実況!4割打者の新井さん
2軍で頑張る新井さん3
「9回ウラ、北関東ビクトリーズの攻撃は、9番レフト、新井」
0ー0のまま、ついに9回ウラまできてしまった。
そして、打順は9番の俺から。
しかし、2軍の首脳陣達は代打を出す様子はない、そのまま俺を打席に送るようだ。
「おーい、代打いねーのか! 代打!!」
俺がそのまま打席に入るのが不満なのか、バックネットにいるおじさんから、ヤジが飛ぶ。
よく聞こえる。
うるせーなーとは思いながらも、黙って見てろよ。
そう思いつつも………。
試合前のシートノックの時間から球場に入り、外で売ってる700円のチーム弁当をちゃんと買って、それを食べながら、なんだかんだ最後まで試合を見てくれてるおじさんの前でサヨナラ勝ちをして、少しくらい喜ばせてあげようじゃないか。
そう考えながら、俺はやる気満々でバッターボックスに入ったのだが。
「デッドボール!!」
いった! ふざけんなよ。初球デッドボールって。
変化球の抜け球だからあんまし痛くはなかったけども。
俺は当ててきたピッチャーを凝視しながら、左の二の腕をさすりつつ1塁へと向かった。
俺は今1塁ランナーです。9回ウラです。0ー0です。俺がホームに返ればサヨナラです。
ならば、俺は1塁ランナーの役割を最大限果たすことにしよう。
まずリードを取ります。できるだけ大きなリードを取ればそれだけ次の塁への距離が縮まるわけ。
塁間の距離は、27メートルとちょっとだから。5メートルリードを取れば次の塁まで22メートル。
6メートル取れば21メートル。もし、15メートルリードを取ることが出来れば、12メートル走るだけで次の塁に到達できるというわけ。
しかし、一般的には、自分の身長+腕の長さ+1歩か2歩と言われている。
俺の身長が170センチ。腕の長さが70センチくらい。
1歩を100センチとして、ここは欲を張って2歩リードをとってみり
つまり、かなりベースから離れた気がするが、せいぜい、今のリードでも4メートル40センチくらい。
まあ、一般的くらいだろうが、さらに半歩リードをとることにする。
盗塁はしないから、牽制されたら1塁ベースに戻ることだけ考えれば、このくらいリードしても大丈夫なはず。
ジリジリと半歩分さらにリードを取った瞬間、セットポジションに入ろうとした右ピッチャーがその場でクルンと回って、牽制球を放ってきた。
俺は慌てて戻る。
とうっ! と、頭から1塁ベースに戻る。
俺の右手がベースについた次の瞬間に、牽制球を受けたファーストミットがバチコンと俺の腕に叩き落とされる。
ユニフォームについた土を払いながら立ち上がった俺は文句を言ってやった。
「おい、痛いよ。もうちょっと手加減してタッチしてよ」
俺がそう言ってやると、相手のファーストの選手は、帽子のつばを指でつまんで謝った。
「すみません、痛かったですか?」
相手は、高卒でプロ4年目くらいの期待の大砲候補な選手。
「いてーよ。そんなにがっつりタッチしなくても、タイミングがよければちゃんとアウトにしてくれるから」
「そうですよね。気をつけます」
俺はルーキーだが、俺の方が4つくらい年上。なんとなく偉ぶる俺は、彼にさらなるお節介アドバイスを送る。
「あと君は、打つ時にもう少しスタンスを狭めてクルンと回る意識で打った方がいいよ。踏み込んだ時に上体がぶれてるし、それじゃ君のパワーを生かしきれないし。
もっとどっしり構えて打ってみたら?…………いつまで2軍でくすぶってるつもりだよ。あんまりファンを待たせちゃだめだよ? みんな期待して待ってんだからさ」
俺がそこまで言うと、彼は少し考えた後に帽子をかぶり直した。
「そうですね。次の打席にやってみます」
「次の打席はねえよ」
「え?」
「このあと俺がホームに返ってサヨナラにするからな
!」
「そうですか。でも、もうピッチャー投げましたよ」
「え?」
0ー0のまま、ついに9回ウラまできてしまった。
そして、打順は9番の俺から。
しかし、2軍の首脳陣達は代打を出す様子はない、そのまま俺を打席に送るようだ。
「おーい、代打いねーのか! 代打!!」
俺がそのまま打席に入るのが不満なのか、バックネットにいるおじさんから、ヤジが飛ぶ。
よく聞こえる。
うるせーなーとは思いながらも、黙って見てろよ。
そう思いつつも………。
試合前のシートノックの時間から球場に入り、外で売ってる700円のチーム弁当をちゃんと買って、それを食べながら、なんだかんだ最後まで試合を見てくれてるおじさんの前でサヨナラ勝ちをして、少しくらい喜ばせてあげようじゃないか。
そう考えながら、俺はやる気満々でバッターボックスに入ったのだが。
「デッドボール!!」
いった! ふざけんなよ。初球デッドボールって。
変化球の抜け球だからあんまし痛くはなかったけども。
俺は当ててきたピッチャーを凝視しながら、左の二の腕をさすりつつ1塁へと向かった。
俺は今1塁ランナーです。9回ウラです。0ー0です。俺がホームに返ればサヨナラです。
ならば、俺は1塁ランナーの役割を最大限果たすことにしよう。
まずリードを取ります。できるだけ大きなリードを取ればそれだけ次の塁への距離が縮まるわけ。
塁間の距離は、27メートルとちょっとだから。5メートルリードを取れば次の塁まで22メートル。
6メートル取れば21メートル。もし、15メートルリードを取ることが出来れば、12メートル走るだけで次の塁に到達できるというわけ。
しかし、一般的には、自分の身長+腕の長さ+1歩か2歩と言われている。
俺の身長が170センチ。腕の長さが70センチくらい。
1歩を100センチとして、ここは欲を張って2歩リードをとってみり
つまり、かなりベースから離れた気がするが、せいぜい、今のリードでも4メートル40センチくらい。
まあ、一般的くらいだろうが、さらに半歩リードをとることにする。
盗塁はしないから、牽制されたら1塁ベースに戻ることだけ考えれば、このくらいリードしても大丈夫なはず。
ジリジリと半歩分さらにリードを取った瞬間、セットポジションに入ろうとした右ピッチャーがその場でクルンと回って、牽制球を放ってきた。
俺は慌てて戻る。
とうっ! と、頭から1塁ベースに戻る。
俺の右手がベースについた次の瞬間に、牽制球を受けたファーストミットがバチコンと俺の腕に叩き落とされる。
ユニフォームについた土を払いながら立ち上がった俺は文句を言ってやった。
「おい、痛いよ。もうちょっと手加減してタッチしてよ」
俺がそう言ってやると、相手のファーストの選手は、帽子のつばを指でつまんで謝った。
「すみません、痛かったですか?」
相手は、高卒でプロ4年目くらいの期待の大砲候補な選手。
「いてーよ。そんなにがっつりタッチしなくても、タイミングがよければちゃんとアウトにしてくれるから」
「そうですよね。気をつけます」
俺はルーキーだが、俺の方が4つくらい年上。なんとなく偉ぶる俺は、彼にさらなるお節介アドバイスを送る。
「あと君は、打つ時にもう少しスタンスを狭めてクルンと回る意識で打った方がいいよ。踏み込んだ時に上体がぶれてるし、それじゃ君のパワーを生かしきれないし。
もっとどっしり構えて打ってみたら?…………いつまで2軍でくすぶってるつもりだよ。あんまりファンを待たせちゃだめだよ? みんな期待して待ってんだからさ」
俺がそこまで言うと、彼は少し考えた後に帽子をかぶり直した。
「そうですね。次の打席にやってみます」
「次の打席はねえよ」
「え?」
「このあと俺がホームに返ってサヨナラにするからな
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