親の職業が○○な娘さん達
なにげない日常で通り魔に襲われる。
始まりは実に穏やかに晴れた日のことだった。
その日は朝から心地よい日差しが差し込み、気温は22度のポカポカと暖かい。時折日光山から吹く風があるものの、実に過ごしやすい陽気である。
宇都宮駅前の大通りを1人の少年が歩いていた。中学の卒業生に配られた3000円分のクオカード。
それを手に握りしめて、少年ツナギは高校の入学式を翌日に控えたこの日を迎えていた。
今日はそのクオカードを使用、高校入学に備えて新しい文房具類を求めて駅ビルに入っている書店を目指してやってきたのだ。
ギギッ!!
少し錆び付いたような、自転車のブレーキ音がツナギの耳に届いた。
音のする方に目を移すと、通りの反対側で、自転車に股がった男と白髪の老婆が黒色の肩提げバッグを引っ張り合っていた。
「はなせっ!!」
自転車の男が片足を地面に着いて強くバッグを引っ張り上げた。
すると金具が1つ2つ弾けて辺りに落ちる。バッグの革紐は長く解れ、引っ張っていた力の行き場を無くした老婆の体がアスファルトの上でひっくり返った。
足首まである紺色のスカートが捲れ、ベージュ色のタイツの奥底に、大人用のオムツが見える最中、バッグは自転車に乗った男に奪い取られた。
男はバッグの紐を腕に絡ませるようにしたまま、自転車のハンドルを握り、2回3回と地面を蹴りながら自転車で走り出した。
駅とは反対方向に向かって。
「誰かぁ……。誰かぁ……」
今にも電池が切れそうな老婆の悲痛な叫び。
片側1車線の道路。青信号により行き交う車にツナギの視界が数台分遮られた後。
少し遠くからそのひったくりの瞬間を見ていたのか、ジャージ姿の若い男が2人駆け寄り、老婆の側にしゃがみ込んだ。
「大丈夫ですか!? ケガはありませんか!?」
短髪の黒い爽やかなヘアスタイル。緑色のジャージに着用したその若者は老婆の体を労るように手で支える。
「バッグ……中に大切なお金が………」
老婆は男が居なくなった方を見ながらぼろぼろと大粒の涙を流した。
「大丈夫です! 僕達に任せて下さい!!」
緑色のジャージを来た若者は力強くそう老婆に告げた。握った拳で叩いた胸の部分には、桜色のワッペン。さらにその側には地面を力強く踏み込むランニングシューズのデザインが刺繍されていた。
彼らは駅からすぐの宇都宮経済大学に通う学生。しかも、箱根駅伝出場を目指す長距離走チームの面々であった。
初めに駆けつけた男は、後続の後輩達に指示を出す。
「3年4人は通りの右側から、2年の3人は橋本一緒に左側の道路から川沿いを進め! 3ブロック先で挟み撃ちに出来る。絶対に逃がすなよ!」
「「はい!!」」
普段から規律のあるトレーニングに励んでいるのがよく分かる。
指示を受けたランナーは、チーム毎に目の前宇都宮中央通りの右側、左側に分かれ物凄いスピードで自転車が行った先を走り抜けていく。
「お婆さん、大丈夫ですからね! 必ずバッグは取り戻しますから!」
リーダーの男は、そう老婆を励ましながら近くの通行人の携帯電話を借りて110番通報をした。
それを見てツナギは思った。
実に運のないひったくり犯だなと。
そして、宇都宮という街はまだまだ平和だなと。
そう思いながらその場を離れ、駅までの道を急いだ。
          
その日は朝から心地よい日差しが差し込み、気温は22度のポカポカと暖かい。時折日光山から吹く風があるものの、実に過ごしやすい陽気である。
宇都宮駅前の大通りを1人の少年が歩いていた。中学の卒業生に配られた3000円分のクオカード。
それを手に握りしめて、少年ツナギは高校の入学式を翌日に控えたこの日を迎えていた。
今日はそのクオカードを使用、高校入学に備えて新しい文房具類を求めて駅ビルに入っている書店を目指してやってきたのだ。
ギギッ!!
少し錆び付いたような、自転車のブレーキ音がツナギの耳に届いた。
音のする方に目を移すと、通りの反対側で、自転車に股がった男と白髪の老婆が黒色の肩提げバッグを引っ張り合っていた。
「はなせっ!!」
自転車の男が片足を地面に着いて強くバッグを引っ張り上げた。
すると金具が1つ2つ弾けて辺りに落ちる。バッグの革紐は長く解れ、引っ張っていた力の行き場を無くした老婆の体がアスファルトの上でひっくり返った。
足首まである紺色のスカートが捲れ、ベージュ色のタイツの奥底に、大人用のオムツが見える最中、バッグは自転車に乗った男に奪い取られた。
男はバッグの紐を腕に絡ませるようにしたまま、自転車のハンドルを握り、2回3回と地面を蹴りながら自転車で走り出した。
駅とは反対方向に向かって。
「誰かぁ……。誰かぁ……」
今にも電池が切れそうな老婆の悲痛な叫び。
片側1車線の道路。青信号により行き交う車にツナギの視界が数台分遮られた後。
少し遠くからそのひったくりの瞬間を見ていたのか、ジャージ姿の若い男が2人駆け寄り、老婆の側にしゃがみ込んだ。
「大丈夫ですか!? ケガはありませんか!?」
短髪の黒い爽やかなヘアスタイル。緑色のジャージに着用したその若者は老婆の体を労るように手で支える。
「バッグ……中に大切なお金が………」
老婆は男が居なくなった方を見ながらぼろぼろと大粒の涙を流した。
「大丈夫です! 僕達に任せて下さい!!」
緑色のジャージを来た若者は力強くそう老婆に告げた。握った拳で叩いた胸の部分には、桜色のワッペン。さらにその側には地面を力強く踏み込むランニングシューズのデザインが刺繍されていた。
彼らは駅からすぐの宇都宮経済大学に通う学生。しかも、箱根駅伝出場を目指す長距離走チームの面々であった。
初めに駆けつけた男は、後続の後輩達に指示を出す。
「3年4人は通りの右側から、2年の3人は橋本一緒に左側の道路から川沿いを進め! 3ブロック先で挟み撃ちに出来る。絶対に逃がすなよ!」
「「はい!!」」
普段から規律のあるトレーニングに励んでいるのがよく分かる。
指示を受けたランナーは、チーム毎に目の前宇都宮中央通りの右側、左側に分かれ物凄いスピードで自転車が行った先を走り抜けていく。
「お婆さん、大丈夫ですからね! 必ずバッグは取り戻しますから!」
リーダーの男は、そう老婆を励ましながら近くの通行人の携帯電話を借りて110番通報をした。
それを見てツナギは思った。
実に運のないひったくり犯だなと。
そして、宇都宮という街はまだまだ平和だなと。
そう思いながらその場を離れ、駅までの道を急いだ。
          
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