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実況!4割打者の新井さん

わーたん

阿久津のおじさんも躍動する4

「ナイスバッティングっす! まさか、ホームランになるとは」

先にホームインした俺は阿久津さんを出迎え、片手てタッチをかわす。

「俺も驚いたよ。いい風が吹いていたかもなあ」

阿久津さんはそれだけを言って、1打席目のホームランよりも、俄然盛り上がるベンチ前に走っていった。

「いやあ、大谷さん。阿久津の打球が伸びましたね!」

「ちょうどね、新井の打席くらいからライトからのいい風が吹きましたですねえ。しかし、あの低めの変化球をバックスクリーン横ですから、凄い技術ですよ」

「なんとこの3回、阿久津の2打席連続の2ランホームランでビクトリーズのリードは4点に広がりました!……………あっと! 4番赤月もいい当たり! ライト線を破りました! 長打コース! 赤月1塁を回って、悠々と2塁到達です! さあ、ビクトリーズ打線が活気づいてきたか!」



4番の赤ちゃんがインコースのストレートを思い切り引っ張って、ライト線を痛烈に破るツーベースヒット。

2塁ベース上で赤ちゃんは、俺達がいる1塁ベンチに向かって、両腕の力こぶを見せるマッスルポーズを取ってニコニコ笑っている。

すると、相手チームのベンチからピッチングコーチが現れて、ラインをまたいでマウンドに向かい、内野陣も集まり、少ししてから相手の監督も出てきた。

「埼玉ブルーレオンズ、ピッチャーの交代をお知らせします。ピッチャー、村山に変わりまして、上田。背番号35」

阿久津さんに2打席ホームランを打たれ、4番の赤ちゃんにツーベースを打たれたところで、相手の埼玉ピッチャー交代。

右のオーバーバンドから、目先を変えるように左のサイドハンドを送り込んできた。

スコアは4ー0。これ以上の失点はということで、1アウト2塁という場面。打順は左の桃ちゃんというところで左ピッチャー。

確かにシェパードは左ピッチャーに弱いからな。

「バッターは5番、ファースト、シェパード」


頼むぞシェパードちゃん。続けよ。俺やチームメイトは期待したのだが……。変わったピッチャーが見事な火消しを見せた。









「低めの変化球!! 見逃し三振!! この回途中からリリーフした埼玉の上田が見事なピッチング。6番桃白をセカンドフライ。7番鶴石からは得意のスライダーで見逃し三振を奪いました。3回を終わりまして4ー0。ビクトリーズ4点リードです」

「よっしゃ、行くぞ! ぬるい守備すんなよ!」

「「よっしゃい!!」」

阿久津さんのゲキが飛んでビクトリーズナインがグラウンドへ飛び出す。

俺もスーパーダッシュでサードの阿久津さんとショートの赤ちゃんを追い抜いてレフトの守備位置へと就くのだが。

「あいたたたた!」

調子に乗ってスーパーダッシュとかやったせいで、足がつってしまった。

思わず寝転んで必死につった足を伸ばしていたのだが、だーれも心配してくれない。

周りに2万2000人も人がいるのに。

誰1人として。

「新井さん、何やってんすかー! 早くボール投げて下さいよー!!」

センターの柴ちゃんがゲラゲラと笑っているだけだった。






「4回表、埼玉ブルーレオンズの攻撃は、4番指名打者、フェルナンド」

プロ野球に入ってから、俺は1番不安に思っていたのは守備である。

打つ方も心配ないといえば嘘になるが、打つ方で三振したり、ボテボテのピッチャーゴロにしかならなかったりの失敗をしても、ただ1アウトを取られるだけである。

場面によってはゲッツーになったり、とりあえず進塁打になったりするので、差し引きゼロになるとして、相手に1アウトを与えるだけ。どんなに打てなくても。

それ以上でもそれ以外でもない。

ただ、守備の失敗やエラーはわけが違う。チームに与える迷惑やダメージは、1打席凡退するのとはまるで意味が違うのだ。

特に外野の守備でフライを落としたり、送球ミスしたり、あげくの果てにはトンネルしてランニングホームランにしてしまったりしては、その1プレーで試合を壊してしまう。

ベンチの信用もなくす。試合で使われなくなってしまうこともあるのだ。

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