クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

影薄い桃浦さん。

さっと手を洗ってトイレを出た俺に、第1待ち人発見。もじもじした様子の女の子がトテトテと俺の元に歩み寄ってきた。

「あの……。さっきはありがとうございました……」





「君は……桃浦さん!」





「……はい。よくお分かりで」



俺が名前をズバリ言い当てると、桃浦さんはにっこりと笑った。



自己紹介タイムの時、教壇に立ったのに、俺以外の誰にも気付いて貰えなかった5人目の魔法少女だね。





「………今から教室に戻りますか?」



彼女は少し俺の様子を伺う感じでそう訊ねてきた。







「うん。ほんと喉乾いたからジュース買いに行きたいけどね……。勝手な事をしたら、また楓に蹴っ飛ばされそうだから止めとくよ」



「え!? 蹴っ飛ばされちゃうんですか!?」



残念ながら、桃浦さんは俺に用があったとか、愛の告白をしたいわけじゃないらしい。





1階の突き当たりにあるトイレからA組の教室まで、のんびりお話をしながら歩く事になった。





「私、昔からよくあるんです。待ち合わせしている友達となかなか会えなかったりとか、レジに行っても店員さんに気付いてもらえなかったりとか……」



「あはは……。それは災難だね」





「小さい頃、遊園地に行った時も、両親が私を置いたまま帰ってしまったり……」



「そうなんだ。しかし、どうしてそんな事になるの? 1度死んでしまって幽霊になったわけでもあるまいし」



俺がそんな冗談をかますと、桃浦さんは一瞬強ばった表情をした後に苦笑いした。



しかし、親にも認識してもらえないとは。





一応普通に可愛い子なのに……。





「だから、凄く嬉しかったんです。新井君は私の事をちゃんと見ていてくれるから……」





そう言って僅かに頬を赤らめる桃浦さん。





自己紹介の時に、俺が救いの手を差し延べた事を言っているのだろう。





なんだかかわいそうに思えてきた。





「3年間、よろしくお願いしますね!」





桃浦さんは、そう言ってとびっきりの笑顔を俺に見せる。





彼女は魔法少女だ。





つまり、究極を言えば、魔王である俺の敵。





桃浦さんにしてみれば、俺は倒すべき標的。





憎むべき存在であるはずなんだ。


しかし、魔王である俺は今、姿を隠し、魔法少女育成学園でヘラヘラとしている。





これも全て、俺の世話役のアネットさんの指示なんだ。





正体を隠し、人間のフリをして学園に潜入し、魔法少女と接触する。





何故そうするのかというと……。





「ん?」





「あら?  おにぎり?」





桃浦さんとラブラブしながら廊下を歩き、A組の教室に差し掛かった時。





教室から、ラップに包まれたおにぎりがコロコロ。





そして、俺の足元で止まった。





「誰だよ、こんな所におにぎりを転がした奴は」

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