クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

忘れないで魔法少女

「ちゃんと、ボールを全て回収して下さいね。魔石が入っているのでかなり高価ですから」





「あの……まだ、私投げてませ……」





「そっちにもボールが落ちているのだ!」





「わたくしが拾ってきますわ」





「あの……」





みんな何やってんだ? 桃浦さんがまだ投げてないじゃん。





「次の競技は、隣のトレーニングルームで行います」





「移動、移動なのだ!」





「がんばりましょう!」





桃浦さんがそわそわする様子に誰も気付いていないようだ。





俺はまた走った。





「ちょいちょいちょい! 桃浦さんがまだ投げてないよ!」





俺がそう言うと、みんながみんなキョトンとした顔を浮かべやがった。





「桃浦さんって誰?」





「うちのクラスにそんな子いないよ?」





次の瞬間には、そう言い返されかねない不安過ぎる雰囲気だった。




だから俺は、桃浦さんの腕を掴みボールを持たせた。





そこでようやく、彼女達は桃浦さんという存在を脳で認識したようだった。





「ごめんなさい、桃浦さん。またあなたを……」





「すみません。自分の事しか考えていなかったですわ……」





「私がボール拾いにいくのだ!」





桃浦さんに詫びるように、黄名鈴香が走り出した。





「それでは、桃浦さん。どうぞ」





「はい、先生」





桃浦さんが投擲地点から後ろに下がり、助走を取る。





「いきます!………それっ!!」





そして投げた。





他の子達の測定を見慣れているせいで、桃浦さんの120メートルという記録に驚きはしなかった。





彼女達の中じゃ、普通の記録だからさ。



「午前中最後の測定は、反復横飛びです。もちろん、普通の測定ではありません。この、魔力が込められた砂の入ったバンドを手足に装置して頂きます」



用意されたバンドの重さは300グラム程。しかし、これを身に付けた彼女達は、やはり少し体が重そうだ。



「それでは、2人1組になって下さい」



「「はい!!」」



おやおや。魔法少女は5人いるぞ。みんなでなかよく出来るかな?



「青山さん。私と組んでくれますか?」



「ええ。いいわよ。張り合いのある相手の方がいいものね」



赤嶺、青山ペア完成。



「黄名さん? わたくしと一緒にやりません?」



「分かったのだ!」



緑川、黄名ペア成就。



「あ、あの……。わたしはどうすれば………」



「さあ、赤嶺さん。さっさと始めるわよ!」



「よーし! 目指すは100回なのだ!」



出た出た。また始まったよ。さっきやったばかりじゃん。



「それでは、始めますよ。あら? おかしいですね。5人ですから、1人余るはずなのですが」



先生、あんたもかよ。




「それじゃあ、桃浦さん。俺が計測してあげるよ」



「ありがとう、新井くん」



他の4人の無意識な罪によって、心をズタズタにされたかと思いきや桃浦さんは、もう慣れた事だからと、わりと平気な様子で反復横飛びのラインについた。



赤嶺さん、黄名さんも準備が整い、先生が笛を鳴らす。



「はっ、はっ、はっ」



「そりゃ、そりゃ、なのだ!」



秒数が経つにつれ、2人の呼吸が荒くなる。そう。2人だけだ。



俺が計測する桃浦さんは、もう少しで残像に変わるのではないかというくらいのスピード。もはや、正確に数をかぞえられているのかすら、怪しい。



「ピッ! はい、そこまで。記録を新井君に記入してもらって下さい」



「赤嶺さんは、47回よ」



「黄名さんの記録は、52回でしたわ」



「はーい、了解しましたー!」

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