実況!4割打者の新井さん
幼女にはバリ優しい新井さん。
「絶対勝つ!! 赤いのに勝つ!!」
「「よっしゃあ!!」」
試合前の声出し。何故だか俺がやらされることになり、赤いのに勝つ! とシンプルに短い言葉でチームに気合いを注入した。
主審がバックネット横でいきましょう! と声を上げると、スタジアム内にアナウンスが響き渡る。
「ただいまより、日本プロ野球東西交流戦北関東ビクトリーズ対広島カルプス1回戦の試合開始でございます。まず、守備に就きます北関東ビクトリーズ、ファースト、シェパード!」
「全員ボールと人形持ったか?」
ベンチ内でカゴに入った、球団ロゴ入りのボールと球団マスコットであるビック君とトリーズちゃん人形をグラブいっぱいに入れてセンターを守る柴ちゃんと一緒にベンチの最前列で自分の名前がアナウンスされるのを待つ。
「いよいよスタメンすね、新井さん!今日は2人で大活躍してやりましょう!」
「ああ。当たりめえよ! 今日はコールド勝ちにしてやるぜ!」
「新井さん、コールドはないっす」
「そんぐらいの気持ちでやろうぜってことだよ」
「レフトは新井時人! 背番号64!!」
はーい、どうもー! 俺は颯爽とベンチを飛び出し、まずはベンチ上のスタンドに2個ボールを投げ入れながらレフトの守備位置へと向かっていった。
グラブいっぱいに入れていたボールを全部スタンドに投げ入れ、あとは右手に球団マスコットの人形が2つ。
これもスタンドに投げ入れてしまおうかと思ったが、チラッと見た3塁ファウルゾーンのエキサイティングシートに敵チームのユニフォームをきた7歳か8歳くらいの女の子がいた。
ヘルメットをかぶって大人しく座っている。
立ち上がって、試合前応援歌を歌うお母さんの横で大人しくしている様子だが、少し退屈そうだ。
「………」
「………」
なんだかその子に手元をずっと見られているような気がしたので、俺は30メートルほどをダッシュして敵ファンがたくさんいるそのエキサイティングシートへと一気に近付いた。
俺がすぐ側まで行くと、その小さな女の子は、両手で持っていたジュースの入った大きな紙コップを落としそうになるくらいびっくりしていた。
「はい、これあげるね」
俺はそう言ってビック君とトリーズちゃんの人形をその少女に差し出す。
「………えっ」
しかし、少女は突然の出来事に面食らってジャースを持ったまま固まってしまった。
しかし、隣にいたお母さんが………。
「アズサ、お兄ちゃんがお人形くれるって!」
「………う、うん」
少女は母親にトンっと背中を押され、俺に向かって恐る恐る両手を伸ばす。
ジュースの入った紙コップをそのお股に挟んで。
俺もエキサイティングシートの腰の高さほどのフェンスに身を乗り出して、両手を伸ばし、人形を差し出す。
俺と少女。
両方がいっぱいに手を伸ばして、人形が行き渡った。
「バイバイ」
「………ばい……ばい」
少女が人形を抱き締めながら、小さく手を振るのを見届けて、フェンスを蹴るようにしてその場を離れた俺はレフトの守備位置へと戻り、柴ちゃんとキャッチボールを始めた。
「「よっしゃあ!!」」
試合前の声出し。何故だか俺がやらされることになり、赤いのに勝つ! とシンプルに短い言葉でチームに気合いを注入した。
主審がバックネット横でいきましょう! と声を上げると、スタジアム内にアナウンスが響き渡る。
「ただいまより、日本プロ野球東西交流戦北関東ビクトリーズ対広島カルプス1回戦の試合開始でございます。まず、守備に就きます北関東ビクトリーズ、ファースト、シェパード!」
「全員ボールと人形持ったか?」
ベンチ内でカゴに入った、球団ロゴ入りのボールと球団マスコットであるビック君とトリーズちゃん人形をグラブいっぱいに入れてセンターを守る柴ちゃんと一緒にベンチの最前列で自分の名前がアナウンスされるのを待つ。
「いよいよスタメンすね、新井さん!今日は2人で大活躍してやりましょう!」
「ああ。当たりめえよ! 今日はコールド勝ちにしてやるぜ!」
「新井さん、コールドはないっす」
「そんぐらいの気持ちでやろうぜってことだよ」
「レフトは新井時人! 背番号64!!」
はーい、どうもー! 俺は颯爽とベンチを飛び出し、まずはベンチ上のスタンドに2個ボールを投げ入れながらレフトの守備位置へと向かっていった。
グラブいっぱいに入れていたボールを全部スタンドに投げ入れ、あとは右手に球団マスコットの人形が2つ。
これもスタンドに投げ入れてしまおうかと思ったが、チラッと見た3塁ファウルゾーンのエキサイティングシートに敵チームのユニフォームをきた7歳か8歳くらいの女の子がいた。
ヘルメットをかぶって大人しく座っている。
立ち上がって、試合前応援歌を歌うお母さんの横で大人しくしている様子だが、少し退屈そうだ。
「………」
「………」
なんだかその子に手元をずっと見られているような気がしたので、俺は30メートルほどをダッシュして敵ファンがたくさんいるそのエキサイティングシートへと一気に近付いた。
俺がすぐ側まで行くと、その小さな女の子は、両手で持っていたジュースの入った大きな紙コップを落としそうになるくらいびっくりしていた。
「はい、これあげるね」
俺はそう言ってビック君とトリーズちゃんの人形をその少女に差し出す。
「………えっ」
しかし、少女は突然の出来事に面食らってジャースを持ったまま固まってしまった。
しかし、隣にいたお母さんが………。
「アズサ、お兄ちゃんがお人形くれるって!」
「………う、うん」
少女は母親にトンっと背中を押され、俺に向かって恐る恐る両手を伸ばす。
ジュースの入った紙コップをそのお股に挟んで。
俺もエキサイティングシートの腰の高さほどのフェンスに身を乗り出して、両手を伸ばし、人形を差し出す。
俺と少女。
両方がいっぱいに手を伸ばして、人形が行き渡った。
「バイバイ」
「………ばい……ばい」
少女が人形を抱き締めながら、小さく手を振るのを見届けて、フェンスを蹴るようにしてその場を離れた俺はレフトの守備位置へと戻り、柴ちゃんとキャッチボールを始めた。
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