実況!4割打者の新井さん

わーたん

みのりんが楽しそう。

「マウンドには北関東の守護神、岸田が上がりました。埼玉明井高校から埼玉ライトブルーレオンズにドラフト4位入団。ルーキー時代から中継ぎとして活躍しましたが、近年出番が減っていましたが、新球団トレードで北関東ビクトリーズに移籍しました。今シーズンは、ここまで0勝1敗1S。東北レッドイーグルスは、9回ウラ中軸から始まる好打順です」

「9回ウラ、レッドイーグルスの攻撃は、3番ライト平池」

相手チームの看板選手が打席に入ると、スタンドが大歓声に包まれる。

マウンドに上がった岸田は俺と同い年。いつものように投球練習を終えると、マウンドの後ろにしゃがみこむ。

まるで力士のように両足で地面を踏ん張るようにして自分自身に気合いを入れて、立ち上がり滑り止めのロージンを手にする。

「さあ、岸田セットポジションに入りまして、第1球、投げました。平池打った! 打球はレフトへ上がった!! レフトシェパードバックする!」


あ。と、思った時には、打球は夜空に高く上がり、シェパードがレフトのフェンスに到達していた。

「打球は伸びる! 打球は伸びている!! レフトシェパード、ジャーンプ! 最前列入りました!! サヨナラー! 平池のサヨナラホームランで、東北3連勝ー!!」


うわー。7連敗だ。








北関東 001 001 200  4

東北 020 101 001×    5

勝  伊藤 1勝 負  岸田0勝2敗1S

本塁打

北関東 阿久津  2号ソロ(3回)

東北     林田 1号2ラン(2回) 平池2号ソロ(9回)

東北が3連勝。東北は2回、林田の2ランで先制すると、同点で迎えた9回には、平池のサヨナラホームランで勝利を収めた。7回途中から好救援の伊藤が今シーズン初勝利。破れた北関東は投打が噛み合わず、引き分けを挟んで7連敗を喫した。

「今日も負けちゃったね、新井くん」

「ああ、やべーよ。これで7連敗だよ」

「でも、今日も新井くんナイスバントだったよ」

「だろう? 今はこういうことをコツコツやっていかないとね。今日は新幹線乗り過ごして、盛岡駅まで行っちゃってさ、監督を怒らせちゃったよ」

「え? そうなの? ………でも、いいネタになるかも待ってて。今メモするから、その時のことを詳しく聞かせて? ……時間大丈夫?」

「………ああ、うん。ミーティング終わって、ホテルの部屋に戻ったところだから」

負けて傷付いた心を癒してもらおうとみのりんに電話すると、小説のネタになるかもと、今日1日振り返りをさせられることになり、またいろいろと思い出してしまった。

「………うん。………それで? ………………からの?…………さらに?……………極めつけは?」

すぐ切り上げようと思った電話も、結局彼女が工場のバイトに出るまで、1時間もする羽目になった。

まあ、みのりんが楽しそうなんでなによりだ

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