クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

不憫な子? 桃浦さん。

「桃浦透美(ももうらのぞみ)です。………ふつつか……」





「桃浦さん。ありがとうございました。席に戻って下さい」





「えっ……あの……まだ自己紹介が終わってないのですが……」





「次は、出席番号6番の……」





あら……。桃浦さん、ジルハ先生によって勝手に自己紹介を強制終了させられた。





「……しょぼーん……」





明らかに肩を落としながら席に戻る桃浦さん。





しかし、他の魔法少女は、桃浦さんを慰めるそぶりを全く見せない。





まさか、視界に入っているか微妙なラインなのか……。





影が薄いじゃ済まない気がする。



俺はそんな可哀想な桃浦さんがこっちに気付くまで見つめて、よろしくねと微笑むと、桃浦さんは少しだけ表情を柔らかくしながらコクりと頷いた。



「私達は、橘楓(たちばなかえで)双子の姉ですわ」





「わ、私は……妹の橘いろはです……」





「見ての通り、私は由緒正しき橘家の忍びをたしなむ者。主に隠密行動を得意としていますわ」





「まだまだ今の私は未熟者ですが、いつか魔法少女の皆さんのお役に立てるように……」





彼女達は、代々橘流忍術と呼ばれるもの受け継ぐくのいち。





まるで、正義の味方の懐に忍ばせるジョーカーの如く、魔法少女達に挨拶をしているが……。





皆さんお分かりの通り、楓とイロハは魔王軍の一員だ。





つまり、悪い立場の奴ら。





魔王である俺の直属の手下。





本来なら、物語の中盤でその存在が明らかになる中ボスキャラ的な2人。





それが、魔法少女育成クラスに魔王軍関係者によるコネで入り、楽しい学園ライフ送るというわけ。





表向きはね。




「お2人ともありがとうございました。それでは、最後に新井君、お願いします」





「はい」



途中、白衣を着たボサボサ頭のオタクっぽい女の子やポニーテールのメイド服の子。



普通に見えるきゃんきゃんした元気な女の子なども自己紹介が終わった。



そして、どこをどういった方程式か分からないが、俺が自己紹介タイムの最後を締めるらしい。





特別1発ギャグ的な何かを用意しているわけでもない。





適当に終わらせよう。





「はじめまして。新井魔人(まと)です」





壇上から見た景色。それはなかなかによろしいものだった。





左手1列には、美形揃いの魔法少女達。





お姉さん系から、やんちゃな妹系タイプまでより取り見取り。





そんな5人の女の子達が、椅子に座り、壇上に立つ俺の顔を見上げている。







ふと楓の方を見てみると、早く終わらせろよ童貞野郎とばかりに中指を立てていた。





まきびしで自滅してしまえ処女くのいちめ。





と、心の中で楓に言い返しながら、俺は自分の名前とよろしくお願いしますだけを言って、壇上からさっさと降りてやった。

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