実況!4割打者の新井さん
ヒーローインタビューをしたい新井さん9
阿久津さんくらいのベテランで風格のあるバッターになると、なんだか打ちそうな気配がする時があるから不思議なものだ。
ここまでいいとこなしの3打数ノーヒットではあるが、バッターボックスに入り、ぐっと腰を沈めながらバットを構えてピッチャーを見るその姿に、その辺のバッターにはない存在感を感じる。
ネクストのわっかにいる時に、近くのスタンドに可愛い子ちゃんがいるだけで心を揺さぶられるような軟弱者な俺にはもちろんないやつ。
プロで5年6年レギュラーを張った程度では会得出来ないだろうその存在感だ。
しかし俺だってここまでノーヒットだったが、集中を極限まで高めて、1本ヒットを放つことが出来た。
今日までの試合でビクトリーズは6連敗しているが、今日この時ばかりはそのことが頭にない、いい意味でなにも考えずに集中出来ている無心の状態が俺から、阿久津さんへと右バッターボックスを通じて伝染していった気がした。
これが俗にいう、流れというものなのだろうか。同じ右バッターの右方向へのバッティングだが、俺の小手先ライト前とはわけが違う。
打球の角度、速度が圧倒的に違った。
「阿久津の当たりは右中間へ大きな当たり! センター、ライトはむこう向き、入るか!  ………右中間のフェンスに当たった!ライトがボールを拾う。1塁ランナーの新井は………おお、もう2塁を回って3塁へ向かう!」
プロに入る前からそうだったのだが、ランナーをやっていて1番やりがいを感じるのは、1本のヒットで、上手くベースランニングを決めて、3塁ないし、長打コースならホームを鮮やかに陥れる瞬間である。
1塁ベースから本塁まではおよそ80メートルありますから、めちゃめちゃ疲れるんですけど。ノンストップで一気にホームを駆け抜けるあの感覚はたまらない。
ふとした瞬間に屈んだギャル美の柔らかそうな胸元みたいな。
打撃戦は長打が制し、投手戦は好守備が制す。そして接戦こそは好走塁が制す。
という言葉が野球界にあるが、これは何を隠そう俺の言葉だ。
これはいずれ俺が広めていこうと思っている言葉であり、俺の今までの野球人生で幾度となく体感した、言うなら自身の野球三原則といったところ。
野球の試合には、その試合展開で、投手戦やら、打撃戦やら、シーソーゲームやら、ワンサイドゲームやら、ルーズベルトゲームなどと、いろいろな表し方がある。
その中で、接戦というものは、終盤の1点を巡る攻防が何よりの醍醐味で、1つの小さなプレーが大きく明暗を分けることも度々ある。
そこで重要なのは、走塁に対する意識の差である。
「1塁ランナーの新井は…………2塁から3塁へ!! サードコーチャーの手が回る!! 3塁を蹴って、本塁突入だ!! 」
阿久津さんがカツーンと打った瞬間、俺はもうホームに返ることしか考えていなかった。
阿久津さんが打った! 結構大きな当たりがライトの方に上がった! と、思った瞬間には2塁へ向かって猛ダッシュ。
打った瞬間の打球の勢いと上がり具合では、フェンスに直接当たるか、ライトがジャンプして取れるかどうかというところ。
安全を期すならば、1塁と2塁の真ん中辺りで立ち止まり、打球の行方を見守るべき。
しかし今のうちのチーム状況を考えると、そんな悠長なことを言っている場合ではなく、大なり小なり多少のバクチはしていかなければ、連敗の流れは止められない。
もし、相手の外野手にキャッチされて、1塁に戻りきれずダブルプレーになってしまったら、それも仕方ない。
そうなってしまったら、みのりんに愛の告白でもかましてやるさ。
俺は一切スピードを緩めることなく、むしろ加速しながら2塁ベースを蹴った。
そしてそのタイミングで、一瞬だけチラリと打球の飛んだ右中間方向を見る。
フェンスいっぱいについたライトの選手がジャンプ。その50センチ上のフェンスに打球が当たったのが見えた。
よっしゃ! これで、ダブルプレーという最悪の事態にはならない。
そう考えた瞬間の目の前には、腕が抜けるんじゃないかというくらいの勢いで腕を回す3塁コーチャーおじさんの必死の形相が見えたのだ。
ここまでいいとこなしの3打数ノーヒットではあるが、バッターボックスに入り、ぐっと腰を沈めながらバットを構えてピッチャーを見るその姿に、その辺のバッターにはない存在感を感じる。
ネクストのわっかにいる時に、近くのスタンドに可愛い子ちゃんがいるだけで心を揺さぶられるような軟弱者な俺にはもちろんないやつ。
プロで5年6年レギュラーを張った程度では会得出来ないだろうその存在感だ。
しかし俺だってここまでノーヒットだったが、集中を極限まで高めて、1本ヒットを放つことが出来た。
今日までの試合でビクトリーズは6連敗しているが、今日この時ばかりはそのことが頭にない、いい意味でなにも考えずに集中出来ている無心の状態が俺から、阿久津さんへと右バッターボックスを通じて伝染していった気がした。
これが俗にいう、流れというものなのだろうか。同じ右バッターの右方向へのバッティングだが、俺の小手先ライト前とはわけが違う。
打球の角度、速度が圧倒的に違った。
「阿久津の当たりは右中間へ大きな当たり! センター、ライトはむこう向き、入るか!  ………右中間のフェンスに当たった!ライトがボールを拾う。1塁ランナーの新井は………おお、もう2塁を回って3塁へ向かう!」
プロに入る前からそうだったのだが、ランナーをやっていて1番やりがいを感じるのは、1本のヒットで、上手くベースランニングを決めて、3塁ないし、長打コースならホームを鮮やかに陥れる瞬間である。
1塁ベースから本塁まではおよそ80メートルありますから、めちゃめちゃ疲れるんですけど。ノンストップで一気にホームを駆け抜けるあの感覚はたまらない。
ふとした瞬間に屈んだギャル美の柔らかそうな胸元みたいな。
打撃戦は長打が制し、投手戦は好守備が制す。そして接戦こそは好走塁が制す。
という言葉が野球界にあるが、これは何を隠そう俺の言葉だ。
これはいずれ俺が広めていこうと思っている言葉であり、俺の今までの野球人生で幾度となく体感した、言うなら自身の野球三原則といったところ。
野球の試合には、その試合展開で、投手戦やら、打撃戦やら、シーソーゲームやら、ワンサイドゲームやら、ルーズベルトゲームなどと、いろいろな表し方がある。
その中で、接戦というものは、終盤の1点を巡る攻防が何よりの醍醐味で、1つの小さなプレーが大きく明暗を分けることも度々ある。
そこで重要なのは、走塁に対する意識の差である。
「1塁ランナーの新井は…………2塁から3塁へ!! サードコーチャーの手が回る!! 3塁を蹴って、本塁突入だ!! 」
阿久津さんがカツーンと打った瞬間、俺はもうホームに返ることしか考えていなかった。
阿久津さんが打った! 結構大きな当たりがライトの方に上がった! と、思った瞬間には2塁へ向かって猛ダッシュ。
打った瞬間の打球の勢いと上がり具合では、フェンスに直接当たるか、ライトがジャンプして取れるかどうかというところ。
安全を期すならば、1塁と2塁の真ん中辺りで立ち止まり、打球の行方を見守るべき。
しかし今のうちのチーム状況を考えると、そんな悠長なことを言っている場合ではなく、大なり小なり多少のバクチはしていかなければ、連敗の流れは止められない。
もし、相手の外野手にキャッチされて、1塁に戻りきれずダブルプレーになってしまったら、それも仕方ない。
そうなってしまったら、みのりんに愛の告白でもかましてやるさ。
俺は一切スピードを緩めることなく、むしろ加速しながら2塁ベースを蹴った。
そしてそのタイミングで、一瞬だけチラリと打球の飛んだ右中間方向を見る。
フェンスいっぱいについたライトの選手がジャンプ。その50センチ上のフェンスに打球が当たったのが見えた。
よっしゃ! これで、ダブルプレーという最悪の事態にはならない。
そう考えた瞬間の目の前には、腕が抜けるんじゃないかというくらいの勢いで腕を回す3塁コーチャーおじさんの必死の形相が見えたのだ。
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