実況!4割打者の新井さん

わーたん

食事制限される新井さん4

「北関東ビクトリーズ、ピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー、李に代わりまして………岸田。ピッチャーは岸田。背番号21」


クローザー、キッシーがマウンドに上がる。




「北関東ビクトリーズ、3点リードの9回ウラのマウンドには背番号21、岸田裕之が上がりました。今シーズンはここまで1勝2敗11Sですが………防御率が3,61。

ストッパーとしては少しもの足りない数字ではあります。最近5試合の登板では、負け投手にこそなってはいませんが、 2度セーブシチュエーションで失点しています」

「悪いボールは投げていないんですけどねえ。スピードも150キロ近くまで出ていますし。今日は3点差ありますから、しっかり試合を終わらせたいところでしょう」


「3点を追う、北海道フライヤーズの打順は6番から始まります」

キッシーの投球練習が終わり、相手バッターが打席に入って、主審がプレイかける。

1球目。右打者のアウトコース低めにキッシーのストレートがズドン。

「ストライーク!!」

いいコースに決まった。

左中間に大型ビジョン。約8億円の費用で導入された世界初の黒色パッケージLED搭載の大型ビジョンに、150キロと表示された。

いい球だ。

あの球は打たれない。

アウトコースギリギリな低めのストレート………。


だったらね。





「2球目打ちました! 少し泳いだ格好、打球はレフトへ上がりました!」

キッシーのボール低めにいったフォークボール。彼得意の落ちるボールだが、ホームベース上でバットの芯で拾われた。

そんな低めのボールを軽めにミートされ、いい角度でレフトの俺がいる方向に上がってきたが、慌てることはない。

ちょうど定位置のフライだった。ラッキー、ラッキー!


俺は打球を絶対に落とさないように。若干切れゆく打球の正面にしっかり入り、最後までちゃんとボールを見て、顔の高さで右手を添えながらがっしりと捕球した。

「打球はレフト正面! 新井が掴んで1アウトです」

キャッチした打球をポイっとショートの赤ちゃんに返す。

運よく俺の正面に飛んでアウトになった打球。決して投げ勝って打ち取った打球ではない。


これがあわててバットを出し、無理やり引っ張り込みながらのらいとフライなら全然大丈夫だと思うのだが。

本来は空振りを取りたい早いカウントで投げた低めのボール球になるフォークをきっちりタイミングを計られながらミートされ、外野まで運ばれているのだから、いい球とは言えないだろう。


レフト前ヒット、あるいはレフト線への長打コースになりかけたようなレフトフライだった。

現に続く打者には、同じ低めのフォークボールをセンター前に運ばれてしまったのだ。


今度はカツーンとばっちし弾き返されてしまった。



そしてさらに………。



「これもセンターの………前に落ちました! 柴崎は打球を弾いていますが、すぐに拾い直してバックホーム!2塁ランナーは3塁ストップ!!ストップ! 回ったところでとまりました!  これで3連打! 1アウト満塁になりました!」

あわわわわ。

1本ヒットを打たれたかと思いきや、あっという間に3連打。

3つの塁上を黒とゴールドの選手が埋め尽くす。

満塁になってしまった。たまらずタイムがかかり、吉野ピッチングコーチが慌ててマウンド上のキッシーの元へ向かう。



満塁ではあるがスコアは4ー1のまま、なんとかこの3点差を守り抜けば、ススキノ大冒険に繰り出すことが出来る。

キッシー、なんとか踏ん張ってくれ!

俺はひたすらに祈るしかなかった。

「さあ、ビクトリーズの内野陣の円陣が解かれ、それぞれの守備位置に戻って試合再開です。北海道フライヤーズの打順はトップに戻ります」


「1番、レフト、東川」

満塁となり、レフトスタンドのフライヤーズファンからここぞとばかりのチャンステーマを奏でながらの大応援。


バッターは北海道フライヤーズ不動のトップバッターが左バッターボックスに入る。

足が速く、盗塁の上手い選手であり、時折見せるパンチ力のある打撃も魅力的だ。

それゆえ、守備位置をどうするかが悩ましい。

「実況!4割打者の新井さん」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「現代ドラマ」の人気作品

コメント

コメントを書く