実況!4割打者の新井さん

わーたん

饅頭貰える新井さん。

カアンッ!!

宇都宮のどんよりとした曇り空に、俺の打球音が響き渡った。

打球は、投球直後のピッチャーの足元をゴロでセンター前へと抜けていった。

俺に打たれたピッチャーは、悔しそうに天を仰ぎ、マウンドの土を蹴り上げる。

俺はニッコリ笑いながら、打球の行方を一応確認しながら、1塁ベースをゆっくりとオーバーランする。

「新井選手、ただいまのヒットで本日猛打賞でございます! 猛打賞といたしまして、本日のゲームスポンサーであります、宇都宮桃菓堂様より、特製桃餡まんじゅうの詰め合わせが送られます」

また桃餡まんじゅうかあ。3日前にもらったばっかりなのに。

まあ、みのりんと2人で全部食べきったところだったからちょうどよかったけど。

「新井、代走だ。お疲れさん」




いやー、最近は調子がいいなあ。関西弁コーチの元で2月から4ヶ月間じっくり体づくりをしたおかげで、なんだか自分のスイングに力強さが増した感じだ。

そしてなにより、覚醒したかのように打席でよくボールが見えるのだ。

20%近かった体脂肪率が大幅に減った上に、体重は8キロくらい増えたからね。

なんだか風呂に入って鏡を見るたびに、体つきが変わってきたのも実感するし、これならみのりんが、新井くん、ステキ………ぽっ……。っとなるのも時間の問題だ。

「ご覧のように北関東ビクトリーズ対北海道フライヤーズの試合、3ー6で北海道フライヤーズの勝利でございます。勝利投手池田、セーブ投手田谷。敗戦投手小野川。尚、本試合ホームランを放ちましたフライヤーズ、佐賀選手にはホームラン賞と致しまして、ゲームスポンサーであります宇都宮桃菓堂様より………」

まあ、試合は負けたけどね。








「おーい、新井いるかー!」

試合が終わり、さっさと帰ろうとロッカーに向かおうとすると、知らんコーチが俺を呼び止める。

いつも監督の横にいる他よりも数段偉そうな態度のコーチだ。

「監督が呼んでるぞ。すぐに向かってくれ」

「はーい」

今日は俺が2軍に落ちて10日目である。

朝になって1軍監督からお呼びがかかり、慌てて大阪サウザンドドームに向かい、ノーノーを阻止するチーム唯一のヒットを放ったのに、ピッチャーが足りないからとその夕方に2軍に落とされた悲しき日から10日ですよ。

2軍に落ちても腐らずに地道に練習に取り組み、2試合に出て6打数6安打という文句なしの結果を残したわけですよ。

そして試合が終わってすぐに2軍監督に呼ばれたということはそういうことですよ。

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