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実況!4割打者の新井さん

わーたん

繋がれビクトリーズ打線3

よっこはま! よっこはま!

翌日。チームは昼前に宇都宮駅に集合。仙台方面からやってきた新幹線に乗車して、東京方面を目指す。


そして午後2時すぎ、横浜さんのスタジアムに到着した北関東ビクトリーズの面々はロッカールームで各々の準備を済ませると、すぐにグラウンドへと出た。

ホームの横浜さん達の姿が全く見えないくらいの時間なのだが、俺達は絶賛大連敗中。なんとかしなきゃいけない雰囲気を醸し出しながら、全員で並んでランニングを始める。

3塁ベンチ前からレフトの方に行って、フェンス際をみんなでぐるーっと。

ライトポールまで行ったらそこから折り返して、またベンチ前まで。

それを5往復か6往復こなす。7月半ばの午後3時のカンカン照りの中。

走り終わると、サングラス姿のみんなは汗びっしょりになり、少し水分を補給しあ後に、敷いたマットの上で入念な体操とストレッチ。

中華街に行って、こってりの中華料理を腹いっぱい食いてーなどと考えているだけなのは俺だけかと思っていたのだが。

「アライサン、アライサン! あのカンバン、ニクマン?」

隣のマットでストレッチをしていたもっちゃり台湾人左腕のロンパオが、フェンス広告の1つを指差した。

「あれはシューマイのお店だよ」

「シューマイクイタイ!」

「今日勝ったらな」


「オッシャ! カツ!…………トンカツモクイタイ!」



「好きにせい」







「おお、これはいい当たり!! 右中間を深々と破っていきます、長打コース。……打った筒薫は1塁を蹴って2塁へ向かいます。ライトの桃白が打球に追い付き内野にボールを返しますが………悠々スタンディングツーベース!!

2点を追う横浜、8回ウラ先頭の4番筒薫が、代わったビクトリーズのセットアッパーのリ・ロンパオからツーベースで放って出塁です!!


おい、ロンパオちゃん。なにいきなり打たれてんの。

大丈夫? 勝って、シューマイとトンカツを食い行くんだろ?




「これもいい当たりだ! 5番崎宮の当たりはライト前!! ノーアウトランナー1、3塁! 横浜、同点、逆転のチャンスです!」


ロンパオなにしてんの。甘いよ、コースが。それじゃ打たれるって!鶴さんのミット通りに投げなきゃ。

珍しくイタリアマンが得点圏でヒットを打って先制して2点リードでここまで来たのに。

こんなリードしてる展開はなかなかないんだから、セットアッパーらしくシャキッとしなさい!

カアンッ!!

「これは左中間へ高く上がりました!!」


もう俺は追いませんよ。がっかりですよ。


「左中間の真ん中、フェンス際深いところ……センターの柴崎が打球を掴みました! 3塁ランナータッチアップ!! 犠牲フライには十分です! 筒薫ホームイン!! これで4ー3! 横浜ベイエトワールズ、1点差に詰め寄りました!!」




「これも、いい当たり! ですが………セカンド守谷!1、2塁間深い打球回り込んで1塁へ送球!! きわどいタイミングですがアウトになりました! これはいいプレーになりました!ピッチャーを助けます!

この回から登板のロンパオ、なんとか最小失点で凌ぎました! 4ー3、ビクトリーズ1点リードで9回表の攻撃に入ります」


はぁー、あぶねえ。守谷ちゃんの上手い守備と賢いポジショニングに救われてなんとか同点は免れた。

ロンパオちゃんもちょっとここにきて調子が悪いな。

ストライク先行出来ずにボール、ボールとカウントを悪くして、甘く入ったボールを痛打される。

5月半ば頃までは存在感すら感じたピッチングで防御率1点代をキープしていたが、交流戦が明けたくらいから急に打たれ出した。

初めの頃はやはり初物効果で多少荒いピッチングでも、威力のあるストレートと落差のあるカーブの組み合わせでなんとかなったが、対戦が一回りすると相手も対策してくる。

それまで唯一まともな中継ぎピッチャーはロンパオくらいだったのだから。

そこさえ攻略出来れば、うち相手に終盤までリードを許していても、全く怖く感じない。

そんな余裕を相手に与え続けていたのも、9連敗した大きな要因の1つだろう。

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