実況!4割打者の新井さん
ヒーローインタビューをしたい新井さん4
「2番、レフト、新井」
1回ウラ、俺の第1打席。
その試合の第1打席というのは本当に大事。
第1打席の結果で、バッターとしてのその試合の出来が6割方左右されるくらいの感覚だ。その1打席目が上手くいけばだいたいいい結果で試合が終わるし、しょーもない打席にしてしまったら、その後は苦しい立ち回りを強いられることになる。
打席の結果、ヒットが出る出ないが全てではない。ヒットで出てもたまたまな感じだったり、ヒットが出なくてもピッチャーのある程度の球種が見れたり、タイミングがしっかり取れればその後の打席に繋がる。
その日起きて、朝飯を食べて、スタジアムに来てアップを開始して、軽くティーバッティングをして、その後フリーバッティングをして、おっ! 今日はいけるやん!!
と、俺は今日調子がいいんじゃないと思っていても、実際試合になって、調子よく打てるものではない。
バッティングはそんなに安易なものではない様子。
最近、それが分かり始めてきた。
「打った!新井の打球は1、2塁間を…………しぶとく破っていきました!! 1アウトランナー1塁です」
ほら、来た! 俺の打率をご覧なさい。
.687から.705になりましたよ。
これは要求する年俸を35億に上げてもいいくらいだな。
その後試合は進み、緊迫した雰囲気のまま終盤に突入した。打席には1番の柴ちゃん。1塁と2塁にランナーを置いたチャンスの場面。
俺は頑張れーと応援しながら、四股を踏むようにして股関節をストレッチしてネクストのわっかから見ていた。
「柴崎打ちました!! いい当たり! 打球はライト前へ!2塁ランナー、守谷は………3塁を止まった! 止まった!!…………柴崎、変化球を見事に打ち返しました。これで1アウト満塁になりました!!」
ネクストから見ていると、珍しく柴ちゃんがしっかり狙い球を絞って、きっちり引き付けて緩い変化球をライト前へ運んだ。
悪くないタイミングで3塁を回った足の速い守谷ちゃんを3塁コーチャーのおじさんが必死にストップをかけた。タイミングは五分五分になりそうだったがここはランナーストップ。
1点ビハインド。7回ウラ、1アウト満塁。
ヒーローになるにはいい場面が回ってきたぜ。
「2番、レフト、新井」
まさか柴ちゃんがヒットで繋ぐと思っていなかったのでちょっと緊張。
強く鼓動する胸の高なりをなんとか押さえるように何回も打席の横でジャンプをしながら気持ちを落ち着ける。
そしてまた1つ深く深呼吸をしてバッターボックスに入った。
落ち着くんだ。いつもと同じだ。
右方向に打つことを意識してミートに徹するんだ。
満塁は初球。満塁は初球。満塁は初球。
満塁は初球なんですよ。ずっとプロ野球を見てきたけど、満塁は初球。マジで。
「さあ、東京スカイスターズの内野陣は中間守備です。1点リードという状況ですが……スカイスターズ側としてはどういう守りでしょうか、大原さん」
「そうですねえ。打球によって判断が難しいですが、基本はバックホームで点をやらないこと。場合によっては2塁経由のダブルプレーも想定しる場面です。バッターが当たっていますから、なるべくヒットゾーンを広くしたくないですかねえ」
「バッターの新井は、デビューから比較的ここまでは初球から積極的に振っていくバッターに見えますが、この場面はどうか。同点、逆転の1打を放てるか」
狙うはストライク欲しさに甘く入るボールのみ。
ここで1ヒット。逆転のタイムリーを打つことが出来ればヒーローインタビューだ。
そんな考えが、逆に自分自身を冷静させた。
今日何度も見た相手ピッチャーの投球モーションの中から、白いボールが浮き上がる。
俺はそれを叩きにいく。
真ん中低めのストレート。
そのボールにバットをかぶせるようにして打ち返し、ピッチャーの足元目掛けておっつける。
会心の当たりではない。しかし、相手守備の間に打球は跳ねた。
「打球はセカンド、中間守備のセカンドの横……抜けたー!」
          
1回ウラ、俺の第1打席。
その試合の第1打席というのは本当に大事。
第1打席の結果で、バッターとしてのその試合の出来が6割方左右されるくらいの感覚だ。その1打席目が上手くいけばだいたいいい結果で試合が終わるし、しょーもない打席にしてしまったら、その後は苦しい立ち回りを強いられることになる。
打席の結果、ヒットが出る出ないが全てではない。ヒットで出てもたまたまな感じだったり、ヒットが出なくてもピッチャーのある程度の球種が見れたり、タイミングがしっかり取れればその後の打席に繋がる。
その日起きて、朝飯を食べて、スタジアムに来てアップを開始して、軽くティーバッティングをして、その後フリーバッティングをして、おっ! 今日はいけるやん!!
と、俺は今日調子がいいんじゃないと思っていても、実際試合になって、調子よく打てるものではない。
バッティングはそんなに安易なものではない様子。
最近、それが分かり始めてきた。
「打った!新井の打球は1、2塁間を…………しぶとく破っていきました!! 1アウトランナー1塁です」
ほら、来た! 俺の打率をご覧なさい。
.687から.705になりましたよ。
これは要求する年俸を35億に上げてもいいくらいだな。
その後試合は進み、緊迫した雰囲気のまま終盤に突入した。打席には1番の柴ちゃん。1塁と2塁にランナーを置いたチャンスの場面。
俺は頑張れーと応援しながら、四股を踏むようにして股関節をストレッチしてネクストのわっかから見ていた。
「柴崎打ちました!! いい当たり! 打球はライト前へ!2塁ランナー、守谷は………3塁を止まった! 止まった!!…………柴崎、変化球を見事に打ち返しました。これで1アウト満塁になりました!!」
ネクストから見ていると、珍しく柴ちゃんがしっかり狙い球を絞って、きっちり引き付けて緩い変化球をライト前へ運んだ。
悪くないタイミングで3塁を回った足の速い守谷ちゃんを3塁コーチャーのおじさんが必死にストップをかけた。タイミングは五分五分になりそうだったがここはランナーストップ。
1点ビハインド。7回ウラ、1アウト満塁。
ヒーローになるにはいい場面が回ってきたぜ。
「2番、レフト、新井」
まさか柴ちゃんがヒットで繋ぐと思っていなかったのでちょっと緊張。
強く鼓動する胸の高なりをなんとか押さえるように何回も打席の横でジャンプをしながら気持ちを落ち着ける。
そしてまた1つ深く深呼吸をしてバッターボックスに入った。
落ち着くんだ。いつもと同じだ。
右方向に打つことを意識してミートに徹するんだ。
満塁は初球。満塁は初球。満塁は初球。
満塁は初球なんですよ。ずっとプロ野球を見てきたけど、満塁は初球。マジで。
「さあ、東京スカイスターズの内野陣は中間守備です。1点リードという状況ですが……スカイスターズ側としてはどういう守りでしょうか、大原さん」
「そうですねえ。打球によって判断が難しいですが、基本はバックホームで点をやらないこと。場合によっては2塁経由のダブルプレーも想定しる場面です。バッターが当たっていますから、なるべくヒットゾーンを広くしたくないですかねえ」
「バッターの新井は、デビューから比較的ここまでは初球から積極的に振っていくバッターに見えますが、この場面はどうか。同点、逆転の1打を放てるか」
狙うはストライク欲しさに甘く入るボールのみ。
ここで1ヒット。逆転のタイムリーを打つことが出来ればヒーローインタビューだ。
そんな考えが、逆に自分自身を冷静させた。
今日何度も見た相手ピッチャーの投球モーションの中から、白いボールが浮き上がる。
俺はそれを叩きにいく。
真ん中低めのストレート。
そのボールにバットをかぶせるようにして打ち返し、ピッチャーの足元目掛けておっつける。
会心の当たりではない。しかし、相手守備の間に打球は跳ねた。
「打球はセカンド、中間守備のセカンドの横……抜けたー!」
          
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