頑張れロンパオ。

「バッターは６番ライト野村」

相手チームの６番打者が左バッターボックスに入る。

すると、ニコニコしていたロンパオの顔つきが一瞬にして変わる。

まるでスイッチが入ったように。バッターを睨み付けるような鋭いものになったのだ。

「ピッチャー、ロンパオ！バッター野村に対して第１球。ストライク！これは外角へ素晴らしいボールです」

初球。ノーアウト満塁。日本プロ野球での初投球。入りの難しい１球だったが、ロンパオはキャッチャーの構えたところを寸分狂わず投げ込む。

外いっぱいの素晴らしいボール。バッターは見逃すことしか出来なかった。

スタンドのビクトリーズファンからもよしよしと拍手が上がる。

「２球目投げました！これも外いっぱいのストレートが決まりました。ツーストライク。ロンパオ追い込みました」

「外の変化球空振り三振！！ビクトリーズバッテリーは３球勝負でした！まずは１アウトです」

左バッターのアウトコース低めにロンパオの縦に大きく割れるカーブが決まった。

相手バッターは腰砕けになり、誘い出されたバットを止めることが出来なかった。

ビクトリーズファンから拍手が湧く。

次のバッターも左だ。そして今度は決め球のカーブから入る。

ボールは真ん中付近だったが、バッターは虚を突かれたのか、簡単に見逃した。

「ストライーク！」

この辺りの相手の裏をかくベテランの鶴石さんのリードは、さすがというところだ。

「ロンパオ、７番渡辺に対して第２球。………打ちました！しかし、これは３塁側スタンドへのファールボールです。さあ、ここも２球で追い込みました！」

「さあ、ここも追い込みました。１球外すか、それともまた３球勝負か」

「ここは１球外すでしょうね。さっき投げたカーブがまた同じところに投げられれば話は別ですが………」

ピッチャーのロンパオ。キャッチャーの鶴石さんがサインを交換する。

セットポジションに入り、ロンパオ足を上げると、キャッチャーの鶴石さんが中腰になった。

高めに１球外すのか。

しかし、ロンパオの投げたボールは低めに行った。

カァンとした芯を食った音がグラウンドに響く。打球は痛烈。一瞬にして内野を切り裂いたが、その打球は幸運にもファースト高田さんのミットに入る。

「ファースト高田！取ってバックホーム！！キャッチャー鶴石、ホームベースを踏んで１塁へ！！ダブルプレー！ビクトリーズ！ノーアウト満塁のピンチを無失点で凌ぎました」

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