実況!4割打者の新井さん
新井さん、舞い戻る5
7回のうちの攻撃が終わったくらいから、俺はベンチ裏のウォームアップゾーンに下がり、大鏡の前でひたすらバットを振っていた。
今日は指名打者制。普段は代打の1番手としの出番が多い川田が、今日はDHにシェパードが入っているので、ファーストに入り既に試合に出ている。
そして今日残っている控え野手は、キャッチャーの子2人と、内野の守備固め要因の子。そして俺。
その中でも代打に出る序列は俺が1番下なのだが、残りの野手3人は全員左打者。今投げている相手左腕とは分が悪い。
コーチ陣に考える頭と、ほんの少しの勇気があれば、下位打線のところで、さっき中継左腕のロンパオをチンチンにした俺を起用しても何らおかしくない。
「これは打ち上げました! センターの柴崎が少し前進して取りました。スリーアウトチェンジ。………さあ、そして9回表、前村がノーヒットノーランへあとアウト3つ。そのマウンドへと上がります。9回表、ビクトリーズは8番の鶴石からという打順です」
チラッとグラウンドの方を覗くと、うちの選手達が守備から戻ってきた。
すると、さっき俺のバッティング練習を見ていたコーチが俺のところにやって来た。
「新井! 浜出のところで代打行くぞ!」
「9回表、北関東ビクトリーズの攻撃は、8番キャッチャー、鶴石」
ベンチ裏からグラウンドに出ると、そこはまるで別世界。
俺にとっては、生まれて初めてのドーム球場。明るい緑色の人工芝がグラウンドを埋めつくし、ベース周りの赤土がところどころでやたらと映える。
ドームという閉鎖空間ながら、そこには独特の雰囲気がある。大阪ジャガースという日本一の熱狂的ファンを持つ、関西の名門。
ましては、所属エース、前村のノーヒットノーランが目前。
あとアウト3つで偉業達成なのだ。
これが盛り上がらないわけがない。
しかしそれも普段のあとみっつとは違う。異様な雰囲気。歓声はあるが、前村が投球練習を1球投げる度にざわざわとした異様なムード。守るジャガースナインもいつもとは違う、緊張した面持ちになっている。
そんな中、先頭打者の鶴石さんが、相手を焦らすようにゆっくりと、ゆっくりと打席に向かう。
「コラ、早く打席入れや!」
「モタモタすんなや!鶴石!」
近くのスタンドからヤジが飛ぶ。
それでもバッターボックスの横で何回も素振りをしてから、ゆっくりと打席に入る。
そして、ピッチャーに手の平を向けながら足場をならすそのふてぶてしさは、さすが静岡の頭脳と言われたベテランキャッチャーだ。
「ピッチャー前村、第1球を………投げました!………打ちました、3塁線ファウル!初球はチェンジアップでした」
相手をイラつかせる程にゆっくりと打席に入った鶴石さんに対して、そっちがそうくるならと、初球チェンジアップ。
打ち気に走っていた鶴石さんのタイミングは早く、3塁方向へのファウルボールになった。
「2球目、これは低めに速いボールが決まりました。さあ、追い込みました」
チェンジアップの残像が残っている間に、インコース低めにツーシーム。
鶴石さんが見逃すと、主審の腕が高く上がる。
2ストライク。
今日の相手バッテリーが追い込んだら、もうあのボールしかない。
「バッター鶴石に対して3球目投げました! 低め、スプリット! ………サードゴロ! 捕って1塁へ!! アウト! さあ、まずは1アウトです!」
試合も最終盤になり、相手ピッチャーのスプリットにもややキレがなくなってきてはいるが、バットに当てられるものの、低めいっぱいにいったボールで、鶴石さんは内野グラウンドに転がすのが精一杯だった。
やはり、あの球を打つのは難しい。
「アンパイア! そいつ、代打!!」
監督がベンチから軽く出て来て主審に代打を告げる。
今日は指名打者制。普段は代打の1番手としの出番が多い川田が、今日はDHにシェパードが入っているので、ファーストに入り既に試合に出ている。
そして今日残っている控え野手は、キャッチャーの子2人と、内野の守備固め要因の子。そして俺。
その中でも代打に出る序列は俺が1番下なのだが、残りの野手3人は全員左打者。今投げている相手左腕とは分が悪い。
コーチ陣に考える頭と、ほんの少しの勇気があれば、下位打線のところで、さっき中継左腕のロンパオをチンチンにした俺を起用しても何らおかしくない。
「これは打ち上げました! センターの柴崎が少し前進して取りました。スリーアウトチェンジ。………さあ、そして9回表、前村がノーヒットノーランへあとアウト3つ。そのマウンドへと上がります。9回表、ビクトリーズは8番の鶴石からという打順です」
チラッとグラウンドの方を覗くと、うちの選手達が守備から戻ってきた。
すると、さっき俺のバッティング練習を見ていたコーチが俺のところにやって来た。
「新井! 浜出のところで代打行くぞ!」
「9回表、北関東ビクトリーズの攻撃は、8番キャッチャー、鶴石」
ベンチ裏からグラウンドに出ると、そこはまるで別世界。
俺にとっては、生まれて初めてのドーム球場。明るい緑色の人工芝がグラウンドを埋めつくし、ベース周りの赤土がところどころでやたらと映える。
ドームという閉鎖空間ながら、そこには独特の雰囲気がある。大阪ジャガースという日本一の熱狂的ファンを持つ、関西の名門。
ましては、所属エース、前村のノーヒットノーランが目前。
あとアウト3つで偉業達成なのだ。
これが盛り上がらないわけがない。
しかしそれも普段のあとみっつとは違う。異様な雰囲気。歓声はあるが、前村が投球練習を1球投げる度にざわざわとした異様なムード。守るジャガースナインもいつもとは違う、緊張した面持ちになっている。
そんな中、先頭打者の鶴石さんが、相手を焦らすようにゆっくりと、ゆっくりと打席に向かう。
「コラ、早く打席入れや!」
「モタモタすんなや!鶴石!」
近くのスタンドからヤジが飛ぶ。
それでもバッターボックスの横で何回も素振りをしてから、ゆっくりと打席に入る。
そして、ピッチャーに手の平を向けながら足場をならすそのふてぶてしさは、さすが静岡の頭脳と言われたベテランキャッチャーだ。
「ピッチャー前村、第1球を………投げました!………打ちました、3塁線ファウル!初球はチェンジアップでした」
相手をイラつかせる程にゆっくりと打席に入った鶴石さんに対して、そっちがそうくるならと、初球チェンジアップ。
打ち気に走っていた鶴石さんのタイミングは早く、3塁方向へのファウルボールになった。
「2球目、これは低めに速いボールが決まりました。さあ、追い込みました」
チェンジアップの残像が残っている間に、インコース低めにツーシーム。
鶴石さんが見逃すと、主審の腕が高く上がる。
2ストライク。
今日の相手バッテリーが追い込んだら、もうあのボールしかない。
「バッター鶴石に対して3球目投げました! 低め、スプリット! ………サードゴロ! 捕って1塁へ!! アウト! さあ、まずは1アウトです!」
試合も最終盤になり、相手ピッチャーのスプリットにもややキレがなくなってきてはいるが、バットに当てられるものの、低めいっぱいにいったボールで、鶴石さんは内野グラウンドに転がすのが精一杯だった。
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