実況!4割打者の新井さん
新井さん、ブチギレる1
「さあ、これで柴崎を追い込みました。1ボール2ストライクです。最後はやはりフォークボールを投げるでしょうか」
「ええ。でしょうね。しかし、今日の横尾のフォークは落ち具合が今一つなんですよ。それを見せ球にして真っ直ぐ勝負でもいいかもしれませんね」
「セットポジションから4球目。横尾投げました! フォークだ! 真ん中に入った! 打ちました! センター前!!」
ほぼ真ん中にあまり落ちなかった、甘いフォークボール。それを柴ちゃんが芯で捉える。
打球はライナーでセンター前へ。2塁ランナーの浜出君が3塁を踏むのと、センターが打球を掴むのはほぼ同時。
そして相手センターは、球界でも屈指の強肩と知られる名手だ。
しかし、3塁コーチはグルグルと腕を回し、浜出君がホームに突っ込む。
センターからの返球はやや1塁側に逸れたが、ノーバウンドでホームに返ってきた。
ランナーの浜出君がキャッチャーのタッチをかいくぐるように滑り込む。
「………アウト!!」
「本塁タッチアウトー!! センターから素晴らしいレーザービーム!! ものすごい返球でした! これで2アウト1塁です!!」
浜出君がホームでタッチアウトにされ、ベンチは意気消沈。ヘルメットを外し、頬をグラウンドの土で汚した浜出君がベンチへとぼとぼと帰ってきた。
ぶっちゃけ2塁ランナーが俊足の浜出君とはいえ、正直アウトになるタイミングだった。
最終回の1点差だったから、どうしても同点にしたいのは分かるけど。相手の守護神はストレートも走ってないしフォークも落ちていないような不調気味だったのに。
3塁コーチは常に冷静にいてもらわないと。
柴ちゃんも何故か1塁で止まってるしよ。
「2番高田への初球。柴崎走った! 2塁タッチ、きわどい!! アウトだー!! 盗塁失敗! 試合終了! 東北5連勝です!!」
何をやってんだよ。
試合が終わり、相手チームはマウンド付近で喜びを分かち合っている。
全員が出てきてハイタッチを交わし、外野の応援団のところまで行って、1列に並んで歓声に応えていた。
かわいいチアガールのお姉ちゃん達がスタンドになんかのグッズを投げ込んだり、マスコットが自転車になってグラウンドを回ったり、花火が上がったりして盛り上がるグラウンドの上を俺はただただ、ベンチでぼーっと見つめていた。
もうこの3連戦の不甲斐なさに、全身の力が抜けていくようだったのだ。
「新井君、帰ろう」
俺の背中をポンポンと優しく叩いたのは、球団のロゴが入ったジャージ姿のスコアラー。もうベンチには誰もいなかった。
仕方なくバットやグラブを持ってベンチ裏へと下がる。
しかしそこでは………。
「まあ、しょうがねえよな。いいバッティングだったよ。あの守護神から打ったんだから」
「おーい、誰か俺のリストバンド知らねえか?」
「早く帰って飲み行こうぜ。明日は移動日だからよー」
まるで9連敗したチームとは思えない。誰も試合に負けた悔しさなんか感じている奴はおらず、ゴミもそこら辺に散らかしっぱなし。ベンチ裏でケータイいじったり、ガヤガヤガヤガヤ。
堪忍袋の緒が切れたとはまさにこのことだった。
「ふざけてんじゃねえよ、お前ら!! いい加減にしろや、ゴラアアァッ!!」
持ってた荷物を床に叩きつけた俺がブチ切れると、辺りが一瞬でシーンとなった。
あ、そんなにシーンとはなって欲しくなかったんですけど。
「ええ。でしょうね。しかし、今日の横尾のフォークは落ち具合が今一つなんですよ。それを見せ球にして真っ直ぐ勝負でもいいかもしれませんね」
「セットポジションから4球目。横尾投げました! フォークだ! 真ん中に入った! 打ちました! センター前!!」
ほぼ真ん中にあまり落ちなかった、甘いフォークボール。それを柴ちゃんが芯で捉える。
打球はライナーでセンター前へ。2塁ランナーの浜出君が3塁を踏むのと、センターが打球を掴むのはほぼ同時。
そして相手センターは、球界でも屈指の強肩と知られる名手だ。
しかし、3塁コーチはグルグルと腕を回し、浜出君がホームに突っ込む。
センターからの返球はやや1塁側に逸れたが、ノーバウンドでホームに返ってきた。
ランナーの浜出君がキャッチャーのタッチをかいくぐるように滑り込む。
「………アウト!!」
「本塁タッチアウトー!! センターから素晴らしいレーザービーム!! ものすごい返球でした! これで2アウト1塁です!!」
浜出君がホームでタッチアウトにされ、ベンチは意気消沈。ヘルメットを外し、頬をグラウンドの土で汚した浜出君がベンチへとぼとぼと帰ってきた。
ぶっちゃけ2塁ランナーが俊足の浜出君とはいえ、正直アウトになるタイミングだった。
最終回の1点差だったから、どうしても同点にしたいのは分かるけど。相手の守護神はストレートも走ってないしフォークも落ちていないような不調気味だったのに。
3塁コーチは常に冷静にいてもらわないと。
柴ちゃんも何故か1塁で止まってるしよ。
「2番高田への初球。柴崎走った! 2塁タッチ、きわどい!! アウトだー!! 盗塁失敗! 試合終了! 東北5連勝です!!」
何をやってんだよ。
試合が終わり、相手チームはマウンド付近で喜びを分かち合っている。
全員が出てきてハイタッチを交わし、外野の応援団のところまで行って、1列に並んで歓声に応えていた。
かわいいチアガールのお姉ちゃん達がスタンドになんかのグッズを投げ込んだり、マスコットが自転車になってグラウンドを回ったり、花火が上がったりして盛り上がるグラウンドの上を俺はただただ、ベンチでぼーっと見つめていた。
もうこの3連戦の不甲斐なさに、全身の力が抜けていくようだったのだ。
「新井君、帰ろう」
俺の背中をポンポンと優しく叩いたのは、球団のロゴが入ったジャージ姿のスコアラー。もうベンチには誰もいなかった。
仕方なくバットやグラブを持ってベンチ裏へと下がる。
しかしそこでは………。
「まあ、しょうがねえよな。いいバッティングだったよ。あの守護神から打ったんだから」
「おーい、誰か俺のリストバンド知らねえか?」
「早く帰って飲み行こうぜ。明日は移動日だからよー」
まるで9連敗したチームとは思えない。誰も試合に負けた悔しさなんか感じている奴はおらず、ゴミもそこら辺に散らかしっぱなし。ベンチ裏でケータイいじったり、ガヤガヤガヤガヤ。
堪忍袋の緒が切れたとはまさにこのことだった。
「ふざけてんじゃねえよ、お前ら!! いい加減にしろや、ゴラアアァッ!!」
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