実況!4割打者の新井さん
やっちまった、新井さん。
「1回ウラ、北関東ビクトリーズの攻撃は、1番センター柴崎」
先頭打者の柴ちゃんが左打席に入る。いっちょまえにカッコつけて足場をならし、丸めた左手に息を吹き込んで、グリップいっぱいにバットを握った。
1発ドカンとかましたれ! と、初回からの猛攻を期待するスタンドからは歓声が上がり、彼の応援歌が聞こえ始める。
「「ダイヤモンドを駆ける栃木の風ー!」」
ドンドンドン! ライトスタンドの真ん中にて、太鼓の音が聞こえ、トランペットが鳴り響く。応援団リーダーの動きに合わせて、創設1年目の球団のファンがそれなり一体となり、雰囲気が高まる。
そんな中、柴ちゃんが投じられた低めの変化球をスイング。
カンッ!
柴ちゃんの打球が上空に舞い上がり、相手キャッチャーが勢いよくマスクを外して上を見上げる。
そして、1塁ベンチ。打球を追ってこちらに向かって走ってきた。
相手の広島が今売り出している強肩強打の若手キャッチャー。
スタンドに入るか、ファウルグラウンドで捕れるか微妙な当たり。
それを相手キャッチャーが一生懸命追って、ベンチに座る俺に向かってくる。
1歩2歩3歩と近付き、真ん前まできた瞬間、足がもつれたのか、果敢にもダイビングキャッチ試みたのか、打球を見上げたまま、段差を駆け下りるようにして、ベンチに向かって飛び込む形で突っ込んできた。
危ない!!
そう思った俺は勢いよく突っ込んできたキャッチャー相手に、反射的に手を出して受け止めようとしまったのだ。
もの凄い衝撃が俺の体を襲い、しばらくの間、シンと静かになった。
「だ、だいしょうぶですか!?」
初対面のそのキャッチャーがとっさに俺の身を案じるくらいの状況だったらしい。
ベンチ前に上がったファウルフライを追って突っ込んできたキャッチャーがベンチの中へと頭から倒れてきたわけだけど。
不幸にも反射的に差し出した俺の左腕がおもいっきり下敷きになり、ベンチのチェアの角と彼の体に挟まってしまったらしい。
一瞬が過ぎて、ベンチの床で倒れているのは、相手のキャッチャーではなく、俺の方だった。
左腕に激痛が走る。
「ああ、いいよ。君は戻って」
うちのベンチにいた誰かがそう言って、キャッチャーの子はグラウンドへと戻っていく。
皮肉なことに、最後まで諦めずにベンチに飛び込んでまで打球を追う彼に両チームのファンから拍手を浴びていた。
俺が助けたのに。
「新井? 大丈夫か? 立てるか?」
知らんコーチにそう言われて起き上がろうするが、反動をつけようとするだけで、左腕に激痛が走る。
もう確信した。
このままでプレー出来ない。下手すれば、また骨折している。
せっかくスタメンに抜擢されたのに、1打席も立つことなく交代。
そして、2軍落ちだと。
          
先頭打者の柴ちゃんが左打席に入る。いっちょまえにカッコつけて足場をならし、丸めた左手に息を吹き込んで、グリップいっぱいにバットを握った。
1発ドカンとかましたれ! と、初回からの猛攻を期待するスタンドからは歓声が上がり、彼の応援歌が聞こえ始める。
「「ダイヤモンドを駆ける栃木の風ー!」」
ドンドンドン! ライトスタンドの真ん中にて、太鼓の音が聞こえ、トランペットが鳴り響く。応援団リーダーの動きに合わせて、創設1年目の球団のファンがそれなり一体となり、雰囲気が高まる。
そんな中、柴ちゃんが投じられた低めの変化球をスイング。
カンッ!
柴ちゃんの打球が上空に舞い上がり、相手キャッチャーが勢いよくマスクを外して上を見上げる。
そして、1塁ベンチ。打球を追ってこちらに向かって走ってきた。
相手の広島が今売り出している強肩強打の若手キャッチャー。
スタンドに入るか、ファウルグラウンドで捕れるか微妙な当たり。
それを相手キャッチャーが一生懸命追って、ベンチに座る俺に向かってくる。
1歩2歩3歩と近付き、真ん前まできた瞬間、足がもつれたのか、果敢にもダイビングキャッチ試みたのか、打球を見上げたまま、段差を駆け下りるようにして、ベンチに向かって飛び込む形で突っ込んできた。
危ない!!
そう思った俺は勢いよく突っ込んできたキャッチャー相手に、反射的に手を出して受け止めようとしまったのだ。
もの凄い衝撃が俺の体を襲い、しばらくの間、シンと静かになった。
「だ、だいしょうぶですか!?」
初対面のそのキャッチャーがとっさに俺の身を案じるくらいの状況だったらしい。
ベンチ前に上がったファウルフライを追って突っ込んできたキャッチャーがベンチの中へと頭から倒れてきたわけだけど。
不幸にも反射的に差し出した俺の左腕がおもいっきり下敷きになり、ベンチのチェアの角と彼の体に挟まってしまったらしい。
一瞬が過ぎて、ベンチの床で倒れているのは、相手のキャッチャーではなく、俺の方だった。
左腕に激痛が走る。
「ああ、いいよ。君は戻って」
うちのベンチにいた誰かがそう言って、キャッチャーの子はグラウンドへと戻っていく。
皮肉なことに、最後まで諦めずにベンチに飛び込んでまで打球を追う彼に両チームのファンから拍手を浴びていた。
俺が助けたのに。
「新井? 大丈夫か? 立てるか?」
知らんコーチにそう言われて起き上がろうするが、反動をつけようとするだけで、左腕に激痛が走る。
もう確信した。
このままでプレー出来ない。下手すれば、また骨折している。
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そして、2軍落ちだと。
          
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