実況!4割打者の新井さん
そんなことってあります?
「えー、お待たせ致しました。責任審判の原田です。先ほどの打球、リプレー検証致しましたが、判定通り、フェア! 打球がエキサイトシートに入りましたので、エンタイトルツーベース。1アウト2塁で試合を再開します!」
審判の1人がマイクを持ってアナウンスすると、まだノーヒットノーランへ僅かな希望があったジャガースファンの一部からブーイング。
あらためてスコアボードのうちのヒットカウントに1と入った。
「1番センター、柴崎」
そして、1番打者の柴ちゃんが打席に入る。
ドーム内はなんとなく静まりかえるような妙な雰囲気。ジャガースファンの皆様方がどことなく俺のことを恨むような目で見ているような気がしてならない。
こういう時こそ、俺に代走を出してほしいものだが、ベンチは動く様子がない。
しかし、ノーヒットノーランがこんな形でなくなり、逆に開き直ったのか、相手投手のボールにまたキレが戻る。
1番柴ちゃん。2番高田さんを連続三振に切ってとり、試合終了。
しかし思い出してみれば、ちょっと前に3人娘とやった野球ゲームで、みのりんが俺を操作して、今と同じようなヒットを打っていたなあと思い出した。
スタンドから、勝利した大阪ジャガースファンの少し複雑な思いが入った黄色いジェット風船が飛ぶ中、俺は走ってベンチへと戻った。
「いやー、新井さんのヒットがなかったら本当にヤバかったですね」
「な。俺のあの打球がファウルだったら、また打てた自信はねえよ」
ロッカールームに戻り、隣の柴ちゃんと話をしながら着替えを済ませる。
試合に負けて、これで5連敗となってしまったが、ノーヒットノーランをくらいという最悪の事態はなんとか免れてほっとしているというのが、チームの本音であった。
右隣では、なんか甘い匂いの制汗スプレーを噴射する柴ちゃんのその横で、俺へと代打を出された浜出君が落ち込んでいる様子だった。
俺はその坊主頭を乱暴に鷲掴んだ。
「おい、浜出君。そんなに落ち込むなよ。今日はしょうがねえよ、相手のピッチャーがよかったんだから」
「そうっすよね。でも、自分が情けなくて………2打席で何も出来なくて」
浜出君はそう言いながらまた頭を下げて、今にも泣きそうな表情になった。
今日の試合もそうだけど、これで浜出君の打率は8番打者としてもひどいレベルだもんなー。
今日のヒットで1打数1安打。
現在10割打者の俺が彼を励ましてあげることにしよう。
「まあそう落ち込むな。早くホテルに行って美味いメシ食って元気出そうぜ。な! 柴ちゃんも一緒のテーブルで食おうぜ」
「おーい、新井いるかー!?」
ん? 知らんコーチだ。
「監督がお呼びだー。監督室まで行ってくれー」
「はーい」
コンコン。
「失礼します!」
「おう、入ってくれ」
ユニフォームからスーツに着替え終わった俺は、呼び出された監督室へと向かった。
別に呼び出すなら、ホテル帰ってからでいいのに。
わざわざ遠征初日の試合終わったばかりのこのタイミングで呼ばなくてもいいのに。
俺はそう思いながら、何の話だろうと、部屋を進むと、監督はわりと重々しい雰囲気だった。
「新井。今日は、朝から大阪まで来てもらってお疲れさん」
「いえいえ。必要なら呼んで下さい」
「お前がいなかったら、今日は大変なことになっていたよ。少ないがこれ監督賞だ。とっておいてくれ」
そう言って監督は、茶封筒を俺に差し出す。
俺は遠慮なく飛び付いた。わざわざ監督賞を渡すために俺を呼ぶとは。
てっきり、明日らスタメンで出てもらうから準備しておけと、そんなようなことを言われると思っていた。
なぜなら、今日ヒットを打ったのは俺だけなんだから。
だから、次に飛び出した監督の言葉に俺は絶望したのだ。
「悪いが、今日でまた2軍に戻ってくれ」
審判の1人がマイクを持ってアナウンスすると、まだノーヒットノーランへ僅かな希望があったジャガースファンの一部からブーイング。
あらためてスコアボードのうちのヒットカウントに1と入った。
「1番センター、柴崎」
そして、1番打者の柴ちゃんが打席に入る。
ドーム内はなんとなく静まりかえるような妙な雰囲気。ジャガースファンの皆様方がどことなく俺のことを恨むような目で見ているような気がしてならない。
こういう時こそ、俺に代走を出してほしいものだが、ベンチは動く様子がない。
しかし、ノーヒットノーランがこんな形でなくなり、逆に開き直ったのか、相手投手のボールにまたキレが戻る。
1番柴ちゃん。2番高田さんを連続三振に切ってとり、試合終了。
しかし思い出してみれば、ちょっと前に3人娘とやった野球ゲームで、みのりんが俺を操作して、今と同じようなヒットを打っていたなあと思い出した。
スタンドから、勝利した大阪ジャガースファンの少し複雑な思いが入った黄色いジェット風船が飛ぶ中、俺は走ってベンチへと戻った。
「いやー、新井さんのヒットがなかったら本当にヤバかったですね」
「な。俺のあの打球がファウルだったら、また打てた自信はねえよ」
ロッカールームに戻り、隣の柴ちゃんと話をしながら着替えを済ませる。
試合に負けて、これで5連敗となってしまったが、ノーヒットノーランをくらいという最悪の事態はなんとか免れてほっとしているというのが、チームの本音であった。
右隣では、なんか甘い匂いの制汗スプレーを噴射する柴ちゃんのその横で、俺へと代打を出された浜出君が落ち込んでいる様子だった。
俺はその坊主頭を乱暴に鷲掴んだ。
「おい、浜出君。そんなに落ち込むなよ。今日はしょうがねえよ、相手のピッチャーがよかったんだから」
「そうっすよね。でも、自分が情けなくて………2打席で何も出来なくて」
浜出君はそう言いながらまた頭を下げて、今にも泣きそうな表情になった。
今日の試合もそうだけど、これで浜出君の打率は8番打者としてもひどいレベルだもんなー。
今日のヒットで1打数1安打。
現在10割打者の俺が彼を励ましてあげることにしよう。
「まあそう落ち込むな。早くホテルに行って美味いメシ食って元気出そうぜ。な! 柴ちゃんも一緒のテーブルで食おうぜ」
「おーい、新井いるかー!?」
ん? 知らんコーチだ。
「監督がお呼びだー。監督室まで行ってくれー」
「はーい」
コンコン。
「失礼します!」
「おう、入ってくれ」
ユニフォームからスーツに着替え終わった俺は、呼び出された監督室へと向かった。
別に呼び出すなら、ホテル帰ってからでいいのに。
わざわざ遠征初日の試合終わったばかりのこのタイミングで呼ばなくてもいいのに。
俺はそう思いながら、何の話だろうと、部屋を進むと、監督はわりと重々しい雰囲気だった。
「新井。今日は、朝から大阪まで来てもらってお疲れさん」
「いえいえ。必要なら呼んで下さい」
「お前がいなかったら、今日は大変なことになっていたよ。少ないがこれ監督賞だ。とっておいてくれ」
そう言って監督は、茶封筒を俺に差し出す。
俺は遠慮なく飛び付いた。わざわざ監督賞を渡すために俺を呼ぶとは。
てっきり、明日らスタメンで出てもらうから準備しておけと、そんなようなことを言われると思っていた。
なぜなら、今日ヒットを打ったのは俺だけなんだから。
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