実況!4割打者の新井さん
中華を食べたい新井さん5
「3ボール1ストライク。岸田、投げました!きわどいところ外れた! フォアボール!これで1アウト満塁になりました!」
低めのフォークボールを見極められ、7番打者にフォアボール。
先頭バッターのツーベースから1アウトを取った後に、なんと全部の塁が埋まってしまった。
1打同点。長打が出ればサヨナラ。大ピンチ。
一気に俺の初ヒーローインタビューに暗雲が立ち込める。
そして相手の横浜さんの8番はピッチャーの打順。当然代打が出てきた。
「横浜ベイエトワールズ、選手の交代をお知らせします。バッター、与島に代わりまして、関」
若手の左バッターだ。長打力そこまでではないが速く、なかなかコンパクトでいいバッティングをしているぞ。
2軍で何回か見た時にはしぶといバッティングで何本もヒットを放っていた。
バッターが打席に入ると、横浜応援団から大チャンステーマが流れ、一気にスタジアムの雰囲気が変わる。
「「絶対勝つぞ! エトワール!!」」
スタジアムが盛り上がり、文字通り一体となった応援がグラウンドを包みこむと、なんだかバッターがさらに打ちそうな気がするから不思議だ。
そんな中、慎重にキャッチャーの鶴石さんとサインの交換をして低めにいいボールを投げ込むキッシー。
「関打った!!  打球はセンターの前へ………抜けたー!!」
普通に打たれてしまった……。
キッシーが投じた146キロのストレート。膝元いっぱいのナイスコントロールだったが、しっかりボールに対してタイミングバッチリにコンタクトされた。
相手バッターの乾いた打球音が響いて、速い球足でピッチャーの足元を抜けていく。
投げ終わった足元で低くバウンドするような打球。キッシーもなんとかグラブを出そうとしたが間に合わず。
セカンドの守谷ちゃんがその打球に飛び付くも、それほど惜しい感じでもなく、横浜ファンの大歓声が上がりながら、鮮やかな緑色の人工芝を這うようにして、センター前に抜けていく。
3塁ランナーがホームインし、さらに3塁コーチャーの腕がぐるぐるとホーム方向に回る。
いいスタートを切っていた同点の2塁ランナーが3塁を回ってホームに突入。
センターの柴ちゃんが転がる打球を掴み、送球体制に入るが、もうタイミングは厳しかった。
外野の間を抜けてサヨナラになることを第一に防ごうとしていたので、外野はそれほど前進守備ではなかったのだ。
柴ちゃんも決して肩弱いわけではないが、彼のバックホームしたボールは内野に戻ってきた頃には、もう2塁ランナーは、ホームの手前。
キャッチャーの鶴石さんは諦めてホームベースから前に離れて送球を掴み、2塁ランナーがホームに滑り込んだ。
同点である。
鮮やかな同点劇。
「横浜、再び満塁としまして、バッターはトップに帰って、桑ノ原がバッターボックスに入ります!」
もう横浜スタジアムは押せ押せムードだった。
その雰囲気にも押されて、マウンドに立つストッパーのキッシーは、なかなか思うようにコントロール出来ず、9番バッターにもフォアボール。
また満塁となったが、うちは彼からピッチャーを変えることは出来ない。
最下位独走のチームだが、今マウンドにいるのはうちの守護神なのだ。
回の頭から投げて、不運な当たりや判定があったとはいえ満塁になり、2点差を同点にされて、また満塁になり、3塁ランナーを返してしまえばそれでサヨナラという絶対絶命な状況でも彼を交代させることは出来ない。
うちのチームの守護神なのだから。
ここで交代させることは、次の試合からの配置変更を意味することになるのだから。最下位独走のチームとはいえ、2点リードを守れない守護神をおめおめと交代させるような真似は出来ない。
ベンチの考えはそんなところだろうか。
しかし、なんとかしてやりたい。勇気づけるような声でも掛けてやりたい。
俺はそう思うが、レフトを守る俺が出来ることなんてほとんどないんだ。
「打った! 桑ノ原の打球はレフトへ上がった! レフトの新井の正面!足が止まった! ほぼ定位置だ!」
このように打球が自分のところに飛んでこない限りは。
低めのフォークボールを見極められ、7番打者にフォアボール。
先頭バッターのツーベースから1アウトを取った後に、なんと全部の塁が埋まってしまった。
1打同点。長打が出ればサヨナラ。大ピンチ。
一気に俺の初ヒーローインタビューに暗雲が立ち込める。
そして相手の横浜さんの8番はピッチャーの打順。当然代打が出てきた。
「横浜ベイエトワールズ、選手の交代をお知らせします。バッター、与島に代わりまして、関」
若手の左バッターだ。長打力そこまでではないが速く、なかなかコンパクトでいいバッティングをしているぞ。
2軍で何回か見た時にはしぶといバッティングで何本もヒットを放っていた。
バッターが打席に入ると、横浜応援団から大チャンステーマが流れ、一気にスタジアムの雰囲気が変わる。
「「絶対勝つぞ! エトワール!!」」
スタジアムが盛り上がり、文字通り一体となった応援がグラウンドを包みこむと、なんだかバッターがさらに打ちそうな気がするから不思議だ。
そんな中、慎重にキャッチャーの鶴石さんとサインの交換をして低めにいいボールを投げ込むキッシー。
「関打った!!  打球はセンターの前へ………抜けたー!!」
普通に打たれてしまった……。
キッシーが投じた146キロのストレート。膝元いっぱいのナイスコントロールだったが、しっかりボールに対してタイミングバッチリにコンタクトされた。
相手バッターの乾いた打球音が響いて、速い球足でピッチャーの足元を抜けていく。
投げ終わった足元で低くバウンドするような打球。キッシーもなんとかグラブを出そうとしたが間に合わず。
セカンドの守谷ちゃんがその打球に飛び付くも、それほど惜しい感じでもなく、横浜ファンの大歓声が上がりながら、鮮やかな緑色の人工芝を這うようにして、センター前に抜けていく。
3塁ランナーがホームインし、さらに3塁コーチャーの腕がぐるぐるとホーム方向に回る。
いいスタートを切っていた同点の2塁ランナーが3塁を回ってホームに突入。
センターの柴ちゃんが転がる打球を掴み、送球体制に入るが、もうタイミングは厳しかった。
外野の間を抜けてサヨナラになることを第一に防ごうとしていたので、外野はそれほど前進守備ではなかったのだ。
柴ちゃんも決して肩弱いわけではないが、彼のバックホームしたボールは内野に戻ってきた頃には、もう2塁ランナーは、ホームの手前。
キャッチャーの鶴石さんは諦めてホームベースから前に離れて送球を掴み、2塁ランナーがホームに滑り込んだ。
同点である。
鮮やかな同点劇。
「横浜、再び満塁としまして、バッターはトップに帰って、桑ノ原がバッターボックスに入ります!」
もう横浜スタジアムは押せ押せムードだった。
その雰囲気にも押されて、マウンドに立つストッパーのキッシーは、なかなか思うようにコントロール出来ず、9番バッターにもフォアボール。
また満塁となったが、うちは彼からピッチャーを変えることは出来ない。
最下位独走のチームだが、今マウンドにいるのはうちの守護神なのだ。
回の頭から投げて、不運な当たりや判定があったとはいえ満塁になり、2点差を同点にされて、また満塁になり、3塁ランナーを返してしまえばそれでサヨナラという絶対絶命な状況でも彼を交代させることは出来ない。
うちのチームの守護神なのだから。
ここで交代させることは、次の試合からの配置変更を意味することになるのだから。最下位独走のチームとはいえ、2点リードを守れない守護神をおめおめと交代させるような真似は出来ない。
ベンチの考えはそんなところだろうか。
しかし、なんとかしてやりたい。勇気づけるような声でも掛けてやりたい。
俺はそう思うが、レフトを守る俺が出来ることなんてほとんどないんだ。
「打った! 桑ノ原の打球はレフトへ上がった! レフトの新井の正面!足が止まった! ほぼ定位置だ!」
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