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親の職業が○○な娘さん達

わーたん

なにげない日常で通り魔に襲われる。

「ぐああっ!!」


目の前の獲物しか見ていなかった包丁男は完全に意表を突かれた。


横っ腹に突っ込んできた自転車の衝撃に、吹き飛ばされるようにして倒れた。思わず離した包丁がアスファルトに擦れる音を立てながら遠くまで転がる。



自転車の女の子は体勢を立て直し、倒れた包丁男の体に、自転車で思いっきり乗り上げて見せた。



「今だ! いけー!」



「お前らも来い!」



周りにいた通行人達が、武器を失った包丁男に襲いかかる。




その5メートル横で。




ツナギは腹部からおびただしい量の血を流していた。




「いやあぁぁぁっっ!! だれかっ、だれかあーーっ!!」



アスファルトの上で横向きになるツナギの耳に、隣にいた女の子の声が響いている。



決死迫った悲痛な叫び。ところどころで霞むようにしながらも、その声色には、絶望や悲壮のような感情が入り交じっている。



逆に言えばそんな声量を発することが出来るくらいに正常で、健康的である。自分のような状態にはならなかったと予測出来、ツナギは少しばかり微笑むような表情になった。



なんとか女の子を守ることが出来た。




それだけでここまで生きてきた意味があったんじゃないかと、そんな風に感じたからだ。




痛いとか、焼けるように熱いとか。



映画や漫画なんかのワンシーンを見るに、そんな痛みに歳悩まれるのだろうと、幼い頃から想像していたのだが、実際はその逆か。



自分の体が自分のものではなくなるようなそんな感覚。包丁を突き刺されたその場所を中心として、少しずつながら着実に全身から力が抜けていくそんな感覚だった。



左の肩。同じく左の側頭部にアスファルトの硬い感触がある。



地面に限りなく近く、横向きになった視界には沢山の人間の世話しなく動く足が見える。



そのいくつもの足の間から、黒い上着の男も、地面の上で倒されているのがツナギにも見えた。



やたらに体の大きな3人組が包丁男を押さえ込むように飛び乗っていた。



「…………どけ!! てめえら……全員コロす!!コロしてやる!」



そう言いながら尚も暴れようする包丁男を見て、四方八方から次々と通行人や近くの店舗の従業員などが続々加勢。




「早く手足縛れ!! 口もテープで閉じろ!」



「暴れさせるな!!」




「誰か強めに蹴り入れとけ! ……よし、そうだ!」



5人、6人。7人、8人と。



騒ぎを聞きつけ現れた通行人連中によるある意味の報復行為が展開されていた。まるでこんな風に通り魔染みた行為に及ぶ人間をずっと待っていたかのように。




そんな狂気に満ちたような、ヘイトをたっぷりと溜め込んだ男達が包丁男を取り囲み、弄び始めたのだった。













          

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