【書籍化】勤め先は社内恋愛がご法度ですが、再会した彼(上司)とまったり古民家ぐらしを始めます。
奇跡と奇跡の起こる家 7
あずみと部屋となる奥座敷に着くと、運んでくれたらしい段ボールが数個、シートの上に置かれていた。
書斎へ続く襖が開け放たれていて、ずらりと本の並んだ壁が見えた。
「書斎も、篠原さんのスペースとして自由に使ってね。在宅勤務の時とか。あとでWi-Fiのルーター持ってくるから。ごつくて強力なやつ」
「在宅勤務もあるんだね」
そういえば、あずみと彼は同じ会社で働く先輩と後輩になるのだった。
(…とりあえず、出来るだけ顔を合わせる機会の少ない部署だといいんだけど)
「今は通常は出勤がメインだけど、今後は在宅メインで仕事が出来るように改革していくらしいよ。早ければ9月から段階的にって言ってたかな。総務の同期に聞いた話で、まだ社内では正式に発表されてないけど」
「じゃあそんな感じで、あとは自由にしてね」と彼は締めくくり、部屋を出て行った。
一人になったあずみはふう、とため息をついた。開け放たれた窓から、緑のにおいを含んだ気持ちの良い風が吹き込んできて、涼しい。この窓に風鈴を吊るしたら、これから本格的に始まる暑い夏も快適に過ごせるに違いない。
それにしても。
短時間で色んなことがあって、すごく疲れた。
新しい自分の部屋は涼しいし広いしで、とても心地よかった。それでもあずみは窓際にしゃがみこむと、大きなため息をついた。
そのままころんと横になる。
スカートがしわになるかも、と一瞬気になったけれど、畳の良い香りがしてどうでも良くなってしまった。
今日ここに来てから知らされたことがいろいろある。
友達と同じ高齢者住宅に入居したという、おばあさんのこと。正直かなりびっくりしたけれど、微笑ましいし、羨ましい。自分も老後は気の合う人たちとそんな風に過ごせたらいいなと思う。
でもやっぱり、彼とのことが問題だ。ひとまず敬語のやり取りはやめたし、一緒の空間にいることには短時間でほとんど抵抗がなくなっているものの、どういう接し方をしたらいいのかは自分の中でしばらくの間課題になりそうだった。
(彼女とか、いそうだけど私が同じ住んで大丈夫なのかな)
自分だったら、いくら広い家とはいえ同じ屋根の下に彼氏が女の人と一緒に住むのは嫌だ。
彼に恋人がいるかどうか聞く勇気は、到底なかった。
というか、自分の気持ちばかりを考えていたけれど、彼はあずみがこの家に住むことに納得しているのだろうか?本当は嫌だったらどうしようと考えると、ひどく悲しくて心細い気持ちになった。
差しせまった現実的な問題もある。ごはんは一緒に食べるのかとか、その場合あずみが作るのか、など。共用スペースの掃除はどの程度、どのようにするべきかも確認しなければ。
緊張で凝り固まった眉間をぐいぐいもみほぐして、少し考えを整理しようと目を閉じる。窓からふわりと夏の匂いのする風が入ってきて、あずみの前髪をゆらした。
疲れているせいか何もまとまらない。それどころか、眠気が襲ってきている。
これはまずい。日が沈む前にちょっとでも荷物を片付けなくちゃ、と体を起こそうとしたけれど。
(ちょっとくらい休んでも、誰も文句は言わないよね…)
そのままこてんと倒れて目を閉じると、あずみは数分も経たないうちに眠ってしまった。
書斎へ続く襖が開け放たれていて、ずらりと本の並んだ壁が見えた。
「書斎も、篠原さんのスペースとして自由に使ってね。在宅勤務の時とか。あとでWi-Fiのルーター持ってくるから。ごつくて強力なやつ」
「在宅勤務もあるんだね」
そういえば、あずみと彼は同じ会社で働く先輩と後輩になるのだった。
(…とりあえず、出来るだけ顔を合わせる機会の少ない部署だといいんだけど)
「今は通常は出勤がメインだけど、今後は在宅メインで仕事が出来るように改革していくらしいよ。早ければ9月から段階的にって言ってたかな。総務の同期に聞いた話で、まだ社内では正式に発表されてないけど」
「じゃあそんな感じで、あとは自由にしてね」と彼は締めくくり、部屋を出て行った。
一人になったあずみはふう、とため息をついた。開け放たれた窓から、緑のにおいを含んだ気持ちの良い風が吹き込んできて、涼しい。この窓に風鈴を吊るしたら、これから本格的に始まる暑い夏も快適に過ごせるに違いない。
それにしても。
短時間で色んなことがあって、すごく疲れた。
新しい自分の部屋は涼しいし広いしで、とても心地よかった。それでもあずみは窓際にしゃがみこむと、大きなため息をついた。
そのままころんと横になる。
スカートがしわになるかも、と一瞬気になったけれど、畳の良い香りがしてどうでも良くなってしまった。
今日ここに来てから知らされたことがいろいろある。
友達と同じ高齢者住宅に入居したという、おばあさんのこと。正直かなりびっくりしたけれど、微笑ましいし、羨ましい。自分も老後は気の合う人たちとそんな風に過ごせたらいいなと思う。
でもやっぱり、彼とのことが問題だ。ひとまず敬語のやり取りはやめたし、一緒の空間にいることには短時間でほとんど抵抗がなくなっているものの、どういう接し方をしたらいいのかは自分の中でしばらくの間課題になりそうだった。
(彼女とか、いそうだけど私が同じ住んで大丈夫なのかな)
自分だったら、いくら広い家とはいえ同じ屋根の下に彼氏が女の人と一緒に住むのは嫌だ。
彼に恋人がいるかどうか聞く勇気は、到底なかった。
というか、自分の気持ちばかりを考えていたけれど、彼はあずみがこの家に住むことに納得しているのだろうか?本当は嫌だったらどうしようと考えると、ひどく悲しくて心細い気持ちになった。
差しせまった現実的な問題もある。ごはんは一緒に食べるのかとか、その場合あずみが作るのか、など。共用スペースの掃除はどの程度、どのようにするべきかも確認しなければ。
緊張で凝り固まった眉間をぐいぐいもみほぐして、少し考えを整理しようと目を閉じる。窓からふわりと夏の匂いのする風が入ってきて、あずみの前髪をゆらした。
疲れているせいか何もまとまらない。それどころか、眠気が襲ってきている。
これはまずい。日が沈む前にちょっとでも荷物を片付けなくちゃ、と体を起こそうとしたけれど。
(ちょっとくらい休んでも、誰も文句は言わないよね…)
そのままこてんと倒れて目を閉じると、あずみは数分も経たないうちに眠ってしまった。
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