実況!4割打者の新井さん
また2軍でがんばる新井さん
「3回ウラ、北関東ビクトリーズの攻撃は、9番レフト新井」
試合はテンポよく進み、0ー0のまま3回ウラ先頭打者として俺の打席が回ってきた。
バッターボックスの横に立ち、1回2回と素振りをしてピッチャーに目をやる。
マウンド上には、小柄のサウスポー。身長は171センチの俺と変わらない。
いや、俺より少し小さいくらいかもしれない。
それでも相手はプロ8年で90勝を挙げている埼玉ブルーレオンズを代表する左腕。
シーズン序盤の怪我で5月半ばの今の時期は2軍に帯同しているが、近々1軍に上がるのではないかというくらいコンディションをあげているピッチャーだ。
「ストライーク!!」
持ち球は独特の軌道で曲がるスラーブと、鋭く落ちるスクリューボール。
初球は真ん中低めのストレートだった。そのストレートは、低めいっぱいもコースはど真ん中と、決して厳しいボールではなかった。
しかし、俺は見逃した後、何度もなるほどねと頷く。
打つべき球はこれではない。
狙うはアウトコースよりの変化球。スラーブでもスクリューでもどっちでもいいが、バッターボックスで深く踏み込んで、ちょうどバットが届くような球がいいなとイメージしていた。
その2球目。相手ピッチャーは、決してストレートで力勝負するタイプのピッチャーではない。
どんなバッターが相手でも得意の変化球を必ず交えてくる。
それはこの俺の打席でも例外ではなかった。
ピッチャーがセットポジションから足を上げ、右足を踏み込み、腕を振り上げた瞬間。
あっ、変化球が来る。
そう確信したのだ。
アウトコースのボールゾーンから、ストライクゾーンに向かってくるスラーブ。
バッターボックスで1塁側に踏み込んで、流し打ちしようと振りだしたバットと、そのボールがバッチリぶつかり合う。
自分で自分の打球音は聞こえなかったが、打球はファーストの頭の上を飛び、ライトのファウルゾーンへとスライスするハーフライナー。
幸い、そのスライスも若干のもので、ライト線のライン際の2メートル内側にボールが落ちた。
打球がそのギリギリに落ち、ヒットになると、ベンチが一気に盛り上がったのが分かった。
前進守備気味ながら、それでも打球を追って前進してきた相手の右翼手を見ながら、俺は1塁ベースを蹴って2塁を狙う。
しかし、相手の右翼手の打球処理に無駄がなく、素早く打球を拾って送球体勢の入るのを見て、俺は2塁進塁を諦め、1塁へと戻った。
「オッケーイ、ナイバッチ!」
「いーよ、いーよ! 繋いでこう、繋いでこう!」
2軍戦の閑散とした球場に、うちのチームの選手達の拍手や声が響いた。
「ナイスバッティング」
「あざす」
1塁コーチャーともグータッチをかわす。
俺はスマートにヘルメットのつばを指でつまむようにして、相手の1塁手と1塁審判に挨拶をかわした。
そんな俺に1塁コーチャーが俺の背後すぐに立ち、耳元でささやく。
「お前、前みたいに相手とおしゃべりしてリード取り忘れるみたいなことすんなよ」
ちょっと。走塁に関してのアドバイスをちょうだいよ。
試合はテンポよく進み、0ー0のまま3回ウラ先頭打者として俺の打席が回ってきた。
バッターボックスの横に立ち、1回2回と素振りをしてピッチャーに目をやる。
マウンド上には、小柄のサウスポー。身長は171センチの俺と変わらない。
いや、俺より少し小さいくらいかもしれない。
それでも相手はプロ8年で90勝を挙げている埼玉ブルーレオンズを代表する左腕。
シーズン序盤の怪我で5月半ばの今の時期は2軍に帯同しているが、近々1軍に上がるのではないかというくらいコンディションをあげているピッチャーだ。
「ストライーク!!」
持ち球は独特の軌道で曲がるスラーブと、鋭く落ちるスクリューボール。
初球は真ん中低めのストレートだった。そのストレートは、低めいっぱいもコースはど真ん中と、決して厳しいボールではなかった。
しかし、俺は見逃した後、何度もなるほどねと頷く。
打つべき球はこれではない。
狙うはアウトコースよりの変化球。スラーブでもスクリューでもどっちでもいいが、バッターボックスで深く踏み込んで、ちょうどバットが届くような球がいいなとイメージしていた。
その2球目。相手ピッチャーは、決してストレートで力勝負するタイプのピッチャーではない。
どんなバッターが相手でも得意の変化球を必ず交えてくる。
それはこの俺の打席でも例外ではなかった。
ピッチャーがセットポジションから足を上げ、右足を踏み込み、腕を振り上げた瞬間。
あっ、変化球が来る。
そう確信したのだ。
アウトコースのボールゾーンから、ストライクゾーンに向かってくるスラーブ。
バッターボックスで1塁側に踏み込んで、流し打ちしようと振りだしたバットと、そのボールがバッチリぶつかり合う。
自分で自分の打球音は聞こえなかったが、打球はファーストの頭の上を飛び、ライトのファウルゾーンへとスライスするハーフライナー。
幸い、そのスライスも若干のもので、ライト線のライン際の2メートル内側にボールが落ちた。
打球がそのギリギリに落ち、ヒットになると、ベンチが一気に盛り上がったのが分かった。
前進守備気味ながら、それでも打球を追って前進してきた相手の右翼手を見ながら、俺は1塁ベースを蹴って2塁を狙う。
しかし、相手の右翼手の打球処理に無駄がなく、素早く打球を拾って送球体勢の入るのを見て、俺は2塁進塁を諦め、1塁へと戻った。
「オッケーイ、ナイバッチ!」
「いーよ、いーよ! 繋いでこう、繋いでこう!」
2軍戦の閑散とした球場に、うちのチームの選手達の拍手や声が響いた。
「ナイスバッティング」
「あざす」
1塁コーチャーともグータッチをかわす。
俺はスマートにヘルメットのつばを指でつまむようにして、相手の1塁手と1塁審判に挨拶をかわした。
そんな俺に1塁コーチャーが俺の背後すぐに立ち、耳元でささやく。
「お前、前みたいに相手とおしゃべりしてリード取り忘れるみたいなことすんなよ」
ちょっと。走塁に関してのアドバイスをちょうだいよ。
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