実況!4割打者の新井さん
走塁も頑張る新井さん1
「1アウトランナー1塁となりまして、打順はトップに返ってバッターボックスには1番の柴崎が入ります。今日は、三振とセカンドゴロ、そしてショートフライで3打数ノーヒット。まだこの埼玉との3連戦ではヒットが出ていません」
「開幕から出ている新人選手は、この6月に入る辺りでかなり疲労がたまってきますからねえ」
「5月10日、最高で打率が3割2厘あった柴崎ですが、ここ12打席ヒットなしで、現在2割4分6厘まで打率を落としています。時折、パンチ力のある打撃を見せてくれるんですが」
「このバッターは恐らく引っ張るのが好きなんでねえ。やはり足の速い左バッターは流し打ちが出来れば打率は上がってきますけどねえ。試合前練習でもよく打撃コーチが柴崎に教えようとしてますよ。しかし、試合でそれを実践するものはもちろん難しいですね」
1アウトランナー1塁。
相手ピッチャーはだいぶ疲弊してきたとはいえ、今日はなかなか連打出来る状況ではない。
それならば、9点差あって、ランナーを溜めなければいけないけれど、俺が軽やかに盗塁して、得点圏に進めれば、柴ちゃんも楽に打撃が出来るかもしれないが。
俺が盗塁なんて成功するわけないし。こういう時に限って代走出さないしなあ。
ベンチに足速いのいるのに。
しかし相手ピッチャーはチェンジアップやフォークボールを使う。
1塁ランナーとしてはそれに賭けるしかない。
ピッチャーがフォークボールを投げて、ショートバウンドになって、その隙にスタートよく駆け出して、2塁を陥れる。
盗塁なんてできない以上、作戦はこれしかない。
「ピッチャー上野、バッター柴崎に第1球を投げました!! ストレート決まって1ストライク。今の球速は144キロです」
「次は変化球でしょうね。今日の柴崎君はほとんどタイミング取れていませんからね、変化球は特に」
初球、速い球が低めいっぱいに決まって1ストライク。
もし、チェンジアップやらなんやらを投げるなら、次の球だ。
俺は相当に予測して、1球目よりもだいぶ大きめにリードを取る。
今は9点差ある。よほどアホなリードを取りさえしなければ、気にされることはない。
ピッチャーが投球動作に入ってからの第2リードもたっぷりと。
「上野、セットポジションから第2球を投げました!!低め、柴崎は空振り!! ワンバウンド!」
サイン交換を終えたキャッチャーが低めに構えた。
それも、地面にミットがつきそうなくらい低く構える。
これは落ちる系の変化球にちがいない。
そう確信し、ピッチャーが投げたボールがちょうどホームベースで跳ねた瞬間、俺は一か八かのスタートを切った。
戻れと止める1塁コーチャーの声を背中に。
「投球ワンバウンド!!…… 1塁ランナー新井は……2塁へ向かう! 落ちたボールはキャッチャーの足元…………」
たいした暴投ではないワンバウンド。キャッチャーもしっかりそれに反応して、体ごとボールを止め、少しそれが横に転がったというそんな一瞬の状況。
ワンバウンドのそのボールが横に跳ねたのが見えた瞬間、俺は迷わず2塁に向かって走り出した。
余裕でセーフでもないし、余裕でアウトでもない。
相手のキャッチャーである金仁朗選手から恐らくはエグい送球が来るだろうが、2塁ベースから離れるようにしてボールが転がったから、ノーチャンスではないはず。
多分は間一髪のきわどいタイミングになるかもしれないと思っていたのだが。
スタートを切った2塁ベース上にカバーにきたショートの源選手が足元! 足元!という感じでホームベース方向を指差していたのだ。
えっ? 送球がこないぞ。どうした?
と、俺も2塁ベースの手前で走りながら、キャッチャーの方を見た。
すると、足元に落ちていたのであろうボールを見失っていたキャッチャーが足で不意に蹴っ飛ばしたところだった。
ボールはさらになかなかの勢いで、1塁側ベンチの方へと転がっていく。
それをキャッチャーが追いかける。
そんな光景を見て俺は迷わず、2塁ベースも蹴った。
「開幕から出ている新人選手は、この6月に入る辺りでかなり疲労がたまってきますからねえ」
「5月10日、最高で打率が3割2厘あった柴崎ですが、ここ12打席ヒットなしで、現在2割4分6厘まで打率を落としています。時折、パンチ力のある打撃を見せてくれるんですが」
「このバッターは恐らく引っ張るのが好きなんでねえ。やはり足の速い左バッターは流し打ちが出来れば打率は上がってきますけどねえ。試合前練習でもよく打撃コーチが柴崎に教えようとしてますよ。しかし、試合でそれを実践するものはもちろん難しいですね」
1アウトランナー1塁。
相手ピッチャーはだいぶ疲弊してきたとはいえ、今日はなかなか連打出来る状況ではない。
それならば、9点差あって、ランナーを溜めなければいけないけれど、俺が軽やかに盗塁して、得点圏に進めれば、柴ちゃんも楽に打撃が出来るかもしれないが。
俺が盗塁なんて成功するわけないし。こういう時に限って代走出さないしなあ。
ベンチに足速いのいるのに。
しかし相手ピッチャーはチェンジアップやフォークボールを使う。
1塁ランナーとしてはそれに賭けるしかない。
ピッチャーがフォークボールを投げて、ショートバウンドになって、その隙にスタートよく駆け出して、2塁を陥れる。
盗塁なんてできない以上、作戦はこれしかない。
「ピッチャー上野、バッター柴崎に第1球を投げました!! ストレート決まって1ストライク。今の球速は144キロです」
「次は変化球でしょうね。今日の柴崎君はほとんどタイミング取れていませんからね、変化球は特に」
初球、速い球が低めいっぱいに決まって1ストライク。
もし、チェンジアップやらなんやらを投げるなら、次の球だ。
俺は相当に予測して、1球目よりもだいぶ大きめにリードを取る。
今は9点差ある。よほどアホなリードを取りさえしなければ、気にされることはない。
ピッチャーが投球動作に入ってからの第2リードもたっぷりと。
「上野、セットポジションから第2球を投げました!!低め、柴崎は空振り!! ワンバウンド!」
サイン交換を終えたキャッチャーが低めに構えた。
それも、地面にミットがつきそうなくらい低く構える。
これは落ちる系の変化球にちがいない。
そう確信し、ピッチャーが投げたボールがちょうどホームベースで跳ねた瞬間、俺は一か八かのスタートを切った。
戻れと止める1塁コーチャーの声を背中に。
「投球ワンバウンド!!…… 1塁ランナー新井は……2塁へ向かう! 落ちたボールはキャッチャーの足元…………」
たいした暴投ではないワンバウンド。キャッチャーもしっかりそれに反応して、体ごとボールを止め、少しそれが横に転がったというそんな一瞬の状況。
ワンバウンドのそのボールが横に跳ねたのが見えた瞬間、俺は迷わず2塁に向かって走り出した。
余裕でセーフでもないし、余裕でアウトでもない。
相手のキャッチャーである金仁朗選手から恐らくはエグい送球が来るだろうが、2塁ベースから離れるようにしてボールが転がったから、ノーチャンスではないはず。
多分は間一髪のきわどいタイミングになるかもしれないと思っていたのだが。
スタートを切った2塁ベース上にカバーにきたショートの源選手が足元! 足元!という感じでホームベース方向を指差していたのだ。
えっ? 送球がこないぞ。どうした?
と、俺も2塁ベースの手前で走りながら、キャッチャーの方を見た。
すると、足元に落ちていたのであろうボールを見失っていたキャッチャーが足で不意に蹴っ飛ばしたところだった。
ボールはさらになかなかの勢いで、1塁側ベンチの方へと転がっていく。
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