クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

ヴァンパイアVS魔法少女

「つまり悪役は悪役らしく、ダークセンチュリーとして悪さをするフリをして、草を噛み、泥の味がする思いをしろってわけね。平和のために」



「ふふふ。そうですね。その時は、私も泥をすすりますから安心して下さいね」



少しだけアネットさんが笑った。



それを見て俺は少しだけ嬉しい気持ちになった。



もしかしたらそれは、アネットさんが話した魔族としての宿命を俺も共有出来たからかもしれない。










17時50分。記念公園噴水前。近くの街灯に設置された監視カメラから送られる映像には、噴水横のベンチに黒いマントを羽織った男が腰を下ろしていた。



別のモニターには、黒いマントの男のすぐ後ろにあるジョギングコースを年配の夫婦が仲睦まじく並んで歩く姿、噴水を挟んで向こう側には、小学生くらいの女の子達か打ち合うバドミントンのシャトルも見える。



つまり、いつものと変わらないありふれた公園の日常が流れているわけだ。



「グレンさん、合図まで5分を切りました。心の準備を」



「はい………。うまく出来るやろか……」



ベンチに腰掛ける黒いマントの男とは、紛れもなくヴァンパイアのグレンさんであり、彼に持たせた無線から聞こえる声は、どことなく不安げだ。



「自信を持って下さい、グレンさん。あなたは数千を越えるヴァンパイア族で、最も優秀な逸材です。あなたはそれを2年間の試験で証明したではないですか。必ずうまくいきますよ」



最も優秀なヴァンパイア? 魔界には数千もヴァンパイアがいるのか。怖い。




「そろそろですね、魔王様。私達は、彼らを信じて待機する事にしましょう」



これから歴史的一戦を前にして、魔王と魔王補佐はプレハブ待機だ。



「オーイ、アネー! アタシはいざとなったらグレンを回収するでヨロシイカ?」



「ええ。お願いします、ヤンさん。魔法少女達は、まだ魔族相手に手加減出来るレベルではありませんからね」



そうなのか。間違ってグレンさんを絶命させてしまう事も有り得るらしい。



エセ関西弁とはいえ、さっき出会ったばっかりのヴァンパイアお父さんに倒れられてしまうのはいやだ。穏便に事が終わるのを待っている事にしよう。



「それではグレンさん、お願いします」



モニター室の壁に掛かる時計が18時ちょうどになった時、アネットさんが合図を送り、第1回魔法少女育成プログラムが開始された。



「グオオオンッ!!グオオオッーーーー!!」



グレンさんがベンチから立ち上がり、挨拶代わりに黒い火の玉を側にあったソメイヨシノの木に向かって発射した。

          

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