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実況!4割打者の新井さん

わーたん

試合後に、トンカツ食べる新井さん2

「やっぱね、もっと打てなきゃダメだよ。全然打線が機能してねえもんな」

真ん中に座る3人組のリーダー的存在の男がおしぼりで手を拭きながら発言した。

しかし、それには俺も同感である。

「打てる外国人連れてきて欲しいっすよねー。シェパード、大事な時に打てないんすもん。左ピッチャーに弱いし」


3人並びの右側、後輩口調の若者も不満げきそんなことを口にしながらスマホをいじりだす。

「打率.225っすよ。そのわりにホームランも6本だけですし。オープン戦で見た時はもっと活躍すると思ったんですけどねー」


選手の成績でも確認しているのか、スマホをポチポチやりながら、そんなことを呟く。

しかし、全くもってその通りよ。1億円以上の助っ人だから、いつか猛爆するんじゃないかと期待するのも分かるけど。


「いや、シェパードもそうだけど、いつまでも打順を変えないのも問題だよ。いつまで柴崎を1番にしておくのか俺には分からないよ」


俺から見て右端の若者も、グラスの水を飲み干しながら、そんな不満を漏らす。


それを聞いて俺は………。

そーだ、そーだ!としか思い付かなかった。モデルのようにきれいな女の子と付き合ったり、ケンカして悩んで野球がおそろかになったりしてるわけですから、まあダメですよ。


野球の女神様に嫌われますよ。



「なんで柴崎を1番に使うんだろうなー。打率でいえば、いっそのこと新井を1番にした方がよくね?選球眼結構いいみたいだし、そりゃ柴崎よりも足は速くないけど、やっぱ出塁するバッターじゃないと勢いつかねえもん」

「確かにそうっすよねー。新井がいなかったら、もう2回ノーヒットノーランされてますし。初回からなかなかチャンスになんないんすよ」

「ほんとだよな! いくらなんでも打てなさ過ぎ。まあ、1番が出たところであのクリンアップじゃなかなか点にはならないと思うけど。とりあえず負けまくってるんだから、調子がいいやつから上位に置いた方がいいよ」



そうそうなのよ。


俺が打ってなかったら、大阪ジャガースの前村と、埼玉ブルーライトレオンズの桜池と。

2回ノーノーされているのよ、北関東ビクトリーズさんとかいうチームは。

俺に特別ボーナスを出して欲しいくらいだよ。情けない。

しかし、俺もプロに入る前は、なんで打てない選手をいつまでも試合で使い続けるだろうとよく不満に思っていた。

いくらレギュラーの名前のある選手とはいえ、打てないならば、若手の選手を使えばいいのにと、以前はそんな考えだったが、プロに入ってそれがよく理解出来た。

よく打つのよ、プロのバッターって。


練習ではね。





目の前のカウンターに座ったビクトリーズファンとおぼしき若者3人は、不満げに柴ちゃんとシェパードの話をしたけど。

この2人は特にフリーバッティングでは物凄い打棒を披露する。

その日に試合があれば、当然試合前にバッティングピッチャーおじさんに投げてもらって、フリーバッティングを1人ずつを行うわけだが、その時の柴ちゃんはとにかくバットの芯でビタビタボールを捉える。

さすがは地方の高校・大学で俊足タイプながらずっと4番を張っていただけのことはあるって感じ。



今はチームの1番打者だし、取り巻くコーチ陣もバッティングゲージの側で腕組みをしながら、時折アドバイスをしながら、真剣な表情で柴ちゃんのバッティングを見つめているのが印象的だ。

俺もよく間食のおにぎりを食べながら、ベンチ奥から覗いたりしているが、本当に俺と同じ入団テスト生、ドラフト9位の無名選手だったのかと疑問になるくらいの迫力のあるスイングをする。


バットを振れば鋭い打球が右へ左へ。文句なしにヒットになる打球が飛んだかと思えば、角度さえつけば、引っ張ってライトスタンドの中段へ。


なんて打球もしばしば。

打ち損じはほとんどなく、中軸も打てるんじゃね? って思うほどのパワーが彼にはあることがよく分かる。

毎日近くで見ていると特に。


          

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