実況!4割打者の新井さん
中華なんてどうでもよくなった新井さん1
「新井さん。いいバックホームでした。惜しかったっすよ」
「ああ、ありがとう。浜出君」
ようやくベンチに戻ると、ほとんどの選手は自分の道具や荷物を持ってベンチ裏に引き上げていた。
唯一残っていた今日も出番のなかった同じルーキーの浜出君がわざわざちょっとの間待ってくれていたのだろうか、俺を慰めるように苦笑う。
まあ仕方ない。自分がベストを尽くしてもチームが負けてしまうことだってある。その逆もあるわけで。
グラウンドからベンチに戻ると少し冷静になった気がした。
俺より悔しい思いをしているのは打たれたピッチャーだ。
また次頑張って今日で3連敗した分を取り返せばいい。
俺はそう自分に言い聞かせながらベンチ裏に引き上げる。
また後ろで荷物をまとめて、リュックにタオルやら着替えやらを全部詰め込んで、ベンチ裏から取材エリアを通り、ロッカーの方へ行こうすると……。
「新井選手! 新井選手!」
なにかを呼ぶ声がする。
まあ、負けチームにも多少取材あるからな。
「すいませーん。新井選手!お話を聞かせて頂いてもよろしいですかー?」
ほら、初々しくて可愛いアナウンサーが呼んでるぞ。早く行ってやれよ。
「新井せんしゅー!新井せんしゅー! わたしですー! おとといのおでん屋でのわたしですー!」
え? 一緒におでん食べたあの子?
うそーん。女子アナだったのー?
「すいません、こちらまでよろしくお願いします」
白いパーテーションで仕切られただけの取材エリアの空間に案内され、俺はリュックを背負ったままその場所に立つ。
柴ちゃんの彼女の連れだった、一緒におでん屋さんで1杯ヤった仲であるその子がどっかのアナウンサーで、俺に取材をするなんて、なんという偶然だろうか。
いや、必然なのか。
「試合直後に申し訳ございません。5分ほどお時間を頂きますね」
「ええ、いくらでも」
そう答えた俺に男性カメラマンが抱えたテレビカメラを俺に向ける。
そして、そのアシスタントか、はたまたディレクターは分からないが、そばにいたもう1人の男性が取材エリアに備え付けられた照明を俺に向けて焚く。
そしてその彼が合図を出すと、カッと光を浴びて眩しくなった俺にアナウンサーがマイクを向ける。
「はじめまして、日本TVニュースワンのスポーツコーナーを担当しています、アナウンサーの水嵩綾乃(みずかさあやの)と申します。新井選手、今回は私の初めての取材となります。試合直後でお疲れかとは思いますが、何卒よろしくお願いします」
彼女は向けられたカメラに対して斜に構えるようにして、スラスラと流暢にそう話し、俺に向かって深々と頭を下げた。
「えー、新井選手は交流戦明けから、1軍に昇格されて、ここまで新人離れした活躍をしておられますが、ご自身としてはこのご活躍をどのように感じておられますか?」
活躍? 活躍ねえ。
彼女………水嵩さんも初めての取材なら、俺もこんな風に取材をされるなんて初めてである。しかも、いきなりカメラを向けられて。
ジャパンTVのニュースワンといえば、毎日日付が変わるくらいの時間に放送されているスポーツニュース番組だ。
あんまり見たことはないが、この取材というかインタビューを今日の放送でオンエアされるのだろうか。
そう考えると途端に緊張してしまう。ドーラン塗ってないし。
「まだ正直、自分で自分のプレーを振り返る余裕はなくて、とにかく毎日集中してプレーすることを心掛けていますね」
「なるほど。今日の試合でも、一時は勝ち越しとなるヒットを放たれていますが。打席で1番心掛けていることはなんですか?」
「……んー、打席ではとにかく1球1球大切にしていくことですね。出来る限りボールを見きわめて、自分のスイングをすることを第一に考えています」
「それでは…………次に守備についてなんですが………新井選手の堅実な外野守備というのも、非常に評価されていると思うんですが……」
「ああ、ありがとう。浜出君」
ようやくベンチに戻ると、ほとんどの選手は自分の道具や荷物を持ってベンチ裏に引き上げていた。
唯一残っていた今日も出番のなかった同じルーキーの浜出君がわざわざちょっとの間待ってくれていたのだろうか、俺を慰めるように苦笑う。
まあ仕方ない。自分がベストを尽くしてもチームが負けてしまうことだってある。その逆もあるわけで。
グラウンドからベンチに戻ると少し冷静になった気がした。
俺より悔しい思いをしているのは打たれたピッチャーだ。
また次頑張って今日で3連敗した分を取り返せばいい。
俺はそう自分に言い聞かせながらベンチ裏に引き上げる。
また後ろで荷物をまとめて、リュックにタオルやら着替えやらを全部詰め込んで、ベンチ裏から取材エリアを通り、ロッカーの方へ行こうすると……。
「新井選手! 新井選手!」
なにかを呼ぶ声がする。
まあ、負けチームにも多少取材あるからな。
「すいませーん。新井選手!お話を聞かせて頂いてもよろしいですかー?」
ほら、初々しくて可愛いアナウンサーが呼んでるぞ。早く行ってやれよ。
「新井せんしゅー!新井せんしゅー! わたしですー! おとといのおでん屋でのわたしですー!」
え? 一緒におでん食べたあの子?
うそーん。女子アナだったのー?
「すいません、こちらまでよろしくお願いします」
白いパーテーションで仕切られただけの取材エリアの空間に案内され、俺はリュックを背負ったままその場所に立つ。
柴ちゃんの彼女の連れだった、一緒におでん屋さんで1杯ヤった仲であるその子がどっかのアナウンサーで、俺に取材をするなんて、なんという偶然だろうか。
いや、必然なのか。
「試合直後に申し訳ございません。5分ほどお時間を頂きますね」
「ええ、いくらでも」
そう答えた俺に男性カメラマンが抱えたテレビカメラを俺に向ける。
そして、そのアシスタントか、はたまたディレクターは分からないが、そばにいたもう1人の男性が取材エリアに備え付けられた照明を俺に向けて焚く。
そしてその彼が合図を出すと、カッと光を浴びて眩しくなった俺にアナウンサーがマイクを向ける。
「はじめまして、日本TVニュースワンのスポーツコーナーを担当しています、アナウンサーの水嵩綾乃(みずかさあやの)と申します。新井選手、今回は私の初めての取材となります。試合直後でお疲れかとは思いますが、何卒よろしくお願いします」
彼女は向けられたカメラに対して斜に構えるようにして、スラスラと流暢にそう話し、俺に向かって深々と頭を下げた。
「えー、新井選手は交流戦明けから、1軍に昇格されて、ここまで新人離れした活躍をしておられますが、ご自身としてはこのご活躍をどのように感じておられますか?」
活躍? 活躍ねえ。
彼女………水嵩さんも初めての取材なら、俺もこんな風に取材をされるなんて初めてである。しかも、いきなりカメラを向けられて。
ジャパンTVのニュースワンといえば、毎日日付が変わるくらいの時間に放送されているスポーツニュース番組だ。
あんまり見たことはないが、この取材というかインタビューを今日の放送でオンエアされるのだろうか。
そう考えると途端に緊張してしまう。ドーラン塗ってないし。
「まだ正直、自分で自分のプレーを振り返る余裕はなくて、とにかく毎日集中してプレーすることを心掛けていますね」
「なるほど。今日の試合でも、一時は勝ち越しとなるヒットを放たれていますが。打席で1番心掛けていることはなんですか?」
「……んー、打席ではとにかく1球1球大切にしていくことですね。出来る限りボールを見きわめて、自分のスイングをすることを第一に考えています」
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