クラスメイトは魔法少女。俺、黒幕。

わーたん

誘拐されて始まる魔王生活。2

「私が言うのも何ですが、どうぞ椅子に掛けて下さい」

女性はそう優しく俺を促し、向かいのパイプ椅子に俺を座らせた。

俺はまだ状況を把握出来ないままながらも、何より椅子に座ってから、女性の何処を見てよいのか分からない。

ただドキドキしているだけだ。

あ、あかん。ついつい胸元を見てしまった。

そんな状態だから、女性が次に発する言葉が、俺には全く理解出来なかった。

「お久しぶりですね、魔王様。私の事を覚えていらっしゃるでしょうか」

女性はまるで、自分の子供を見るような視線を俺に向けていた。

魔王様だと?

俺に言ったのか?


お、お久しぶり……?  何処かで会いましたっけ」

俺にはそう答えるしかなかった。

全く覚えがない。このくらい綺麗な女性なら、1度会えば恐らく忘れる事はないだろう。

しかし、まるでピンと来ない。全く知らない女性なんだ。

「覚えていませんか。仕方ありませんね。最後に会ったのは、12年も前。魔王様はその時、幼稚園に通っておられた頃ですから」

幼稚園の頃に会ったとか言っても、全く分からんな。この女性もその頃は中学生くらいじゃないのか?

しかし、この女性はかなりのレベルで俺の事をご存知らしい。

小学生の頃、ムカデに刺されて病院に行ったとか。

窓ガラスにわーい! しながら、ヘッドスライディングをして、後頭部を5針縫ったとか。

去年、中坊だった時、とある理由で初めて喧嘩して鼻を折ったとか。

誰に聞いたのか、女性はそんな話を突然持ち出し、何故だか声を潤ませながら、俺の体を気遣うように俺の体に触れてきやがった。

「魔王様が怪我をされたと聞いて、その度に私は心配して夜も眠れませんでした。魔界の規則で、会いに行く事も出来ず……。里親のお母様からの電話が頼りで……」

そう。

女性はおかしな単語を並べている。

何かよくない。

確実によくない。

ある日学校に行くと突然、見知らぬ女性に呼び出され2人っきり。

向かい合って座るやいなや、ストーカーよろしく、俺の事を何でも知ってやがる。

そして俺を、魔王様と呼ぶ。

みんなならどうするよ。

確かに女性はとてつもく綺麗だ。スタイルも抜群。言葉遣いも丁寧で物腰の柔らかい。きっと性格もいいだろう。

しかしだ。

それを差し引いたとしても。

さっきからなんですか。魔王とか、魔界とか言って。あなた、一体誰なんですか?

決してそんな事を自分から言ってはならない雰囲気なんだ。

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