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実況!4割打者の新井さん

わーたん

ファンと交流する新井さん2

みんなが遠ざかって見えなくなった頃合いを見計らって、とんずらかまそうとする俺の目の前に立ちはだかったのは1番最初にサインいてあげた子である。


(どこに行くんですか? 自分からファンを煽っておいて知らん顔は許されませんよ?)


そんな優しい笑顔を俺に向けていた。


「新井さーん! 商店街で揚げ物いっぱい買ってきましたー!」

「はい、ありがとう。座って、座って。日陰の涼しいところに座ってね」

ファンの皆様が買い出しに行っている間、俺は仕方なしにとりあえずたい焼きを買いに行き、ビクトリーズスタジアムにすぐ戻る。

そして、スタジアム入り口前の芝生と桜の木が立つエリアて、倉庫から勝手に持ってきたブルーシートを広げる。

最初にサインしてあげた例の子をアシスタントにして、みんなの分の取り皿や割りばし、紙コップなんかをスタジアムエリアのショッピングモール内にある100円ショップで調達してもらいそれを準備。

そうこうしている間に、美味しそうな匂いのする袋を持ったファンが次々戻ってきた。

俺は1人1人を丁寧に出迎える。

「はい、お帰りなさい、お帰りなさい。好きなところに座ってねー」


「新井さーん。いなり寿司買ってきましたー!」

また別の子はタッパーに詰められた大きないなり寿司を袋にぎっしり。嬉しそうに俺に差し出す。

「おー、商店街のやつ!めっちゃ美味そうじゃん! ありがとう!」

「飲み物も買ってきましたー!」

「おう、サンキュー! はい、みんな靴脱いで座って、座って!足のオイニーが気になる方は消臭スプレーもありますわよ」



ちゃっかりちゃんと数えていたファンが全員帰ってきたところで改めて再開される謎の会。


「皆さん、料理と飲み物は行き渡ったかなー?」

「「はーい!!」」

今日は立っているだけで汗ばむ陽気。ビクトリーズスタジアムすぐ側の、きれいに手入れのされたふかふかの芝生の上に敷かれたブルーシート。

俺が真ん中に座ると、取り囲むようにファンがその周りを座る。

嬉しいことに、みんなビクトリーズファンのようで、スタジアム近くを散歩したり、練習があることを知っていたファンが試しに来てみたら、俺がサインしていた現場に遭遇した様子らしい。

嬉しいことに、20人くらいの再集合したファンの7割は女性だ。

女子大生風の若い子から、ブラウスを来た着たOLさん。

なんだか束ねた真っ黒な髪の毛と白いうなじが妙に雰囲気がある妙齢のお方。

もうはじめからやかましい酒焼けしたハスキーボイスのおばちゃんなど。

眼鏡をかけたわりとまだ若そうな野球オタの青年やなんか勝手に缶ビールを飲んでるおっさんが混じっているが、端っこの方に座って無害そうだからいいや。

まあその中で俺のお眼鏡にかなう人は……いなそうだが、それでもちゃんとそれぞれ近くで買えるお惣菜屋やパンなんかを持ってきた即席な団結力は素晴らしい。

とりあえず、俺はいなり寿司と唐揚げを頬張りながら、1人1人に誰のファンなのか聞いてみた。



「そこの若いあなたは誰のファン?」

とりあえず、1番若そうな20歳くらいのJDに訊ねてみた。

すると彼女は俺の顔を真っ直ぐ見てハキハキと答える。

「柴崎さんです!」

いきなり出た。柴ちゃんファン。だいたい若い人は柴ちゃんファンなのよ。そりゃあ、開幕から試合出てるし、1番打者だし、イケメンだし、若いし。

まあ、仕方ない。それは仕方ないさ。

「それじゃあ、あなたは?」

次はおしとやかそうかOLさんに聞いてみた。

「私は桃白さんです」

桃ちゃんね。まあ、桃ちゃんもどっちかというとかっこいい部類でライトのレギュラーで、体もムキムキの身体能力お化けだからな。

社会人からプロ入りした桃ちゃんと年齢も同じくらいみたいだから、ファンになるのも分かる。

「それじゃ、そちらの彼女は?」


「連城くんです!」

連城ちゃんね。まあ、ドラ1だしね。結局イケメンだしね。ピッチャーだしね。エースナンバーだしね。

まあ、分かりますよ。


「あなたは?」


「浜出くんです。坊主頭でかわいいから」




「君は?」

「碧山さんです。クールな感じが好きです」




「そっちのあなたは?」

「小野里さんです。前のチームにいた時からのファンで……」


「そっちの彼女は?」

「ショートの赤月さんです!たまにすごいホームランを打つので大好きです」


「……あなたは?」

「柴崎さんです」


「あな……」

「連城君です」




………ぬぬぬぬぬぬ。






「お前らいい加減にしろー!!」

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