実況!4割打者の新井さん
出番だよ! 新井さん1
「8回ウラ、北関東ビクトリーズの攻撃は、8番セカンド、守谷」
代打の準備が整い、ネクストに向かおうとベンチから出ようとした時、今日先発ピッチャーである連城君の姿がちらっと見えた。
8回を投げ終えて、被安打4。与四死球1、無失点。先発投手として、ルーキーとして、強力ブルーレオンズ打線相手に文句のない素晴らしいピッチング。
フォアボールを連発してピンチを招いたり、満塁の場面でポール際に特大のファウルボールを打たれたりと、何度も冷や冷やする場面はあったが、彼の負けん気根性が炸裂してギリギリのところで凌ぎ続けた。
マウンドを降り、吉野ピッチングコーチに交代を告げられた彼は、ベンチ裏に下がることなく、この試合の熱投を物語る、まだ闘志を燃やしているような火照った表情のままベンチの1番後ろに座っていたのだ。
しかし、8回無失点のスーパーピッチングながら、味方の援護はなく、うちがこの回で点を取らなければ、連城君に勝ちは付かない。
ならば、ここまでふつふつとながら、同じく闘志を燃やしていた俺が、ガツンとなんとかしてやろうじゃないか。
もちろん、最近車を購入したという、先頭の守谷ちゃんが出塁すればの話だけど。
「さあ、8回ウラ。北関東ビクトリーズの攻撃です。この回先頭は、8番の守谷です。今シーズンはここまで打率2割2分4厘。今日は高卒ルーキーの浜出に変わって、スタメン出場。2打席目に、桜池からツーベースを放っています」
相手マウンド上には、エース左腕の桜池。彼も7回を投げていまだに無失点。威力抜群のストレートに鋭く曲がるスライダーにうちの打線はキリキリ舞い。
ここまで3塁を踏めない攻撃が続いていたが、打席には今日唯一の長打を放ったバッターが左打席に入った。
「ピッチャー、桜池第1球を投げました! 真ん中低め決まってストライク。151キロのストレート」
速い。ベンチで見ているのと、少し進んだネクストで見るのとでは全然迫力が違う。
まるでロケット弾のように。キャッチャーのミットに収まった瞬間に爆発するんじゃないかというくらいの迫力。
しかし、バッターの守谷ちゃんは必死にその速いストレートに食らいつく。
多少振り遅れながらも、なんとかファウルで凌ぎ、きわどいボール球をきっちりと見逃す。
そして2ボール2ストライクとなった7球目。
守谷ちゃんは、外角に逃げるカーブをちょこんと合わせるバッティングでレフトの前にボールを落とした。
「やりました、守谷! 低めの変化球を上手く拾って、レフト前ヒット! ノーアウト1塁! 貴重なランナーが出ました」
「いいバッティングしましたねえ。変化球を狙っていたような待ち方ではありませんでしたが、体の開きを我慢してよくミートしましたよ」
打った守谷ちゃんがレフトへ飛んだ打球の行方を見ながらも、思わずガッツポーズ。
1塁を踏んだ後も、込み上げる嬉しさを押さえ込むように左手で小さくこぶしを作っていた。
1塁ベースコーチおじさんも、よくやったぞと褒めるように手を叩きながら、プロテクターを受けとる。
そして、私の出番だ。
「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします! バッター、連城に代わりまして、新井。バッターは新井時人。背番号64」
俺の名前がアナウンスされると、スタンドから歓声が上がる。
しかし、それは今日初めてのノーアウトのランナーで、1点を取れさえすれば、勝利が大きく近付くという状況があっての盛り上がりであり、俺個人に対する期待感の現れではない。
俺には分かる。
さて、バッターボックスの横で3塁コーチャーのサインを確認する俺。
さあ、ベンチの首脳陣様よ、強行策でもエンドランでもなんでも出しやがれ!!
バ
ン
ト。
ですよねー。
代打の準備が整い、ネクストに向かおうとベンチから出ようとした時、今日先発ピッチャーである連城君の姿がちらっと見えた。
8回を投げ終えて、被安打4。与四死球1、無失点。先発投手として、ルーキーとして、強力ブルーレオンズ打線相手に文句のない素晴らしいピッチング。
フォアボールを連発してピンチを招いたり、満塁の場面でポール際に特大のファウルボールを打たれたりと、何度も冷や冷やする場面はあったが、彼の負けん気根性が炸裂してギリギリのところで凌ぎ続けた。
マウンドを降り、吉野ピッチングコーチに交代を告げられた彼は、ベンチ裏に下がることなく、この試合の熱投を物語る、まだ闘志を燃やしているような火照った表情のままベンチの1番後ろに座っていたのだ。
しかし、8回無失点のスーパーピッチングながら、味方の援護はなく、うちがこの回で点を取らなければ、連城君に勝ちは付かない。
ならば、ここまでふつふつとながら、同じく闘志を燃やしていた俺が、ガツンとなんとかしてやろうじゃないか。
もちろん、最近車を購入したという、先頭の守谷ちゃんが出塁すればの話だけど。
「さあ、8回ウラ。北関東ビクトリーズの攻撃です。この回先頭は、8番の守谷です。今シーズンはここまで打率2割2分4厘。今日は高卒ルーキーの浜出に変わって、スタメン出場。2打席目に、桜池からツーベースを放っています」
相手マウンド上には、エース左腕の桜池。彼も7回を投げていまだに無失点。威力抜群のストレートに鋭く曲がるスライダーにうちの打線はキリキリ舞い。
ここまで3塁を踏めない攻撃が続いていたが、打席には今日唯一の長打を放ったバッターが左打席に入った。
「ピッチャー、桜池第1球を投げました! 真ん中低め決まってストライク。151キロのストレート」
速い。ベンチで見ているのと、少し進んだネクストで見るのとでは全然迫力が違う。
まるでロケット弾のように。キャッチャーのミットに収まった瞬間に爆発するんじゃないかというくらいの迫力。
しかし、バッターの守谷ちゃんは必死にその速いストレートに食らいつく。
多少振り遅れながらも、なんとかファウルで凌ぎ、きわどいボール球をきっちりと見逃す。
そして2ボール2ストライクとなった7球目。
守谷ちゃんは、外角に逃げるカーブをちょこんと合わせるバッティングでレフトの前にボールを落とした。
「やりました、守谷! 低めの変化球を上手く拾って、レフト前ヒット! ノーアウト1塁! 貴重なランナーが出ました」
「いいバッティングしましたねえ。変化球を狙っていたような待ち方ではありませんでしたが、体の開きを我慢してよくミートしましたよ」
打った守谷ちゃんがレフトへ飛んだ打球の行方を見ながらも、思わずガッツポーズ。
1塁を踏んだ後も、込み上げる嬉しさを押さえ込むように左手で小さくこぶしを作っていた。
1塁ベースコーチおじさんも、よくやったぞと褒めるように手を叩きながら、プロテクターを受けとる。
そして、私の出番だ。
「北関東ビクトリーズ、選手の交代をお知らせします! バッター、連城に代わりまして、新井。バッターは新井時人。背番号64」
俺の名前がアナウンスされると、スタンドから歓声が上がる。
しかし、それは今日初めてのノーアウトのランナーで、1点を取れさえすれば、勝利が大きく近付くという状況があっての盛り上がりであり、俺個人に対する期待感の現れではない。
俺には分かる。
さて、バッターボックスの横で3塁コーチャーのサインを確認する俺。
さあ、ベンチの首脳陣様よ、強行策でもエンドランでもなんでも出しやがれ!!
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ですよねー。
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