うタイプなんで、私」
「いや私もそうなんだけどね。でもさー、その場にいたらびっくりしちゃって意外と言えないのよ。向こうは自分が正しいって態度だしさ。ほんと、とんでもないよねぇ」
二人はあずみと西尾さんの席の向かい側にそれぞれ座った。西尾さんがPCに目線を向けたまま「おはよー」と言うと『おはようございまーす!』と二人ぴったり息を合わせて元気に挨拶を返す。
そこで二人は初めてあずみに気がついたように目を留めた。
「おはようございます」
あずみがおずおずと挨拶すると、西尾さんの時よりもかなり低いトーンで「…オハヨウゴザイマス」と言って、また二人で話し始めた。
…なんだか怖い。いや、よそよそしい?
わざとあずみが疎外感を感じるように、振る舞っているような。
いや、そんなわけがない。自分はいま緊張で過敏になっているのかもしれない。
『社内恋愛はご法度、バレたら転勤』の衝撃がいまだ拭えないせいもある。
委縮したところに、聞き覚えのある低い声が聞こえた。
「…おはようございます」
創太郎だった。
ボタンダウンのポロシャツに、足周りのすっきりしたアンクルパンツ姿の彼は、真っすぐこちらに向かってきた。
(え…こっち…?)
創太郎は内心かなり動揺しているあずみには目もくれず、チームリーダーの席と思われるデスクに鞄を置いて座った。
「おはようございます!」
あずみの向かいの寺本さんが背筋をぴんと伸ばし、透き通った声で創太郎に挨拶した。さっき上杉さんと誰かの悪口を言っていた時とは声のトーンが全然違うので、びっくりする。
創太郎はのんびりミネラルウォーターを飲んだ後、鞄から白いタブレットを取り出し、USBケーブルでモニタに接続した。モニタはもう1つあって、どうやら二画面で仕事をするらしかった。
(…というか、)
よりにもよって同じチームだとは思わなかった。しかもリーダーだなんて、あずみの上司ということになる。この状況はかなり落ち着かないけれど、「ご法度」のこともあるし、とにかく仕事に支障が出ないようにしなければならない。
9時になると創太郎が顔を上げたので、あずみはドキリとした。
「ちょっと良いですか」
感情のにじまない、淡々とした声だった。チームのみんなが創太郎に注目する。
「今日から入社の篠原さんです。最初は慣れないことも多いと思うので、皆さん気を遣ってあげて欲しいです」
あずみはその場で席を立ち、頭を下げた。
「篠原です。よろしくお願いします」
「えーと。前は家電メーカーにいたんだっけ」
「あ、はい。前職では広報関連の仕事をしていました」
「だそうです。一か月くらいはOJTでの研修ということで、最初から実務に当たりながら仕事を覚えてもらいます。基本的に僕が担当して、僕が不在の時は西尾さんにフォローをお願いしようと思ってます」
「えーっ!?」
「あ…おはようございます」
隣に、あずみよりも少し年上くらいの女性が出勤してきた。あずみがやや緊張しながら挨拶を返すと、気さくに話しかけてくれる。
「新しく入った人ですよね?私は西尾といいます。よろしくね」
「篠原です。こちらこそよろしくお願いします」
「ログインのやり方とかは聞いてる?」
「はい。さっき総務の山地さんに教えていただいて」
「そっか。私はパートだから勤務時間が短いけど、わからないうちはいろいろ聞いてね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
西尾さんの温かい言葉にこっそり感動していると、二人組の女性が仲良く話しながらあずみ達のデスクに向かってきた。
一人はあずみぐらいの年頃で、ちらりとIDカードを見ると寺本と書いてある。
もう一人はおそらく西尾さんよりも少し年上くらいだろうか。IDには上杉と書かれていた。
なにやら、誰かの悪口らしき話で盛り上がっている。
「えーっ。でもそれって甘えじゃないですか?あんたより忙しい人はいくらでもいるんだぞって、私だったら言っちゃうかもしれないです。はっきり言うタイプなんで、私」
「いや私もそうなんだけどね。でもさー、その場にいたらびっくりしちゃって意外と言えないのよ。向こうは自分が正しいって態度だしさ。ほんと、とんでもないよねぇ」
二人はあずみと西尾さんの席の向かい側にそれぞれ座った。西尾さんがPCに目線を向けたまま「おはよー」と言うと『おはようございまーす!』と二人ぴったり息を合わせて元気に挨拶を返す。
そこで二人は初めてあずみに気がついたように目を留めた。
「おはようございます」
あずみがおずおずと挨拶すると、西尾さんの時よりもかなり低いトーンで「…オハヨウゴザイマス」と言って、また二人で話し始めた。
…なんだか怖い。いや、よそよそしい?
わざとあずみが疎外感を感じるように、振る舞っているような。
いや、そんなわけがない。自分はいま緊張で過敏になっているのかもしれない。
『社内恋愛はご法度、バレたら転勤』の衝撃がいまだ拭えないせいもある。
委縮したところに、聞き覚えのある低い声が聞こえた。
「…おはようございます」
創太郎だった。
ボタンダウンのポロシャツに、足周りのすっきりしたアンクルパンツ姿の彼は、真っすぐこちらに向かってきた。
(え…こっち…?)
創太郎は内心かなり動揺しているあずみには目もくれず、チームリーダーの席と思われるデスクに鞄を置いて座った。
「おはようございます!」
あずみの向かいの寺本さんが背筋をぴんと伸ばし、透き通った声で創太郎に挨拶した。さっき上杉さんと誰かの悪口を言っていた時とは声のトーンが全然違うので、びっくりする。
創太郎はのんびりミネラルウォーターを飲んだ後、鞄から白いタブレットを取り出し、USBケーブルでモニタに接続した。モニタはもう1つあって、どうやら二画面で仕事をするらしかった。
(…というか、)
よりにもよって同じチームだとは思わなかった。しかもリーダーだなんて、あずみの上司ということになる。この状況はかなり落ち着かないけれど、「ご法度」のこともあるし、とにかく仕事に支障が出ないようにしなければならない。
9時になると創太郎が顔を上げたので、あずみはドキリとした。
「ちょっと良いですか」
感情のにじまない、淡々とした声だった。チームのみんなが創太郎に注目する。
「今日から入社の篠原さんです。最初は慣れないことも多いと思うので、皆さん気を遣ってあげて欲しいです」
あずみはその場で席を立ち、頭を下げた。
「篠原です。よろしくお願いします」
「えーと。前は家電メーカーにいたんだっけ」
「あ、はい。前職では広報関連の仕事をしていました」
「だそうです。一か月くらいはOJTでの研修ということで、最初から実務に当たりながら仕事を覚えてもらいます。基本的に僕が担当して、僕が不在の時は西尾さんにフォローをお願いしようと思ってます」
「えーっ!?」
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