実況!4割打者の新井さん
阿久津のおじさんも躍動する3
あっ、やべえ! 中途半端なスイングになっちまった! 打撃コーチに怒られる!!
そう頭によぎって1塁に駆け出したときチラッと見た打球は、まるで手でポーンと放ったかのようにセカンドベースに向かって飛んでいた。
懸命に追い掛けるセカンドとショートを嘲笑うかのように、どちらもちょうど追い付けない。
狭まる2人のちょうど間。
セカンドベースの向こう側でボトリと落ちた打球。
それをセカンドが拾った時には、俺は1塁に到達し、悠々内野安打になっていたのだ。
「新井の打球は、止めたバットに当たったのが幸いしたラッキーヒット! 新井は苦笑いで1塁ベースを駆け抜けました!」
「ツイてますねえ、このルーキーは。なかなかああいうのはヒットにならないんですが」
「そうですね。さあ、1打席目にホームランを放っている阿久津の前にランナーが出ました! 1アウトランナー1塁です!」
今日の俺、早くも2安打目である。
「3番、サード、阿久津」
阿久津さんがネクストバッターズサークルからゆっくりと歩いて打席に向かう。
阿久津さんの名前がコールされると、スタンドがワアーッ! っと大いに盛り上がる。
観客が椅子から立ち上がり、メガホンやうちわを叩き、タオルを掲げ、阿久津さんの打席を盛り上げている。
俺の時はなんにもなく、ざわざわしているだけだったのに。
確かに阿久津さんは勝負師というか、寡黙で男気がある、背中でものを語るようなキャプテンだからなあ。
奥さんはバインバインの元アイドルだが。
「新井。無理な走塁するなよ。勝手に盗塁したりとか、ワイルドピッチやパスボールとか。阿久津が打ってくれっからな」
「はい、分かってますよ」
「そのかわり、外野の間を打球が抜けたら、ホームまで突っ込むつもりで走れよ。いいな?」
1塁コーチャーの言葉に俺は黙って頷く。
そして、ピッチャーを見ながら、ゆっくりと安全な距離の リードを取ると、阿久津さんがバットを構えた。
1度肩に乗せたバットを高く上げ、すっとグリップを肩の位置まで下ろす。
1アウトランナー俺。ベンチからのサインは特になく、阿久津さんは集中を研ぎ澄ますようにして打席に立つ。
1打席目のホームランは、インコースよりのほぼど真ん中のストレート。
相手バッテリーにしてみれば、勝負に行く前に勝負がホームランで決してしまったような1打席目だった。
そんなわけでこの阿久津さんの2打席目は、慎重な配球になっているのだが、変化球が2球続けてボールになり、もう相手バッテリーはストライクを投げるしかない状況になった。
その3球目。
俺はそれまでよりも少し大きくリードを取り、ピッチャーが投げる。
俺は第2リードも大きく取る。
3球目も変化球。しかし、低めのいいコースにいったように見えた。
それを阿久津さんが豪快なスイングで掬い上げた。
打球は、センターの後方へと飛ぶ。
ガツーンという表現が1番しっくりくる打球音。
阿久津さんの打球がセンター後方に向かって、高く上がる。
これは抜けるだろう。フェンスダイレクトになる打球だ。
深めに守っているとはいえ、センターは追い付けないだろうと、俺はもう打球を見ることなく、ホームに返るそのつもりで、全速力で2塁ベースを蹴った。
その時だった。
スタジアム中が大歓声に包まれピンク色のユニフォームを着た観客が総立ちになった。
まさかと思ったが、視界に入った3塁コーチャーが両手を広げてゆっくり走れとジェスチャーする。
センターの方向を振り返ると、打球を追い掛けていた外野手がフェンス際からスタンドを見上げていた。
そのすぐ上では、最前列のビクトリーズのキャップをかぶった太ったおじさんがボールを掲げながら、跳び跳ねるように喜んでいた。
2打席連続のホームランである。
マジかよと思って1塁ベースの方を見ると、阿久津さんが打球が飛び込んだスタンドの方を見ながら、小さくガッツポーズしていた。
そう頭によぎって1塁に駆け出したときチラッと見た打球は、まるで手でポーンと放ったかのようにセカンドベースに向かって飛んでいた。
懸命に追い掛けるセカンドとショートを嘲笑うかのように、どちらもちょうど追い付けない。
狭まる2人のちょうど間。
セカンドベースの向こう側でボトリと落ちた打球。
それをセカンドが拾った時には、俺は1塁に到達し、悠々内野安打になっていたのだ。
「新井の打球は、止めたバットに当たったのが幸いしたラッキーヒット! 新井は苦笑いで1塁ベースを駆け抜けました!」
「ツイてますねえ、このルーキーは。なかなかああいうのはヒットにならないんですが」
「そうですね。さあ、1打席目にホームランを放っている阿久津の前にランナーが出ました! 1アウトランナー1塁です!」
今日の俺、早くも2安打目である。
「3番、サード、阿久津」
阿久津さんがネクストバッターズサークルからゆっくりと歩いて打席に向かう。
阿久津さんの名前がコールされると、スタンドがワアーッ! っと大いに盛り上がる。
観客が椅子から立ち上がり、メガホンやうちわを叩き、タオルを掲げ、阿久津さんの打席を盛り上げている。
俺の時はなんにもなく、ざわざわしているだけだったのに。
確かに阿久津さんは勝負師というか、寡黙で男気がある、背中でものを語るようなキャプテンだからなあ。
奥さんはバインバインの元アイドルだが。
「新井。無理な走塁するなよ。勝手に盗塁したりとか、ワイルドピッチやパスボールとか。阿久津が打ってくれっからな」
「はい、分かってますよ」
「そのかわり、外野の間を打球が抜けたら、ホームまで突っ込むつもりで走れよ。いいな?」
1塁コーチャーの言葉に俺は黙って頷く。
そして、ピッチャーを見ながら、ゆっくりと安全な距離の リードを取ると、阿久津さんがバットを構えた。
1度肩に乗せたバットを高く上げ、すっとグリップを肩の位置まで下ろす。
1アウトランナー俺。ベンチからのサインは特になく、阿久津さんは集中を研ぎ澄ますようにして打席に立つ。
1打席目のホームランは、インコースよりのほぼど真ん中のストレート。
相手バッテリーにしてみれば、勝負に行く前に勝負がホームランで決してしまったような1打席目だった。
そんなわけでこの阿久津さんの2打席目は、慎重な配球になっているのだが、変化球が2球続けてボールになり、もう相手バッテリーはストライクを投げるしかない状況になった。
その3球目。
俺はそれまでよりも少し大きくリードを取り、ピッチャーが投げる。
俺は第2リードも大きく取る。
3球目も変化球。しかし、低めのいいコースにいったように見えた。
それを阿久津さんが豪快なスイングで掬い上げた。
打球は、センターの後方へと飛ぶ。
ガツーンという表現が1番しっくりくる打球音。
阿久津さんの打球がセンター後方に向かって、高く上がる。
これは抜けるだろう。フェンスダイレクトになる打球だ。
深めに守っているとはいえ、センターは追い付けないだろうと、俺はもう打球を見ることなく、ホームに返るそのつもりで、全速力で2塁ベースを蹴った。
その時だった。
スタジアム中が大歓声に包まれピンク色のユニフォームを着た観客が総立ちになった。
まさかと思ったが、視界に入った3塁コーチャーが両手を広げてゆっくり走れとジェスチャーする。
センターの方向を振り返ると、打球を追い掛けていた外野手がフェンス際からスタンドを見上げていた。
そのすぐ上では、最前列のビクトリーズのキャップをかぶった太ったおじさんがボールを掲げながら、跳び跳ねるように喜んでいた。
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