故郷
到着①
日の山の端に沈みかかったころ,実家に到着した。赤い屋根瓦は傷んでところどころに傷や割れ目が見え,軒下にはツタの伸びているところやクモの巣の張っているところが風になびいてこの家の生活レベルを解き明かしている。自然が豊かといえば聞こえはいいが,在来線の通る駅が車でも30分以上かかり,買い物をするにも不便なこの地からは親戚はみんな引っ越してしまったらしく,高齢化も進んだこの村はひっそりとしている。その家の向かいにある,都会には広すぎる庭で家庭菜園をしている畑に出ると,母は畑仕事をしており私に気付いて声をかけるとその声を聞いて家の中から見たことがある顔が現れた。幼なじみである啓介の,八歳になる子どもの勇人。勇人とは直接会ったことはないが,同窓会の時に啓介に写真で見せてもらった。
母は機嫌は良かったが,疲れが滲み出てやるせない表情を隠しきれなかった。ぼくを縁側に座らせお茶を出してくれたが,すぐに引っ越しの話は持ち出さない。勇人とぼくは初対面なので,勇人は怪しいものでも発見したかのように玄関から顔を出したままじっとこちら見ていた。
母は機嫌は良かったが,疲れが滲み出てやるせない表情を隠しきれなかった。ぼくを縁側に座らせお茶を出してくれたが,すぐに引っ越しの話は持ち出さない。勇人とぼくは初対面なので,勇人は怪しいものでも発見したかのように玄関から顔を出したままじっとこちら見ていた。
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