クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

魔人、魔王になる

「私は、黒田楓(くろだかえで)。こっちの世界では橘と名乗っていますわ。っきも説明した通り、魔王軍の忍びですわよ。これから何かと私に頼る事になるわ。感謝しなさいですの」

彼女はなんだかんだで、ちゃんと俺の方に向きな押してペコリと頭を下げた。

おかっぱのような短いヘアースタイルで、ツヤツヤした黒い髪とパッチりとした大きな目が特徴的だ。

体は小柄だが、階段を昇る仕草1つだけでも察する事が出来るくらい軽い身のこなしをしている。

さすがはくのいちさんだ。

「よろしく、楓さん」

俺がそう呼ぶと彼女は下唇をびーっとやりながら首を振る。

「さん付けなんて、気持ち悪いですわ。私達、同級生ですのよ」

「そうなんだ。よろしくね、楓。そしてこの人は、妹さん?  いろはちゃんって呼ばれてるみたいだけど」

「はい。私は、楓お姉様の双子の妹になります、イロハと申します。お姉様程の腕はありませんが、精一杯がんばります」

「うん。よろしく」

イロハちゃん。控えめな感じで素直そうな子だ。双子のわりにはそれほどそっくりというわけではなく、イロハは優しそうな瞳をして礼儀正しそうだ。

俺が目を合わせると、にっこりと微笑み返してくれる。

しかし、何回生まれ変わっても、イロハちゃんが姉になる事はないのだろう。

何となくそんな気がする。



「ごちそうさまでしたー!」

みんなして上着がはち切れるくらいお腹いっぱい中華料理を堪能した。

店長のヤンさんと料理人さん達にごちそうさまして店を出た。

「ハイハーイ!  てめーら、いつでも来やがるよろしいネー!」

「また、お待ちしておりますにゃ」

「うわあっ!?  パン子ちゃんが喋った!」

ヤンさんの横でずっしりとした体を可愛らしくペコリと頭を下げたパンダに対して俺はまたびっくりした。

「何を馬鹿な事を抜かしていますの。今の今までずっと喋っていたではないですの」

姉の楓がぽっこりとしたお腹をさすりながらそう指摘する。

しかし、パンダが喋ってるんだよ? 店の関係者どころか、お客さん達も普通に接しているし。

どうかしてるな、この街は。

ヤンさんとパン子ちゃんに見送られながら、中華料理屋を後にした俺達4人。

段々とアダルトな雰囲気を醸し出し始めた繁華街を後にし、テコテコ歩く事およそ20分。

先導していたアネットさんが立ち止まり、少し顔を上げた。

「魔王様。この学校が魔王様が通われる事になる、私立樺羅杜(からず)学園でございます」

からず学園? 俺が通う?

「綺麗な校舎ですね。お姉様と私もこの学園に通うのですね」

「はい。そうですね。それはもちろん、魔法少女チーム、カラーズの為に建設された学園ですから。いわば、魔法少女養成学校です」

うわー。だから樺羅杜(からず)学園かー。

センスねー。



つい最近完成したばかりの樺羅杜学園。確かにきれいな校舎で、街中にあるわりにはすごく広そうだけど。

俺は栃木の県立高校に1週間前入学したばかりなんだけど。

自動的に転校という事になるらしい。

もう2か月くらい早く言えよ。うちの両親もめちゃくちゃ心配してるだろうし。

ムチムチ巨乳お姉さんにそそのかされた俺が悪いけどさ。

「今日はもう遅いですから、寮の方に案内致します。学園のすぐ横にありますからね」

学園の本当にすぐ横。正門から100メートル程歩いた所に、5階建ての、これも綺麗な建物。

アネットさんのお尻を追い掛けていたらすぐに着いてしまった。

「樺羅杜学園に通う特別生徒は皆、ここの寮に入ります。魔王である魔人様も、この寮の部屋を使って頂きます」

寮か。まあ、栃木から通うわけにはいかないしね。

「私とイロハもこの寮に住みますわ。私の部屋の周りをうろちょろとしていた時は、すぐ警察に通報するから、覚悟しなさいですわ」

一体どういう目で楓は俺を見ていたのだろうか。まるで巨乳眼鏡美人のおケツをずっと見ていたのような汚らわしい視線を向けている。

強気くのいちの冷たい視線。これ以上のご褒美があるのだろうか。

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